〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇
= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =
☠ 宇宙・深海・地殻、生物の根源を求める学究=高井研 ☠◇◆ インタビュー:まだ見ぬ生命を深海・宇宙に求めて =4/5= ◆◇
──感動を共有することが人の役に立つ、というのは?
お金を稼ぐとか短絡的な利益を求めることだけではなく、若い世代に「将来こういう職業になりたいな」とか、JAXAやJAMSTECで言えば「将来絶対この研究所で働きたい!」と思ってもらうこともとても大事な事だと思います。例えば、最近一番感動したというか、励まされたことがあったんです。今年の1月から3月にかけて行われた「しんかい6500」の世界一周航海「QUELLE2013」で、インド洋からスケーリーフットという貝を持ち帰って、それを生きたまま一般公開しました。
小学生や中学生の子どもがいっぱい来て、彼らはスケーリーフットに直接触れ、研究者に話を聞いてとても楽しそうにしていました。そして、「将来私たちもJAMSTECで働きたい」と言ってくれたんです。これこそが、お金で計ることのできない価値ですし、大きな意味で言えば国家としての財産だと僕は思います。「JAMSTECがやっていることは、ワクワクすることなんだ」と思ってもらうことが重要で、そのワクワクを共感できることが、僕らを研究調査に駆り立てる一番の原動力だと思っています。
──スケーリーフットというのは深海に生息する貝ですか?
スケーリーフットはインド洋の深水2,500mの深海底に生息する、硫化鉄のウロコをまとった巻貝です。コンピュータゲームの中でしか見かけないような空想上の生物みたいな珍種で、2001年にインド洋で発見された時には世界的に大きな話題となりました。スケーリーフットは深海底で生きていた貝なので、そこら辺の海水と一緒に入れたらバクテリアの影響で皮膚炎になってすぐに死にます。スケーリーフットの飼育法はまだ研究中で、地上ではまだ3週間しか生きられないので、日本まで飛行機で送りました。生きているスケーリーフットを皆に見てもらって、僕たちがそれを初めて見た時の感動を伝えたかったんです。
──その気持ちは子どもたちにきっと伝わっていると思います。
伝わっているといいなと願います。それにそのための努力はやっていきたいと思います。深海生物の写真や標本を見ると、こいつがどんな姿で海底にいるのだろうと想像しますよね。でもその想像は、リアルを知ってこそ、さらに膨らませることができる。そういう意味でも、生きたリアルな姿を見せたいと思ったんです。だけど現実には、自分が想像したことと本物には違いがあるわけで、それを知った時に何を感じるかがすごく重要です。僕らがなぜ人の行かない深海に行くかというと、自分の想像が全然当てはまらないということを毎回感じるからです。
好奇心で」研究していることを隠さずに
──高井さんの将来の夢を教えていただけますか?
まだ見ぬ深海の、暗黒の熱水活動には、人類がまだ出会ったことがない生物がひっそりと生きているに違いありません。僕はその生物を最初に発見したい。それに向かって走り続けて、途中でバタッと倒れて死ぬことが僕の夢です。
──走り続ける間にどんどん新しい発見をして、ガッツポーズする高井さんの姿が目に浮かびます。高井さんは新発見をすると「勝った!」という気持ちになるそうですが、何に勝ったのでしょう?
自分にです。途中くじけそうになったり負けそうになるのを乗り越えながら、最後の最後に勝ったという感じですかね。僕はこれまで30回近く深海に潜ったと言いましたが、希望を出した人が誰でも潜れるというわけではありません。自分の想像力や妄想を頼りに提案書を書いて、上層部をうまくその気にさせて認めてもらうという、詐欺師のような才能が僕にあったから30回も行かせてもらえたんです。
もちろん業績を出して詐欺師ではないという証明をしてきたから、それだけの回数潜らせてもらったわけですけど・・・。いつも「何も見つからなかったらやばい」というプレッシャーがあって、不安や苦しみと闘いながら、自分が想像したことを信じるんだ!と己を奮い立たせてやっています。だから、何か発見したとき「勝った!!!」という気持ちが湧いてくるんです。
──若い世代の研究者にアドバイスをするとしたら、どんな言葉をかけますか?
「楽しいという好奇心で研究をしている」という気持ちを大事にしてほしいです。要するに、サイエンティスト自らが自己規制をかけてほしくない、ということです。
=補講・資料=
「信託」が物事をうまく回す
いまの日本は、ヒトや社会に対する漠然とした「信頼」がなくなっていますよね。政治にしても何にしてもプロフェッショナルがいるはずなのですが、誰を信頼していいかがわからないために、プロでない一般の人がインターネット等の溢れる情報に踊らされ、パニックになったり騒ぎ立てたりしている。「一億総情報収集」時代で情報過多になってしまっています。
僕は「信頼して任せる」ことを「信託」と言っています。信頼し、任せることが大切ではないかなと。政治や社会の矛盾も、逐一ロジカルに追究すればなくなる。本当でしょうか?勿論良くなる方向に持っていけるかもしれませんが、追究には手間暇や時間がかかってお金の無駄にもつながり、結果として状況が悪くなってしまうこともあるのでは?誰かがやることを信頼して任せることでうまくいっていた部分があるのに、今の世の中は行動をつまびらかにしすぎることで物事がうまく行かなくなったことも多いのではないでしょうか。
人間はみんながロジックで動くわけでありませんから、一から百までキッチリ管理したら動かなくなってしまいます。仕事もそう。上司にも部下にも信頼して任せることで、うまく回る部分は大きいと思いますよ。
・・・・・つづく・・・・・
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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