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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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未知なる深海へ 高井 研 =043=

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〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇

= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =

☠  青春を深海に掛けて=高井研=  ☠

ᴂ 第3話  JAMSTECへの道 後編 ᴂ

◇◆ その2  ヌルすぎるぞ、オマエら!--反抗期の博士課程 =1/2= ◆◇

博士課程の最初の1年間をアメリカで過ごし、全身に刺激を受けまくった高井研は、1995年春、まるで「愛と青春の旅立ち」のラストシーンのリチャード・ギアになったような気持ちで、京都大学の研究室に戻ってきたのだが・・・・・・。

アメリカ留学から帰ってきたボクは、博士課程2年生になっていた。そして高揚感と情熱をたぎらせて日本に戻ってきたボクは、大学の研究室の雰囲気に、昨今のプロ野球選手御用達の便利な言葉、「違和感」、のようなモノを感じていた。

 ヌルイ!ヌルすぎるぞ、オマエら!」

留学前には特に感じなかった研究室の小春日和の午後のような弛緩した空気。それが堪らなくイヤに感じるようになっていた。またその違和感は、かならずしも学部生や修士課程大学院生だけに向けられたモノではなく、研究室の先生達にも向けられていた。

その違和感とともにボクは、これからは京都大学農学部海洋分子微生物学研究室(改組で名前が少し変わった)の「左子先生の学生1号」ではなく、「海洋分子微生物学研究室のタカイとして、生き抜いていかないとイケナイ!」と猛烈に感じ始めていた。

今から振り返ってみると、これが一種の「親離れ」なんだろう。親子間でも、子供が一時期、一種の嫌悪感や反抗を覚えたり、独立心が芽生えたりする時期があるように、研究室の師弟関係においても、当然存在すべきモノだと思う。むしろこれがないと、研究者としての独立心、独創性を大きく飛躍させるきっかけがなかなか掴めないのではないかとも思う。

そして重要なのは、弟子にとっての「親離れ」と同時に、師匠の立場からすれば「子離れ」も大事だということ。これをうまくコントロールできない師匠は、いろいろささくれだった研究上の人間関係モンダイを起こしやすいかもしれない。

左子先生は、そんな反抗期ツッパリ大学院生のボクをうまくいなしていたと思う。もちろんボクも「博士号授与」という生殺与奪のタマを握られていることはジュウジュウ承知していたので、理不尽なツッパリをしていたわけでもなく、距離を置くようになっていたというのが正確な表現かもしれない。

そんな「オトナの階段のぼるキミはまだシンデレラさ」(引用元:H2O『想い出がいっぱい』)なボクの内面のヒダヒダはともかく、日本に帰ってきてから約1年半のうちに、博士論文を仕上げねばならない、という差し迫った現実があり、実際はあくせく実験に打ち込んでいた毎日だった。

アメリカ留学中に博士論文のテーマとしてはイロイロやってみたいアイデアは湧き上がっていたが、第2話で紹介した先輩の長崎さんの「博士研究は決して君のライフテーマではない。博士号とは所詮、運転免許のようなモノである」という教訓を胸に、最短距離でゴールにたどり着ける題材に集中することにした。それは修士課程から取り組んでいた「超好熱菌のタンパク質の熱安定性についての研究」を進めることだった。

ボクがその研究に打ち込むようになった時期は、まさに「超好熱菌のタンパク質の熱安定性についての研究」全盛期だった。 実はその10年ぐらい前から、60~70℃ぐらいで生きられる好熱菌(超がつかない普通の好熱菌)のタンパク質の熱安定性について研究が盛んに行われていた。

それはタンパク質が高温でもカチカチにならない「魔法のような法則」=「20種類のアミノ酸の並び方の法則」があるに違いないと考えられていたからで、その法則が分かれば「熱湯の中で煮沸消毒してもナマ卵のままで、いつでもどこでも安心、卵かけ御飯!」という卵かけ御飯好きにはたまらない夢のような生活だけでなく、「いろんな産業にもバリバリ応用できる夢のタンパク質が創れるようになる」という未来予想図を多くの研究者が描いていた。

残念ながら、ボクが学生の頃には、その「魔法の法則の夢」はすでに、むなしく散っていたのだった。とはいえ、それなりの原理は解読されていたので、ひょっとするとかなり先の未来には可能かも?という一抹の期待はまだ残されていた。

ところがだ。1980年代の中頃から海中の熱水環境などから、100℃以上の高温で生きられる超好熱菌が、バシバシ見つかり、そのタンパク質の熱安定性について研究が進むと、そんな期待が打ち砕かれてしまった。超好熱菌のタンパク質は、「普通の好熱菌のタンパク質とはぜんぜん違うやり方」によって、より高度な耐熱性を獲得している。そんな最新の結果が、毎週のように研究論文で報告されている状況だったのだ。ボクの博士課程時代は。

「時代はタンパク質のX線立体構造解析なんじゃあ! 構造生物学なんじゃあ!」という、いつもの短絡的マイブームが到来していた。そしてボクの研究興味は、「生命の起源や太古の生命を解明したい」という原初の想いとは、かなり離れた場所を漂流していたと言えよう。

一方でそんな超好熱菌のタンパク質の熱安定性についての最新の研究成果に触れる度に興奮しながらも、実は自分の研究を客観視する冷静な部分のボクは焦ってもいた。どんどん新しいことが分かり、共通原理みたいなモノも見えはじめつつある状況のなかで、「自分の研究はそんな研究たちと比べてどうよ? カスみたいな研究なんじゃないか? カスとまでは言わんが、定食に付いてくる黄色いタクアンぐらいなんじゃないか?」と。

= 地球最後のフロンティア“深海”― 光届かぬ世界「しんかい6500」で行く (5/5)=

次世代の深海探査は……

海底探査の現場では今、遠隔操作無人探査機(ROV)や自律型無人探査機(AUV)が活躍している。しんかい6500は建造から28年。改良を重ねてはきたものの、より視野の広いコックピット、地球の最深部まで潜航可能な性能などを求める声も途切れない。

一方、JAMSTECは既に最大潜航深度7000メートル級の無人探査機「かいこうMk-Ⅳ」を運用している。次世代の潜水調査船は有人か無人か、という議論も専門家の間で始まっている。

JAMSTEC職員で地球生物学者の高井さんは、有人と無人の差はほとんどない、と考えている。JAMSTECで検討の始まった次世代有人潜水調査船計画も、有人機に加え、ROVやAUVも組み合わせた探査体制にしていくという。

「研究目標へのモチベーションに関しては有人に圧倒的な強みがあります。『深海熱水のところで生命が誕生したんじゃないか』という説を僕が唱えたときも、誰に突っ込まれようが、こう言えたんですね。『あなたは海底を見たことないでしょう』と。そこが僕の自信だった。有人潜水艇で深海に行った人じゃないと言えないセリフです」

では最後に、動画で深海の旅を。しんかい6500に搭載したVRカメラの映像で、公開はこれが初めてになる。

伊豆・小笠原海溝の青ヶ島東方(水深約800メートル)、駿河湾の戸田沖(同1300メートル)、相模湾の初島南東沖(同1200メートル)。映像の中に矢印が現れたら、そちらに目を向けてほしい。いったい、何が現れるか―。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)で、どっぷりと深海の世界に浸ってもいいかもしれない

動画 : “しんかい6500” 3/3 : https://youtu.be/8hQ0SQVyFXc 

 

・・・・・・・・つづく・・・・・・・

動画 : 深海VR (JAMSTEC)  https://youtu.be/XZv-KkWVBr0

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