〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇
= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =
☠ 青春を深海に掛けて=高井研= ☠
ᴂ 第一話 実録! 有人潜水艇による深海熱水調査の真実 ᴂ
◇◆ その3 ぜったい変な未知の生物が見つかるに違いない =1/2= ◆◇
JAMSTECの研究者・高井研は、生命の起源を追ってインド洋上にいた。調査最終日、海況は悪かったものの、なんとか潜航許可が下り、二人のパイロットと高井をのせた「しんかい6500」は、水深2600メートルの海底へ向けて潜航を始めた・・・・・・
・・・・・とかなんとか言っているうちに、深度計の数字は水深1500mぐらいを示している。思えば深くにきたもんだ。今、チタン殻にヒビが入れば、モノの一瞬でボクらはペシャンコになる。
最初のころは、やはりこの深さに対する恐怖心はすごくあった。とにかくコックピットの中に海水が浸水してくるんじゃないかとビクビクしていたなあ。最近は慣れてきて「新幹線のなかのおっさん」みたいに、あられもない格好で居眠りまでするぐらい慣れたけれど。
しんかい6500が潜水しながらずれた位置を補正するため、着底予定地点にむけて、潜水しながらゆっくり動き始める。そのころから、今日の潜航調査の作業を再確認する。
まず一番重要な事。今日は、最後のたった1回の潜航チャンスで、しかもその時間は極度に短いかもしれない。「インド洋第4の深海熱水活動の特徴」を最低限理解する試料を、優先順位を決めて、起こる事態に臨機応変に対処しながら、悔いを残さないように採取しなければならない。
まず、深海熱水が噴出しているチムニーを見つけたら、すぐさまその脇に着底する。熱水噴出孔にしんかい6500をベタ付けするこの作業は、冬山遭難者救助のヘリコプターの操作と同じように、じつはかなり難しい。
普段であれば、多少時間が掛かっても、「なにやっとんじゃい、このヘボパイロットが!激辛カレーで顔洗って出直してこいや!」とブラックなボクが出現することなく、「落ち着いてゆっくりね♥」とやさしく接することができる。
しかし今日は1秒でも惜しい。こういうときこそ、人間の器が試される。決して修羅の顔を見せることなく冷静に事を運べるか、ある意味ボクにとっても修羅場なのだ。
最優先事項は、噴出する高温の熱水をしっかり採取すること(もちろん温度をしっかり計測することもとても重要)。これによって、今日発見される「インド洋第4の熱水活動」の特徴がかなりの部分明らかにできる。
次に、噴出する熱水の周りにできる煙突状の構造物「チムニー」を採取すること。これもとても重要だ。チムニーを構成する元素(鉄とか銅とか亜鉛とか)の種類や鉱物を詳しく調べると、熱水活動を引き起こす海底のさらにその下の、海底下の熱水を作り出すメカニズムを知る大きな手がかりになる。
さらにそのチムニーには、超好熱菌という100℃を超える高温でピチピチ生きる微生物(バクテリアとアーキアという似て非なる小さな生きものたち)や水素、硫化水素、メタン、鉄なんかを栄養にする化学合成微生物が、ミッシリと棲み着いている。
こういう微生物は、極限環境微生物と言って、ボクらと同じ材料や仕組みで生きる生物のくせに、全く違う性質を持っている。だから、例えば地球で最初に誕生した生物の生き残りであったり、もしかしたら宇宙に飛び出していった宇宙的生物であったり、また地球の奥深くに悠久の年月潜んでいた地底生物であったり、いやなかったり、などなど、という興味深い生物なのだ。
=補講・資料=
高井研・深海で生命の起源を探る(7/9)
──スケーリーフットというのは深海に生息する貝ですか?
スケーリーフットはインド洋の深水2,500mの深海底に生息する、硫化鉄のウロコをまとった巻貝です。コンピュータゲームの中でしか見かけないような空想上の生物みたいな珍種で、2001年にインド洋で発見された時には世界的に大きな話題となりました。スケーリーフットは深海底で生きていた貝なので、そこら辺の海水と一緒に入れたらバクテリアの影響で皮膚炎になってすぐに死にます。スケーリーフットの飼育法はまだ研究中で、地上ではまだ3週間しか生きられないので、日本まで飛行機で送りました。生きているスケーリーフットを皆に見てもらって、僕たちがそれを初めて見た時の感動を伝えたかったんです。
──その気持ちは子どもたちにきっと伝わっていると思います。
伝わっているといいなと願います。それにそのための努力はやっていきたいと思います。深海生物の写真や標本を見ると、こいつがどんな姿で海底にいるのだろうと想像しますよね。でもその想像は、リアルを知ってこそ、さらに膨らませることができる。そういう意味でも、生きたリアルな姿を見せたいと思ったんです。
だけど現実には、自分が想像したことと本物には違いがあるわけで、それを知った時に何を感じるかがすごく重要です。僕らがなぜ人の行かない深海に行くかというと、自分の想像が全然当てはまらないということを毎回感じるからです。
──高井さんの将来の夢を教えていただけますか?
まだ見ぬ深海の、暗黒の熱水活動には、人類がまだ出会ったことがない生物がひっそりと生きているに違いありません。僕はその生物を最初に発見したい。それに向かって走り続けて、途中でバタッと倒れて死ぬことが僕の夢です。
──走り続ける間にどんどん新しい発見をして、ガッツポーズする高井さんの姿が目に浮かびます。高井さんは新発見をすると「勝った!」という気持ちになるそうですが、何に勝ったのでしょう?
自分にです。途中くじけそうになったり負けそうになるのを乗り越えながら、最後の最後に勝ったという感じですかね。僕はこれまで30回近く深海に潜ったと言いましたが、希望を出した人が誰でも潜れるというわけではありません。自分の想像力や妄想を頼りに提案書を書いて、上層部をうまくその気にさせて認めてもらうという、詐欺師のような才能が僕にあったから30回も行かせてもらえたんです。
もちろん業績を出して詐欺師ではないという証明をしてきたから、それだけの回数潜らせてもらったわけですけど・・・。いつも「何も見つからなかったらやばい」というプレッシャーがあって、不安や苦しみと闘いながら、自分が想像したことを信じるんだ!と己を奮い立たせてやっています。だから、何か発見したとき「勝った!!!」という気持ちが湧いてくるんです。
・・・・つづく・・・
動画 : 硫化鉄の鎧を身にまとった巻貝~スケーリーフット~
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