〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇
= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =
☠ 青春を深海に掛けて=高井研= ☠
ᴂ 第7話(最終話) 新たな「愛と青春の旅立ち」へ ᴂ
◇◆ 宇宙の深海をめざして =4/4= ◆◇
JAXAとJAMSTECを結びつけるアイデア
つまりボクらは「リターンサンプルを海に落として、その回収をJAMSTECの研究調査船、しかも一番研究環境が優れているちきゅう、でやる。そしてそのままちきゅう船上の研究施設で検疫までしてしまえば自動的にサンプルに一次解析までできてしまう雪崩式フランケンシュタイナーが可能になるんジャマイカ?」と考えたんだ。
このアイデアは結構イケルと思った。ボクや高野君のようにJAMSTECにいながらアストロバイオロジーをなんとかしたいと思っていた研究者にとって、JAMSTECとして具体的に貢献できる対象だった。しかもJAXAとJAMSTECというこれまで海の衛星観測でしか繋がりのなかった研究機関を、アストロバイオロジーというキーワードで結びつけるキッカケになるかもしれなかった。
その後、話は盛り上がってリターンサンプルの洋上回収と宇宙検疫を含めた一次解析の具体的な打ち合わせにまで発展した。そしてJAMSTECとして高野君を中心に計画を作ると言う事で話はまとまった。ボクも逃走経路は確保しながらも、企画部門や上層部との折衝を手伝うことになった。
その集まりの後しばらくして、ボクは企画書を作るための準備として、それまでほとんど知らなかったエンケラドゥスの研究成果について調べてみた。
エンケラドゥスはNASAの探査機であるカッシーニによって調査されており、宇宙空間に噴出する巨大な氷プルームが存在していることまでは知っていた。しかし検索して引っかかってきたいくつかの論文をしっかり読んだ時、ボクは久しぶりに落雷を受けたかのような衝撃を受けたんだ。
多くはまだ想像の域を出なかったけれど、エンケラドゥスの氷プルームが内部海と岩石核の間の海底熱水活動に支えられている可能性、氷プルームの化学分析が進んでおり、水素やメタン、硫化水素、アンモニアといった地球の深海熱水と同じような物質やエネルギー源に満ちあふれている可能性、多種多様な有機物がすでに存在する可能性、が示されていたのだ。
中にはエンケラドゥスの惑星内部構造の想像図まで示し、エンケラドゥスにおける生命存在可能性について言及する論文まであった。
よっしゃ、やったろうやんけー!
それらを読むうちにボクは久しぶりに燃えてきたんだ。
「ちょっと待て、オマエら。地球の深海熱水環境を始めとする暗黒の生命生態系の駆動原理を突き止めたのが誰だと思ってやがる。地球だろうがエンケラドゥスだろうが、深海熱水の生命に関しては誰にも負けんぞ。深海熱水がある以上、宇宙だろうがなんだろうが、そこはオレのフィールドオブドリームス。よっしゃ、やったろうやんけー!」と思い始めたんだ。
それはまるで、ボクが最初にJAMSTECに来た時、JAMSTEC岸壁から見える海の美しさを見ながら感じた「深海の研究」に対して抱いた熱い想いと同じような感覚だった。
ずっと書いてきたように、ボクはこれまで青春を深海に賭けて突っ走ってきた。そう、地球の深海に。さすがにもう、恥ずかしくって「青春を」などと言えない年になってしまったけど、今またボクの情熱を傾けることのできる、誰も見た事のない未知の深海が目の前に現れたんだ。
しかもその深海には「生命の起源」だけではなくて、「生命とは何か」を解き明かすためのとびっきりの大ネタが隠されている可能性がある。それにそれは単なる夢物語じゃない。やる気になれば手の届かない「距離」でも「時間」でも「お金」でもないんだ。
たしかにその実現は簡単じゃない。一見、途轍もなくハードに見える。
でもボクが研究者を目指していた20歳の頃、果たして自分が実際に深海に潜って生命の起源に近づくような研究をできると想像していただろうか。ボクはただそうなりたいと必死に願っていただけだ。でもそれに向かって一生懸命に突っ走っていたらそうなっていたんだ。
