〇◎ “命のことを知らずして、命の大切さは理解できない” ◎〇
= 探検的調査を実践する “探検昆虫学者” 西田賢司 =
【この企画はWebナショジオ_“「コスタリカ 昆虫中心生活」” に追記・補講し、転載した】
☠ 中米コスタリカで新種の昆虫を見つけまくる男! 「バックマン」 ☠
曰く 『昆虫は、僕たちに自然の変化を教えてくれる一番身近な存在です』
◇◆ =010= 求愛のマーク? ◆◇
今年初めての野外調査にやってきた。 お気に入りのフィールドの一つ、モンテベルデ生物保護区の雲霧林へと。
夕暮れ前、いち早く日が暮れる谷間からは、コオロギの仲間であるヒバリモドキたちの「リリリリリリ」というコーラスが、風に乗ってやってくる。 木々に優しく溶け込むような音色。
サクサクサクッと落ち葉のじゅうたんの林道を進んでいると、いつの間にか月明かりと点滅するホタルの光がぼくたちを導いてくれていた。
小屋へ着く頃には、ヒバリモドキの大合唱が森全体を柔らかく包みこんでいた。 時折、梢のほうでキリギリスの仲間が「ジジッ」とさえずっている。 愛を奏でる昆虫たちの宴の始まりだ。
夜の定番の灯火採集といきたいところだが、明るいお月さんが出ていると、ほとんど虫たちは集まってこない。 ちょっとやそっと雲がかかっていてもお手上げだ。
たまには宴の邪魔ともなる灯火採集をせず、月明かりのように夜の昆虫たちを優しく見守って、愛の音色に包まれてみるのもよいものである。
Ӂ 挑戦の夜明け Ӂ
モンテベルデの森の夜明け。
今回ぼくがモンテベルデ生物保護区へ向かった真の理由。 それは、ある挑戦をすることを決意したからだ。
12年ほど前、コスタリカ大学の修士課程でぼくは、虫こぶ*を形成する蛾をテーマとした論文に取り掛かっていた。幼虫が植物の中に入り込んで、葉や茎を不思議な形の「こぶ」に発育させるタイプの蛾だ(ここでは虫こぶ蛾と呼ぶことにします)。 世界を見ても専門家はほとんどいないから、その分野を極めたいと意気込んでいた。
しかし、途中で論文の内容を変更した。ハワイの侵入植物の生物的防除の仕事を依頼され、その調査のための時間が流れ始めたからだった。 “虫こぶ蛾”という壮大なテーマより、生物的防除のデータの方が論文にしやすかった。
でも、それは言い訳だとわかっている。
現在もぼく自身に「虫のこぶ」ができそうなほど、多種多様な昆虫たちに囲まれているけど、虫こぶ蛾の研究ははかどらない。そもそも虫こぶ蛾がぼくの昆虫中心生活の中心のはず。 我の虫は「蛾」なのである。
ぼくは、コスタリカ大学の博士課程へ編入しようと決めた。 虫こぶについてのデータは、そこそこたまっている。 ぼく自身にプレッシャーを与え、虫こぶ蛾の研究に新たに挑戦しよう!
まだ入学が決まったわけではない。 けれど、ぼくは新たな研究に適した環境を探すことにした。 それが、今回ぼくがモンテベルデの森へ向かった理由だ。
さて、森でどんな出会いがあったかは、次回に。
*虫こぶ:昆虫などが葉や茎など植物に入り込み、ある特定の組織に刺激を与え、成長をコントロールしながら促し、発育させた部分。
=参考資料・文献=
アシグロツユムシアシグロツユムシ(脚黒露虫・足黒露虫)は、キリギリス科ツユムシ亜科の昆虫。山地性ので、和名は後脚脛節が黒っぽく見える事による。
体長30-35mm前後。ツユムシに似るが頭部と胸部の境目がややくびれて見える他、体に対してやや脚が長いなどの違いがある。 全身ややくすんだ緑色で前胸から羽の先まで褐色の縦筋がある。 前脚または頭部は赤みを帯び、複眼は青みを帯びた灰色でツユムシより大きく、丸い。
平地から亜高山帯まで幅広く生息。主に山道沿いの草木に登って生活している。ツユムシよりも薄暗い環境を好み、木漏れ日が差すような場所に多い。葉の上で脚と触角をのばした姿勢でじっとしていることが多い。ほぼ完全な草食性で自分が脱いだ抜け殻以外の動物食は食べない。食草はツユムシに準じているが、より堅めの物、木の葉なども食べるが、花弁や若い果実を好む傾向が強い。
のんびりしているように見えるが、逃げ足は早く、盛んに飛んで逃げる。また、明かりに飛んでくることもある。ツユムシ同様、キリギリスとしては良く飛ぶ方で、飛び方も巧みである。鳴き声は「ジキーッ・ジキーッ…」または「ジュキーッ・ジュキーッ…」と聞こえる。小さな声なので10数メートルも離れると聞こえなくなる。
オスはメスに背中を向けながら交尾を促す。メスの尾端に精球が渡されると交尾は完了する。卵が成熟したメスは食草の葉の縁を囓り、産卵管を差し込んで卵を産み付ける。卵は非常に薄く、葉の中に産み付けられるのに都合がよい形をしている。
・・・・・・つづく
◇◆ コスタリカ サラピキ Sarapiqui Costa Rica ◆◇
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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