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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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未知の世界へ 関野吉晴 =016=

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〇◎ 未知の世界へ飛び込んでいく関野吉晴 ◎〇

= Webナショジオ_“北極探検 二つの物語”に転載・補講 =

☠ 関野吉晴の探求心はどこから来たのか  ☠

◇◆ 島影、星、五感を使って航海する =後節= ◆◇

 私たちはナビゲーションにGPSもコンパスも、六分儀も使っていなかった。島影と星をたよりにカヌーを進めていた。主に頼りにしたのは島影だった。いつもは島伝いに航海しているので、丘とか岬とか動かない目標めがけて行ける。岸から5~10km離れた所を走っていれば、荒れてもすぐに岸に寄れる。

 ただし、海峡横断のときは島影が頼りにならないことがあった。大きな島なら50~60km離れていても見えるが、小さな島だと20kmほどまで近寄らなければ見えないからだ。そんな航海の時には、星を利用する。昼間は太陽、夜は恒星、惑星、月を利用する。

 だが、熱帯での昼間の航海は、緯度の高い地域と違って、太陽を使いにくい。東京なら、正午に太陽はかならず南側にある。ところが、熱帯では真上にあるから、日中に方角を決めるにはふさわしくない。島影が見えない時には、正午近くには一時的に自分の位置を見失う。それだけに島影が見えた時にはほっとした。

失った感覚を取り戻すために

 島影と星を頼りにする航海に、当初、マンダール人クルーから不満の声が上がった。
「おれたちはいつもコンパスを使ってきた。いつものように航海したいので、コンパスは使いたい」とキャプテンの一人は主張した。
 彼らはナビゲーション以外の目的でコンパスを必要としていた。航海中も礼拝をするのでメッカの方角を正確に知りたいからだ。そのコンパスを使わない手はないだろうと言うのだが、私は丹念に説得し、コンパスを使わない航海に納得してもらった。

 私たちは400万分の1の簡単な地図を使っていた。一時、より正確な海図も使ったのだが、すぐに使わないことにした。海図は詳細な地図だけに、海の深さも正確に分かるし、自分の位置さえも分かってしまうからだ。

 太古の人たちはもっと五感を使って自然を読んだはずだ。海のおおよその深さは海の色で判断できる。大海の深いところは濃紺だ。浅くなるにつれてコバルトブルーになり、エメラルドグリーンになる。さらに浅くなると、透明に近くなり、海底の岩が見えるようになる。海底の岩が見え出すと、岩に当たる危険があるので、ぶつけないように気をつける。風の吹いてくる方角、自分の位置、これからの天候を五感で判断して航海を続けた。

 医学の世界でもかつては視診、触診、聴診、打診や嗅覚、味覚などをフルに使って診察し、診断した。今は医療機器にとって替わられ、若い医師たちは五感を使って診察することはなくなった。極端な場合、患者の身体をまともに見ずに診察するようになり、大切なスキンシップもなくなった。

 私は、太古の人たちに思いを馳せて航海をするには、五感をフルに使って、失ってしまった感覚を取り戻す必要があると考えた。島影と星に頼ることにしたのは、そうした理由からだ。しかし困るのは、夜間に島影が見えず、しかも厚い雲がかかっている時だった。そんな日は満月でも方角を失う。風向きと、それより変化の遅い波の方向を頼りに航海するしかなかった。

 さいわい、この日の夜は快晴だった。晴れ晴れとした気分と共にしっかりと進む方角が読めて爽快だった。

 しかし、前夜一睡もしなかったので、睡魔が襲ってきた。舵を握るイルサンが時々私に尋ねてくる。「この方向でいいのか」

 この日、縄文号に乗っている日本人は私1人だったので、眠るわけにはいかない。ナビゲーターが私1人だからだ。南半球に住んでいるマンダール人は北斗七星の一部は見たことがあるが、北極星を見るのは初めてだ。北斗七星から北極星を導く方法を教えても、自信がなく、すぐに「このまま進んでいいのか」と聞いてくる。

 彼らにも星座があるが私たちが知っている星座とは違う。たとえば、南十字星は「失敗した家」という。大工が家を作ろうとしたが、隣で美しく輝く星に見とれてしまった。そのために南十字星は形が少し崩れていると言うのだ。確かに少し歪んでいる。しかし彼らにとっても南を示す星座として重要だ。

 小さな航海燈をつけたパクール号が近くを走っている。第十夜の月は航海燈がなくてもパクール号が見えるほど明るい。パクール号は普通に走ると、縄文号の倍以上のスピードが出る。しかし縄文号に合わせるために、帆を広げて風を逃し、縄文号に合わせている。

 昼間より風は弱まったが、それでも強い南風が吹いている。3人のマンダール人クルーは昼間から最後部に立ち続けている私に、「少し休んで、寝たほうがいいんじゃないか」と言う。確かに睡魔が襲ってきた。こくりこくりしている私を見て、マンダール人たちも心配している。
 私が寝ると、パクール号と離れてしまった場合、ナビゲートする人間がいない。とはいえ、私はカヌーの後ろ端に立っていて、握っているサンギランの手すりを離せば海に落ちる。夜の落水は死を意味する。ヨットでの死亡事故で一番多いのは落水だ。歌を歌ったり、スクワットをしたりして、睡魔から逃れようとしたが、とうとう夢を見始めた。

=補講・資料=

ウェイファインディング(その一;1/3)

ウェイファインディング(Wayfinding) は一般にポリネシア航法とも呼ばれ、広義にはオセアニア諸地域で用いられているGPS六分儀羅針盤海図クロノメーターなどの機器を用いない航海術のことである。狭義には、1980年にハワイ在住のナイノア・トンプソンが考案・命名した航法技術のことである。スターナヴィゲーションとも呼ばれることもある。

ポリネシアミクロネシアの先住民たちは極めて広大な海域に点在する島々で生活していたため、航海カヌーによる遠洋航海を行う必要があったが、その際には陸地が一切見えなくなることも多かった。そこで彼らは天体観測、海流や波浪の観測、生物相の観察、風向の観測などから自らの現在位置と方向を推測する航法技術を発達させた。これが広義の「スター・ナヴィゲーション」である。

実際に船を出してから目的地に到達するまでの航法は、航法を行う海域や流派によって著しく異なるので、一般化して解説することは難しい。例えばソシエテ諸島からアオテアロア(ニュージーランド)を目指す場合、南東の貿易風を利用してポート・タック(左舷開き)で南西の進路を維持し、日没時の太陽の位置で微調整を行えば、かなりの確率でアオテアロアに到達可能である。

またカロリン諸島のように島と島の間が詰まった海域では、エタク・システム(航法師が航法の目印となる島々の心的表象を航海カヌーを取り巻く水平線の上に配置し、航海カヌーの進行に従ってそれらを移動させる。航法師は目印となる島々の心的表象の位置によって現在位置を把握する)が有効である。

・・・・・新節につづく・・・・・

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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