またボクがインド洋の研究で得られた結果を前に微生物学だけで解明できない壁にぶち当たった時、自分が地質学や地球化学の分野でも勝負できる程多分野に精通し、生命の起源に対して真正面から研究を展開することができるなんて想像していただろうか。ボクはとにかくやりたいとジタバタ、ドタバタ暴れていただけだ。でもそれに向かって一生懸命動いていたら多くの仲間ができて、めちゃ楽しくて自然とそうなっていたんだ。
ボクは心の中に逃走経路として確保していた「緊急脱出用のハシゴ」を外すことにした。つまりボクの次の大きなジタバタの目標が決まったということだった。
エンケラドゥスの地球外深海を目指そう。これまでと同じように、それに向けてひたすら暴れよう。それに向かってがむしゃらに動いていたら、いつかきっとそうなるに違いない。
これからはまさに現在進行形の冒険譚だ。一緒にその物語をつくっていこうぜ、みんな。 ・・・・・・・おわり
= カリブ海からオラ、コモエスタス? (2/2) =
高井研さんは「しんかい6500」で、カリブ海にある“世界で最も深い”熱水噴出孔を調査
少し思い直すと、「魚心あれば水心あり」ということわざが、流れる水の淀みに浮かぶうたかたのようにかつ消え、かつ結んだかもしれません(0.002秒)。そしてしばらくしてようやく、現代日本に生きる社会人としてのワタクシの心境を表現するに最も無難な着地点である「水魚の交わり」という故事成語にたどり着きました(2秒)。
補足的に「渡る世間は鬼ばかり」(橋田壽賀子)というフレーズが頭のなかを縦横無尽に駆け巡りましたが、それは単なるリズム上の問題でしょう(なんのこっちゃ)。
すみません。まるでJAMSTECの航海レポートに書くような訳のわからないノリになってしまいました。実は、調査航海に乗船中のワタクシの頭は、右往左往激しく揺れる船内居住環境のせいで、完全にシップドランカー状態になっており、なかなかロジカルな文章が書けない仕様になっているのです。言わば、これも一つの研究調査航海のリアル中継かもしれません。
しかし話をなんとか元に戻しましょう。今からおよそ一週間前の6月22日。その日は、「青春を深海に賭けて」きたワタクシと、ワタクシの愛と青春の旅立ちの最大の相棒であった(今もそうである)「しんかい6500」、そしてその舞台であるJAMSTEC、にとって忘れられない日となりました。
ワタクシ達は世界で初めて「有人潜水艇による科学調査のノーカットリアル生中継」に挑戦し、ナントカカントカ(途中いくつかエラーや失言はあったものの、結果として)成功することができました。これまで誰も達成し得なかった困難なチャレンジを成し遂げ、世界の深海科学探査の長い歴史に新しい1ページを刻むことができたのです。
そして実に30万人以上の人達、特に普段このWebナショジオとかましてやJAMSTECのホームページなんか見ることのないような若い人達、が、ニコニコ生放送を通じて、ホントに普段通りの「しんかい6500」の科学潜航調査の1日を視聴し、限りなく現場に近いリアル=ドキドキハラハラ感を共有してくれたと聞いています。
それは企画したJAMSTECのワタクシ達ですら、全く予想できなかったことで、その反響の大きさも青天の霹靂と言えるモノでした(ホントはまだよく知らないのですが、陸からの風の噂によればそうらしい)。
実際ノーカットリアルナマ中継は、ワタクシが潜航の翌日に航海レポート(JAMSTECサイトへリンクします)に書いたように、ぶっつけ本番での成功(少なくとも海底の映像と捉え、深海熱水噴出の映像を映し出すこと)であり、テストを繰り返していた「しんかい6500」オペレーションチームや現場のワタクシ達研究者にとってもメーク・ドラマ(長嶋茂雄)、メーク・ミラクル(長嶋茂雄:失敗)、メーク・レジェンド(原辰徳)だったのです。 ・・・・・・続く
・・・・・・・・つづく・・・・・・・
動画 : ABC Catalyst S12E16 Deep Sea Mining
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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