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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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未知なる深海へ 高井 研 =067=

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〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇

= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =

☠  青春を深海に掛けて=高井研=  ☠

ᴂ 第4話  JAMSTEC新人ポスドクびんびん物語 ᴂ

◇◆ 「初めての”しんかい2000”」 =3/3= ◆◇

ただこの潜航では残念な事に、伊平屋北フィールドの熱水を採取するのには成功したが、目の前にある熱水チムニーの採取はことごとく失敗した。初潜航の興奮と感動を覚えながらも、ボクは深海熱水の微生物の研究をする上で試料採取の難しさを感じたのを覚えている。「こりゃあ、なかなか研究が進まないわけだ」ということが身にしみてわかったような気がした。

この初潜航を終えた後、ボクはついにすべて出揃った試料を用いて、沖縄トラフ伊平屋北フィールド、伊平屋凹地フィールド、伊豆・小笠原明神海丘フィールド、水曜海山フィールドの熱水や熱水チムニーのなかに生息する微生物群集の遺伝的多様性解析の研究を行った。

それは、1996年のジョージア州での国際学会でクリスタ・シュレパーが発表していた「湖に生息する未知の古細菌(アーキア)」の研究に触発されてから、ボクが追い求めてきた研究テーマだった。
同時に、深海熱水環境には、ノーマン・ペースという微生物生態学者がイエローストーン国立公園の温泉環境に見つけた多様かつ始源的なアーキアよりも、もっと多様で起源の古いアーキアやバクテリアがいるに違いないという、ボクの確信的な妄想を確かめる研究テーマだったのだ。

そして「しんかい2000」初潜航体験から3カ月も経たないうちに、ボクの妄想が正しいことを証明するデータが得られた。

1977年に世界で初めて深海熱水が発見されて以来、多くの超好熱菌をはじめとする様々な極限環境微生物が、深海熱水環境から培養・分離されてきた。しかしボクの研究成果は、その30年以上に渡る研究をある意味、否定したうえで再構築するものだった。深海熱水環境には、ボク達が想像もできないような全く未知のアーキアやバクテリアが、とんでもなくウジャウジャと生息していることが分かったのだ。

またその一部は、アーキアやバクテリアの中でも、最も起源が古そうな系統の微生物で占められ、もし深海熱水環境が地球生命の誕生の場である事が正しいとするならば、その起源の古そうなアーキアやバクテリアこそが、原始生命の直系子孫なんじゃないか? それも、ボクの研究が問いたかったポイントだった。

JAMSTECに来てからほぼ1年の間に、ボクはやりたいと思っていた研究をある程度完遂することができた。そのような意味では満足した部分はあった。でもむしろその研究は、ボクに次の新しい挑戦すべきテーマを投げかけたように思う。

つまり、その未知のアーキアやバクテリアは一体どんな微生物なのか?

微生物ハンターの名にかけてボクは、世界の誰よりも早く、ボクが見つけたその未知の微生物たちを血祭りに上げなければ(培養・分離しなければ)なるまいと意気込んだ。

もう一つの謎は、なぜ同じような熱水環境なのに、沖縄トラフ伊平屋北フィールド、伊平屋凹地フィールド、伊豆・小笠原明神海丘フィールド、水曜海山フィールドといった異なる熱水環境で、そこに生息する微生物群集の組成が大きく違うのだろうかということだった。

次なる挑戦すべきテーマは明確だった。でもボクはちょっと戸惑ったんだ。それまでやりたい研究テーマに向かって一直線に、一生懸命走りすぎていたように思う。どのようにすればそれができるのだろうか? 実はその時、ボクには「よし、これだ!」というような具体的なアイデアや自信がまだ見つからずにいたんだ。

= 生命は海から?陸から?宇宙から?—高井研さんに聞く・後段 -7/7- =

世界中の深海に潜り、誰よりも生命の起源を探ってきた男、高井研さんインタビュー。「生命の起源を解明するには地球だけを研究していたのではダメ。宇宙に行かないと!」と高井さんが力説したのに、その後は感動ポイントを逃さないように、しぶとく質問を続けるうち話題は太陽系の果てへ、さらに地球最後の秘境「超深海ゾーン」へと広がっていく。思いっきり熱いトークを聞くうちに、いつしか気持ちも解き放たれ、宇宙や深海探査の魅力にぐいぐい引き込まれていく。

—- 面白そうですね~。

高井: でしょう? 1989年に「しんかい6500」ができてJAMSTECは有人深海探査で世界一位になった。海洋の世界ではずっと「NASA」だったわけです。つい最近、中国に抜かれて落ち目ですが(笑)、「しんかい12000」を作ったら復活できるんじゃないかと。マリアナ海溝は3人が潜ったけど有人の科学調査は行われていない。1000回潜れる有人の船を作ったら「世界初」ですよ。

—- わくわくしますね。でも探査って思い通りにいかないこともありますよね?たとえば2013年のカリブ海の深海探査では、予想されたメタン菌が発見されなかったとか?

高井: そう。水素濃度が高い場所には水素をエネルギー源とするメタン菌がたくさんいるはずと考えていて、世界最高レベルの水素の熱水に行ったらあまりいなかった。「げ!なんで?」と思った。でもすぐにめっちゃ面白くなる。自分の説が崩される時が一番面白い。

—- なぜメタン菌がいなかったのか、わかったんですか?

高井: だいたいわかってきました。水素濃度が高すぎてもダメなんです。僕はメタン菌が「地球生命の最古の祖先」と思っていたけど、さらに古そうな菌がいた。超マニアのみが知る菌です。それこそ、「生命の起源にもっとも近い菌」ではないかと思って、今、自分の中で仮説を戦わせています。

結局、「自分が作ったちっぽけなイマジネーションは圧倒的なリアリティの前に崩壊する」ということです。その面白さこそが探査の本質。つまり、行かなきゃダメなんですよ!

・・・・・・・・つづく・・・・・・・

動画 : ちきゅうTV Vol.12 熱水海底下生命圏を調査!

  https://youtu.be/EOR7_tRRRRU?list=PL97pirzgh57Ms7dQy4rBYdXdGFoAdqmXY

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