〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇
= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =
☠ 青春を深海に掛けて=高井研= ☠
ᴂ 第3話 JAMSTECへの道 後編 ᴂ
◇◆ その3 この研究を深海熱水でやりたい!! =2/3= ◆◇
クリスタ・シュレパーは、 「でもケン、こういう未知の古細菌が、そこら中にいっぱいいるのって楽しくならない? まだまだたくさん明らかにすべき、ワタシ達のための古細菌がいるのよ」と言った。彼女の言葉は、ボクのなかの何か敏感なところにズシンと響いた。
クリスタ・シュレパーは次から次へとやってくる見物客を相手に、楽しそうに自分の研究を語っていた。ボクはその姿を見て、とても羨ましく感じたんだ。自分のポスターなんて、パラッパラッと同業者が見に来るだけなのに、彼女の発表には、いろんな分野の研究者が「押すな押すな」の状態で殺到している。会場一番の集客力だ。そしてみんな何か物凄いエネルギーに溢れている。
「アンナ研究、ボクでも今すぐにでもできるのに」。物凄い嫉妬を感じながらも、楽しそうなクリスタ・シュレパーの姿を見て、「確かにこれは新しい分野だ。ボク達の新しい時代の研究分野だ」と、「ヘッ、ナメンなよ!」的タイドから一瞬で転向してしまった。
そして次の瞬間閃いたんだ。
「この研究を深海熱水でやりたい!!!」
深海の研究例はあった。またイエローストーン国立公園の温泉の研究例もあった。イエローストーン国立公園の温泉の研究では「最古の古細菌のグループを発見か?」という論調で報告されていた。しかしまだ1例だけだ。陸上の温泉より深海熱水の方が面白いに決まってる。
なんてったって「深海熱水は生命誕生の場の最有力候補」だかんな。それこそ最古の古細菌どころか、細菌(バクテリア)と古細菌(アーキア)に分かれる以前のまだ見ぬ始源的微生物だっているんじゃないか。うおぉぉぉぉ。
ボクの中で、モーレツに妄想が膨らんだ。そして妄想とともに、なんとしてでも世界の誰よりも早くその研究がしたい、ううっ、もう我慢できない、と思ったんだ。
その時だった。
いつの間にか隣にいた日本人研究者が、ボクに話しかけてきた。「こういう研究って、やけに盛り上がってるねー。で、実際どうなの? ハハッ」。やたらと軽い調子の問いかけだった。
「オレのなかでも、今まさに、分かりはじめたマイレボリューションなんだよ! どうなの?って、知るか!」と思いながら見ると、その人は、ボクの「あの暑い夏の日の思い出」、初JAMSTEC紀行(第2話参照)の時見た、JAMSTECのカトーさんだった。
カトーさんはJAMSTECの好圧微生物の研究でブイブイ言わしている人だった。物凄く親しみやすい人なんだけど、結構、「日本ではJAMSTECが一番よ、そらそうよ」風を吹かしていたイメージがあったので、ボクは「ヘッ、ナメンなよ!」と思っていた人だった。
でもこの国際学会では前に感じたような「見くだし感」がなくて、親しみを感じていた。そして、カトーさんが話しかけてくる直前に、まさにボクは「そうだ、分子生態学的手法による深海熱水微生物多様性研究をやろう!」と盛り上がっていたところだったのだ。
ボクはカトーさんに、ついさっき思いついたばかりの研究アイデアを、まるで長年温めてきた「秘策のアイデア」のように、熱く熱く、語った。 そして最後の最後に、「まあこういう新しい研究ができるのは、日本の若者の中でも、深海熱水の研究をワシントン大学でもやっていたボクぐらいしかいないと思いますよ(嘘)。JAMSTECでボクを雇いませんか? ボクにぜひこの研究をやらして下さい!!!」とハッタリを吹いてみた。
= 物事を究極に成し遂げたいなら、他人をいいわけにするな (1/6)=
スキル(技術)の誇示では、………
深海・地殻内生物圏研究分野/ 分野長 高井 研
生命の起源は深海の熱水にある──。その仮説を実証すべく、大深度有人潜水調査船「しんかい6500」に乗り込み40億年前の海で起こった事件を探り続けた地球生物学者、高井 研。自分のプロジェクトに人を巻き込み、マネジメントする中で必要なのは「人間力」だと高井氏は説く。地質学者や化学者など、あらゆる研究者を巻き込む大きな組織の中でどうコミュニケーションを取り、多様な国籍や機関に所属する研究者の力を束ねながら共同作業をする上でどのように信頼関係を築いているのか、また彼らを引き付け、結びつけているものは何なのか。
≪高井 研 | KEN TAKAI : 海洋研究開発機構プログラムディレクター。1969年生まれ。京都大学農学部の水産学科で微生物の研究を始め、1997年から海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究者に。現在は、同機構、深海・地殻内生物圏研究プログラムのプログラムディレクターおよび、プレカンブリアンエコシステムラボラトリーユニットリーダー。2012年9月からはJAXA宇宙科学研究所客員教授を兼任。著書に『生命はなぜ生まれたのか──地球生物の起源の謎に迫る』(幻冬舎新書)など。ナショナルグラフィック日本語公式サイトで「青春を深海に賭けて」を執筆。≫
尚、高井研を取材した記事: “地球外生命は土星の月にきっといる。エンセラダスの海に”/ 深海生物を研究する高井研は、いま宇宙を見ている。衛星エンセラダスに生命がいるのではないかと考えているからだ。その答えを出すために、いま探査機を送る計画を企てている。これは生命科学最大の難問に迫る挑戦となるが、決して夢物語ではない。わたしたちが生きているうちに結果を見ることができる、実現可能なプロジェクトなのだ。……以下は引き続き記載予定。
・・・・・・・・つづく・・・・・・・
動画 : 進化を遂げた深海調査システム!! https://youtu.be/hHqRSTc5WcM
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