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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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未知なる深海へ 高井 研 =065=

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〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇

= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =

☠  青春を深海に掛けて=高井研=  ☠

ᴂ 第4話  JAMSTEC新人ポスドクびんびん物語 ᴂ

◇◆ 「初めての”しんかい2000”」 =1/3= ◆◇

1997年の10月にJAMSTECの研究員になったものの、「ヨソ者扱い」に不満を募らせた高井さんは、上司に直訴。世界で最も深いマリアナ海溝で採取された貴重な泥をもらいうけ、微生物を増殖させることに成功した。JAMSTECに来てわずか2週間の早業だった。

JAMSTECに来て9カ月たった1998年7月。 ボクは海洋調査船「なつしま」に乗り、沖縄トラフ伊平屋北熱水フィールドの洋上にいた。

自分で研究提案書を書いて当てたワケではないが、イノウエさんの研究提案で当たっていた2潜航分の「しんかい2000」の潜航調査に同行し、「しんかい2000」で沖縄トラフ伊平屋北熱水フィールドに潜航するチャンスを貰ったのだ。貰ったモノはボクのモノ。

この頃には、JAMSTECに来てから始めた研究もいくつか軌道にのり、3つくらいの研究テーマを並行的に進めるぐらいノリノリ状態だった。 そして、この沖縄トラフ伊平屋北熱水フィールドの熱水やチムニーといったサンプルがうまく採取できれば、ボクがJAMSTECに来た一番の目的である「世界の誰よりも早く深海熱水の未知の微生物の多様性を明らかにする研究」を完遂することができるのだった。

初夏の沖縄トラフの海は、まるで子供の頃、夏に海水浴に行った京都北部や福井県の海のように穏やかで、心地良かった。

「なつしま」には、その2カ月前に「伊豆・小笠原水曜海山熱水フィールド」調査で乗船経験済みだったが、その時は海況が大荒れで、ボクはひどい船酔いで2回ほど吐いた。人生で、食中毒の時と女の子にフラれてヤケ酒を飲んでつぶれたとき以外嘔吐などしたことないボクには、かなり辛い初乗船体験だった。

もうどれぐらい航海を経験したか分からないけれど、沖縄と伊豆・小笠原を比べると、沖縄の海の方がはるかにボクには優しい気がする。水曜海山フィールドに行くときは必ず海は大荒れで、一度ボクが居た船室の窓が大波を受けてぶち抜けてしまい、船酔いでダウンしていたボクの体の上を海水がジャバジャバと浸水してきたという恐怖体験まである。

既にこの連載で「しんかい6500」の潜航調査の様子を紹介してきたように、「しんかい2000」の潜航調査もほぼ同じように進んでいく。もちろん何から何まで初めての経験だったボクは、「為すがまま、されるがまま」の状態だったんだろうと思う。不思議なことにボクは、この初潜航の事は伊平屋北フィールドの海底に着いてからのことしかあまり覚えていないのだ。

とにかく水深1000mの海底に着くまで、ひたすら深度計の数字が増えていくのにドキドキしながら、コックピットは壊れないだろうかとか、蓋から水漏れしてこないだろうかとか、びびっていた。

そしてドキドキするボクをのせた「しんかい2000」は、伊平屋北フィールドの近くの海底に着底した。ボクにとっては初めて見る深海底の景色だ。

= 生命は海から?陸から?宇宙から?—高井研さんに聞く・後段 -5/7- =

世界中の深海に潜り、誰よりも生命の起源を探ってきた男、高井研さんインタビュー。「生命の起源を解明するには地球だけを研究していたのではダメ。宇宙に行かないと!」と高井さんが力説したのに、その後は感動ポイントを逃さないように、しぶとく質問を続けるうち話題は太陽系の果てへ、さらに地球最後の秘境「超深海ゾーン」へと広がっていく。思いっきり熱いトークを聞くうちに、いつしか気持ちも解き放たれ、宇宙や深海探査の魅力にぐいぐい引き込まれていく。

—- 厳しいですね。

高井: NASAにはディスカバリーの他にもいろいろ表街道や裏街道な方法があって、もにょもにょとやろうとしている(笑)。それにお金があれば日本だって打ち上げるでしょう。例えば探査の予算が600億円として、その1割でも集めれば動きますよ。「こんなん集まりましたけどやらないの?」とプレッシャーをかける(笑)。内閣府とか文部科学省に。とにかく僕は諦めるのは嫌なので、可能性があるならどんなにあくどい方法でもやりますよ!

—- 期待しています!そもそもエンセラダスにメタン菌はどれくらいいると考えられますか?

高井: エンセラダスの海水中に地球上の微生物がどのくらい存在できるか計算ができて、東京湾よりも一桁多い。一粒の氷に1万匹から10万匹いてもおかしくない。

—- 東京湾より多い!じゃあ氷を何粒か、地球に持ち帰りさえすればいいのですね。

高井: もちろん、いない可能性もありますよ。それはそれで重要なことで「あ、やっぱり(生命の誕生には)陸が必要や」と(笑)。

—- 負けた、と(笑)。

高井: わかりませんよ。エンセラダスにいなかったら次は、木星の衛星エウロパに行くじゃないですか。ほんでその次はガニメデ・・

—- 今、一番探査しやすいのがエンセラダスってことですか?

高井: 調べやすくて一番、メタン菌がいる可能性が高いのがエンセラだけど、エンセラが一番、太陽系で生命を育む可能性が高いわけではない。たぶん、生命自体の生まれやすさ、存続しやすさはエウロパのほうが上だと思う。

—- どうしてですか?

高井: 大きいから。大きさは海の持続力にとってめちゃくちゃ重要です。エンセラは直径約500kmで中心の岩石が直径400kmぐらい。もし40億年間、熱し続けていたら岩がカスカスになって(エネルギー源となる)水素は出なくなっている。岩石の量、岩石と水の比率はとても重要で、たとえば地球の場合、岩石5000に対して水が1。これが素晴らしい。水が多すぎてもダメなんです。「生命誕生に必要な4つの要素」のうちエネルギーと元素の大元は岩石だから。 ・・・・・・続く※

・・・・・・・・つづく・・・・・・・

動画 : ちきゅうTV Vol.10 熱水海底下生命圏を調査!

  https://youtu.be/JikSge8g1Ok?list=PL97pirzgh57Ms7dQy4rBYdXdGFoAdqmXY

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