〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇
= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =
☠ 青春を深海に掛けて=高井研= ☠
ᴂ 第3話 JAMSTECへの道 後編 ᴂ
◇◆ その2 ヌルすぎるぞ、オマエら!--反抗期の博士課程 =2/2= ◆◇
そしてボクの研究興味は、「生命の起源や太古の生命を解明したい」という原初の想いとは、かなり離れた場所を漂流していたと言えよう。一方でそんな超好熱菌のタンパク質の熱安定性についての最新の研究成果に触れる度に興奮しながらも、実は自分の研究を客観視する冷静な部分のボクは焦ってもいた。
どんどん新しいことが分かり、共通原理みたいなモノも見えはじめつつある状況のなかで、「自分の研究はそんな研究たちと比べてどうよ? カスみたいな研究なんじゃないか? カスとまでは言わんが、定食に付いてくる黄色いタクアンぐらいなんじゃないか?」と。
「自分の研究がダサダサかも」と「いやまだまだ切り込む部分がある」という相克する葛藤を振り払うかのように、「激しく実験→生活費を稼ぐためのアルバイト→彼女とデート・ケンカ・仲直り→合間に研究論文執筆→寝る→スタートに戻る」という極めて過酷な青春生活を続けていた。
そして書きためた研究論文が5報近くになり、指導教官の机の上で長らく発酵させた後、賞味期限ぎりぎりで研究雑誌に投稿されるようになった博士課程3年生の夏、ボクの研究生活の大きな転機になった出来事が訪れた。 その出来事とは、アメリカのジョージア州アセンスにあるジョージア大学で行われたThermophiles(好熱菌)’96という国際会議だった。
博士課程3年生の夏と言えば、通常、そろそろ博士論文の全体像が見えてきて、その年度にちゃんと博士号を「ごっつあん」できるのかがだいたいわかるものなのだ。ボクはあるタンパク質の熱安定性についての解析と考察を一通り終えて、研究論文も数は書いていたので、左子先生の「アトはその遺伝子が釣れたらくれてやるわ!」という言質を引き出していた。
というわけで、今までの成果を国際学会で発表しようと思い、Thermophiles’96に行くことにした。 そして「博士号ごっつあん」となると、当然その先の「職」をどうするか、という「若手研究者キャリアパス問題」を考えないといけないわけである。「よっしゃ、いっちょ、Thermophiles’96で、グローバル就活するかー!」という思いも多々あったのだ。
もちろんThermophiles’96には、ジョン・バロスをはじめ、ワシントン大学の友人達も来るし、アメリカ留学時代にいろいろ顔見知りになったアメリカやフランスの研究者もたくさん来るし、この機会に「ワシントン大学のポスドクでも、他のアメリカやフランスの大学のポスドクでも、バッチこーい!」と意気揚々だった。
26歳のボクやるね。いいよ、いいよ、そのバイタリティー。 そのバイタリティーの源泉とも言える、結構バカにできない重要な前提があったのだ。この国際会議の参加費やら交通費はすべて、極貧学生だった自分の生活費から捻出しているという点なのだ。
当たり前の話だけど、ボクは修士課程の学生の時から、親からの金銭的な援助は一切受けていなかった。もちろん家がビンボーだから当然なのであるが、例え裕福であったとしてもおそらく同じことだったと思う。同級生達は、既に一人前の社会人として働いているのに対して、「生命の謎」なんて人様の役にも立たない「世迷い事」にうつつをぬかしている以上、自分の生活は自分で何とかするというのが、「オトナ」としての最低限の行いだと思っていた。
もちろんその最低限の行いは、今はなきニホンイクエーカイ様(現独立行政法人日本学生支援機構)の有り難い奨学金によって大部分支えられていたわけであるが。高校生の時から博士課程の修了までに、今はなきニホンイクエーカイ様からつまんだ借金は社会人になる前には、800万円以上に膨らんでいたという驚愕の「なにわ金融道」的事実はさておき。
ふははは、若い頃の借金は、オトコのカイショーよ!(そしてボクは社会制度上免除職ではないと判断されて、今も感謝の気持ちをこめて全額返済しています) ともかく、奨学金とアルバイトで爪に火をともす生活していたボクにとって、自腹で国際学会に行くということは、「ぜったい、モトはとらないと!」ということなのだ。 この「ムチャクチャイターイ自己投資」が、英語もろくにしゃべれないけど、ボクの恐ろしいまでの積極性の原動力だったのだ。そして成長の証だ。
さらにボクは木下藤吉郎ばりの秘策まで用意していた。実はジョージア大学には、アメリカ留学中に国内集会で、一度訪れていたのだ。そのときボクは、人生で唯一の体験である「ノーマルじゃない男子」との夜デートというとても苦酸っぱいケーケンをしていて(ここはいずれどこかでフィクションとして書きたいぐらい。しかし今回はスルーの方向で)、その街のことを忘れられないぐらいよく知っていたんだ。
「あの忌々しいクソ田舎街、クルマがなければ食事すら、にっちもさっちもいくまいのー。ワシもクルマがないばかりに恐ろしい目にあったんじゃ。ここはワシがレンタカーなぞ用意して、迷えるジャパニーズ研究権力者どもの従順なアッシー君と化せば、ただメシにありつけるだけではなく、将来のキャリアパスの取引の保険ぐらいにはなるじゃろうて。ゲフゲフ」
黒い・・・。なんて黒いんだ・・・、26歳のボク。もちろん、これは本当のボクじゃない。おもしろおかしく脚色しただけなんだ。 そんな黒い野望を秘めて、ボクは世紀末覇者ラオウばりのノムラ君といっしょにアメリカに旅立った。
= “あきらめたら、そこで試合終了ですよ” (公演 1/2) =
深海・地殻内生物圏研究分野/ 分野長 高井 研
私はこれまで自身のネットワーク(家族・親族・友人・知り合い・知り合いの知り合い・知り合いの知り合いの知り合い等454人ぐらい)を通じて1億2800万人の日本国民、いや世界72億人、の人々がJAMSTECに何を期待しているのかについて、密かにマーケットリサーチを重ねてきました。 その結果、実はこれまであまり公にされてこなかった真実が見えてきたのです。
それは、世界72億人のおよそ80%(にえいやと拡大解釈できる割合の人々)が、「世界広しといえどもJAMSTECでしかできないような、有人探査・遠隔探査・その場計測-観察技術・サンプルリターンを最大限生かした“未到極限環境生命圏”への探査に挑み続けてほしい。 そしてその成り立ちや働きを解明することで、国民や世界人類の夢とロマンと好奇心と欲望を満たして欲しい」と思っているという真実だったのです。
たしかに漠然と一般論として問われた場合、国民や世界人類は「科学技術は現在や未来の生活や安全、健康、環境に役に立つことに傾注せよ!」と言うかもしれません。 しかし、JAMSTECが何たるかを少しでも知った理解者は、まるで春の野山に花が咲き誇るように暗黒の宇宙で生命が咲き誇る「海洋と生命多様性の惑星=地球」における未だ知られざる生命の多様性の探求や極限的な環境における生命や生命圏の限界やその成り立ちの解明を、さらには「海洋と生命多様性の惑星=地球」を築き上げてきた原動力たる地球と生命の40億年以上にわたる密接な関わりの本質の解明を、自らの知的好奇心の渇望に成り代わって追求して欲しいと思っていることをあらためて感じました。 ※続く……
・・・・・・・・つづく・・・・・・・
マリアナ海溝の水深8,178m https://youtu.be/3yG_sfow11Q
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