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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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未知なる深海へ 高井 研 =059=

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〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇

= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =

☠  青春を深海に掛けて=高井研=  ☠

ᴂ 第4話  JAMSTEC新人ポスドクびんびん物語 ᴂ

◇◆ 「JAMSTEC初出勤で放置プレー」 =1/3= ◆◇

因縁の(?)クマムシ対決を経て、いよいよ第3話「新人ポスドクびんびん物語」の本編に突入です。27歳の秋、奥さんに背中を押してもらった高井さんは、ついに京都大学の研究室を離れ、神奈川県横須賀市にあるJAMSTECへやってきたのでした。その初日……

 大学3年生の時、研究室配属前に初めて知った謎の「深海」研究機関JAMSTEC。博士課程学生の時、留学先アメリカで知った世界に誇る最新深海研究ツールを備えた海洋研究機関JAMSTEC。ポスドク探しの就活中、呆気にとられたり、むかついたり、嬉しかったり、いろいろドラマがあった特殊法人研究機関JAMSTEC。

1997年の10月1日。長年住み慣れた京都や滋賀を離れ、箱根の関所を越えてボクは横須賀のJAMSTECにやってきた。その日の朝の9時に、オンボロバイクに乗ってJAMSTEC本部に初出勤した。

JAMSTECに到着したのはいいが、実は、ボクにはひとつの心配事があった。ボクの身分は、あくまで科学技術振興事業団の科学技術特別研究員であって、JAMSTECに雇われているワケではなく、科学技術振興事業団の職員として、JAMSTECに居候するにすぎない存在だ。で、科学技術振興事業団の手引きに、「10月1日に出勤しなさい」という文言があったので、出勤したのだが、一体どこにどう出勤すればいいのか全く分かっていなかった。

もちろん、一応JAMSTECに来ることが決まってから、一度挨拶に来たのだが、その時はあの因縁のカトーさんとややぎこちなく研究の話をしただけで、具体的にどうすればいいのか全く分かっていなかった。

仕方がないのでカトーさんがいるはずの研究室を訪ねたが、誰もいない。周辺に誰も人影を見かけないので、当時、深海微生物系の研究室があった建物の1階にあった喫煙場所のソファーで、タバコをスパスパ吸うしかなかった。


ボクは望まれてここにいるわけではない

タバコを吸っていると、いろんな人がやってきたが「チラリ」とボクを一瞥するだけで、以後「話しかけんな!」的ムードを漂わせ、とても話しかけられるような雰囲気ではなかった。そして時間が経つにつれ、ボクはだんだんむかつき始めていた。

「何だ、このいきなりの放置プレーは。もしかして、これが噂の関東人による関西人いじめか? オレの隠しても隠しきれない京都人の気品が関東人に鼻持ちならないのか? 関東恐るべし! 早速アメリカより遙かに巨大なカルチャーギャップを味わわせてくれるとは」

と、かなり間違った方向の被害者意識に囚われ始めていた。

そんな時、通勤バスが到着して人がゾロゾロと建物の中に入ってきた。ボクはその中に、知っている女性研究者の顔を見つけた。藁にもすがる思いで、彼女に声をかけ、「今日からよろしくお願いします」と挨拶した。

= 生命は海から?陸から?宇宙から?—高井研さんに聞く・前段 -5/6- =

海洋研究開発機構(JAMSTEC)深海・地殻内生物圏研究分野分野長 高井研さん。「しんかい6500」実機前で。(高井さんの右側にある丸窓が研究者用窓)深海や生命について語り出すと止まらない、めちゃくちゃ熱くて濃い方です。

温泉派VS深海熱水派 決着はエンセラダスで!

—- すみません(汗)。 今、生命の起源について一番問題になっているのはなんでしょう?

高井: 生命がどこで生まれたか。深海熱水なのか、他の場所かということです。

—- え、深海熱水で生まれたのでは?

高井: 僕らはそう考えていますが、「温泉で最初の生命が生まれた」と考える人もいます。40億年前の地球に陸はほとんどなかったはずなのに、陸があるという妄想を土台にして(笑)。つまり情熱大陸ではなく、妄想大陸ですね(笑)。でも温泉の方が有利な点もあって、それは濃縮ができること。我々の身体は「めちゃくちゃ濃い有機物のスープ」なんです。それを海の中で濃縮するのは大変です。温泉なら干上がったり水が蒸発したりして濃縮できる。これは結構重要な反応ですね。

でも問題もある。当時、陸はあっても島みたいなもので、そんなになかったはずだから、たとえ生命が生まれても隕石が落ちてきたりして、すぐに死んでしまう。

—- 進化が継続しないと?

高井: そう。生命がどこで生まれたとしても、進化を継続するには絶対に海の中に入らないといけない。海は世界中につながっているので、温泉のたこつぼに生まれた生物でも全地球に広がることができる。広がれば地球の半分が破壊されるほどの隕石が降っても大丈夫だし、宇宙からの紫外線や宇宙線からも守ってくれます。これがすごく重要で、我々の祖先は、必ず一回は深海熱水という場所を経て我々につながっている。ただ温泉で生命が生まれたとして、その後で海で生きるには、淡水から海水に慣れないといけないし、相当な距離を移動しないといけない。その大変さや確率を考えれば、最初から深海熱水で生まれてはびこる、つまり起源と存続が同じ場所で起こる方が遙かに確率が高いと考えられます。

—- 温泉派か深海派か、どうやって解明していくのですか?

高井: 一つは過去の環境を実験室で再現して、ある程度確率的な数字を出すことはできます。

そしてもう一つの決定的な方法論が土星の衛星エンセラダスの生命探査です。地球で生まれた生命はたった1回の結果論でしかない。つまり地球は1回しかサイコロを振っていない。比較のしようがないし、科学的な決着がつかない。だから他の天体に行く。地球もエンセラダスも木星の衛星エウロパの海も、基本的にはでき方は同じです。

・・・・・・・・つづく・・・・・・・

動画 : ちきゅうTV Vol.2 熱水海底下生命圏を調査!

  https://youtu.be/GX6uiko3rMg?list=PL97pirzgh57Ms7dQy4rBYdXdGFoAdqmXY

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