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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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未知なる深海へ 高井 研 =048=

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〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇

= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =

☠  青春を深海に掛けて=高井研=  ☠

ᴂ 第3話  JAMSTECへの道 後編 ᴂ

◇◆ その4 タカイ君、騙されてるんちゃうやろな? =1/3= ◆◇

米国で開催された国際学会でJAMSTECのカトーさんに会い、あれよあれよのうちに翌年からJAMSTECで働く話になった高井研。狐につままれているような気分のまま、まずは博士論文を仕上げようと帰国の途についた。

京都大学の研究室に戻ると早速、左子先生にコトの成り行きを説明した。左子先生は開口一番、「JAMSTEC? あそこ行きたいんか? でもタカイ君、騙されてるんちゃうやろな?」と言った。ボクは「またまた。 嫉妬しちゃってー。自分の学生が外の世界に飛び出そうというのに、もう少し喜んでくれてもいいのになあ」なんて心の中で思っていたりした。

そして普通は、これでスンナリ、JAMSTECへの道が完結したと思うでしょう。ところが、この左子先生の心配が的中するんですねぇ。

激動の国際学会から数カ月が経っていた。 ボクは博士論文の最終追い込みに忙しくしていた。 そして、その忙しさの中でも、JAMSTECの話、どうなっているのだろうかと気にはかけながら、何となく自分から連絡するのがためらわれていた。

それは、自分の中で本当にJAMSTECに行きたいのだろうかという疑問が解決できずにいたからだった。 あのとき、急激な自分の研究テーマの盛り上がりで思わず、口に出した言葉が、あれよあれよと言う間に事態を急転させたことに自分の心が追いついていなかったのだ。 それともう一つ気にかかるのが、研究の中身について、深い議論を全くしていなかったことだった。

そしてそんな時、ボクにとっての忘れられない日がやってきた。 その日ボクは、日本学術振興会から、次年度からの特別研究員の採用通知の書類を受け取った。つまり、日本学術振興会のポスドクとして、自分が申請した研究内容について、京都大学の研究室で3年間働いてよろしいという通知を受け取ったわけだ。

晴れてプロの研究者として、一生懸命アルバイトをしないでも、毎月毎月ビクビクしてお金の心配をしないでも、研究だけに集中してもメシを食っていける身分になれることがわかった記念日だったのだ。 その嬉しさは今でも決して忘れない。そして家族やこれまでの自分を支えてくれたあらゆる人に感謝したい気持ちになったことをとても大切に思っている。

自分が大好きな研究だけをして、人並の生活をしていけるなんて、経済的にとても苦しかった大学院生時代からは想像もできないような最高のシアワセだった。 9年間に及ぶ学生生活のほぼすべての授業料を免除してもらい、奨学金のおかげで何とかここまでやってこれたのは、大学や社会の救済制度の恩恵があったからこそであり、本当に多くの人から受けた様々な支えのおかげだと思った。 将来、自分がどんな身分になっていようとも、そのすごく純粋な感謝の気持ちだけは決して忘れずにいようと誓ったんだ。

そしてもう一つカタをつけなければならない問題が明らかになった。 JAMSTECのアノ話だ。 日本学術振興会のポスドクを受けるか断るかを早急に返事しなければならなかった。 そして、その話を持ち出すには、日本学術振興会のポスドクをとるか、JAMSTECに行くことにするか、まず自分のなかで決断をしなければならなかった。

実は、ボクはそのとき、JAMSTECの話は断ろうと決断した。理由はいくつかあったが、一番重要なポイントは、JAMSTECの微生物研究の中身や研究室について、よく知らなかったことだった。 海外での存外に高い評価以外には、「しんかい6500」や「かいこう」、そして高温高圧培養システムがあるということぐらいしか分かっていなかった。 それに、深海熱水の研究は諦めきれなかったけれど、高温環境の微生物生態の研究なら、京都大学でも十分できるし、少し自分でやってみたいこともあった。

 

= 物事を究極に成し遂げたいなら、他人をいいわけにするな (3/6)=

プロジェクトの生死を握る立場が持つべき能力

深海・地殻内生物圏研究分野/ 分野長 高井 研

僕は研究者であると同時に、プロジェクトリーダーとして自分と自分のプロジェクトの生死を握る立場でもあります。自分のやりたい研究は、スポンサーからお金をとれなかったら能力を備える人員を雇えないわけです。

スポンサーに納得してもらえる材料をそろえるのに時間を費やせば、研究する時間は減ってしまいます。しかし、自分たちが若い頃、そういう上の人たちのおかげで研究に集中できたのも事実。今度は若い人たちのために、僕がプロジェクトの運営を引き受けるのが当然ですよね。自分が手を動かす時間は減りましたが、言うことを聞かない若い人たちの研究を自分の喜びとして噛み締めるのが、我々の人生です。

上の立場になると、自分では手が動かせないところはポスドク(博士研究員)にやってもらうようになります。しかし、3年ほどでポスドクもプロとして自分の世界を築き始める。私たちはそこをうまく見極めて、ポスドクが独り立ちできるように切り離す、つまり「子離れ」しなければなりません。

重要なのは、「自分の依頼を半分はやってもらいながら、その人のやりたいことを半分はやらせる」こと。不満を抱かせず、生き生きとやってもらうのが「人間力」ですかね。自分の依頼だけを押し付けていたら、人気もなくなるし人も育たなくなってしまいますから。どんなに有能な研究者でも、「人間力」がなければ研究は続けられません。

そして僕は、自分の人生においてもプロジェクトリーダーとしても、プライオリティが明確に決まっています。不思議と優先順位がその時々で瞬時に決められる。プロジェクトの生死を握る立場ならば必須ですね。やりたいことのためなら譲れるところはいくらでも譲れますし、プライドをへし曲げられます。瞬時に決める能力は生まれつきだと思いますが、意識して訓練すれば、ある程度は身につけられると思います。

「自分が人生にとってやり遂げたいこと」が、僕にとって一番の最優先項目。細かい内容は日々の状況により更新されますが、10年後、20年後のプライオリティを大事にしているので、長い目で見ても安定していますね。多くの人は、プライオリティを決めることに悩んで時間を費やしている気がします。その間に、僕は悩まず努力する。悩んでいるんだったら前に踏み出したほうが気持ちがいいです。

・・・・・・・・つづく・・・・・・・

動画 : 高井研「極限・宇宙生物学〜生命の起源はどこにあるのか」

   https://youtu.be/RDniq-rhyvE?list=PLIChpw_UiCfAZs1PKv6m_yDYVm69aulot8

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