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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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未知の世界へ 関野吉晴 =015=

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〇◎ 未知の世界へ飛び込んでいく関野吉晴 ◎〇

= Webナショジオ_“北極探検 二つの物語”に転載・補講 =

☠ 関野吉晴の探求心はどこから来たのか  ☠    12p黄色

◇◆ 島影、星、五感を使って航海する =前節= ◆◇

成功港から目的地の西表島西部まで直線で280kmある。方角は北が0度だとすると、東に60度になる。私たちのカヌーは黒潮によって北に流されるので、真東に向かって行けば目的地近くに着けると、計算した。

 台湾からの航海では、私は縄文号に乗った。東に向かうと、風速10m以上の強い南風が起こす3メートルをこえる波を横から受けて進むことになる。南風が吹き続け、波の方向も変わらない。帆は常にカヌーの左側で風を受ける。船体は常に左側に大きく傾いていた。

 一回だけ、左側に倒れるのではないかと思うほど傾き、キャプテン以外は皆反対の風上側に立ってバランスをとった。さいわい転覆はのがれ、皆で目を合わせて苦笑いした。その後も左側のバチャバチャ(船体の横に広がる竹の桟敷。寝たり、座ったり、オールを漕いだりする)はほとんど沈んでいた。

 真横から風を受けての帆走はスピードが出ない。船体を真東から少し北側に向けてやると、やや後方から風を受けるので、スピードが上がる。しかし、もう一艘のパクール号は船を真東に向けて進んでいるので、徐々に離れていく。そうすると、やがてパクール号が近寄ってきて、「そっちに向かうと、西表島に着けませんよ」と渡部純一郎が大声でアドバイスしてくる。縄文号も東に向きを変えるが、また北に船首を少し振る。その繰り返しだった。

船尾の指定席

縄文号に乗るといつも船尾に立った。キャプテン席の後ろにある「サンギラン」という部位のさらに後ろだ。サンギランは、舵を取り付ける溝のついた重要な部位だ。進水式の時、カヌーの重要な部位に生きた鶏の鶏冠からとった血を塗るのだが、サンギランにもその血を塗った。マンダール人クルーはイスラム教徒だが、船に関してはそれとは相いれないアニミズム的な儀式が多い。彼らにとっては家とならんで重要である船の、いにしえから続く精霊信仰や儀式。もしこれらを禁じていたら、イスラム教は彼らの文化に入ってこられなかっただろう。

 船尾に立つと、様々なメリットがあった。キャプテンが進路を分かっていない時、直に説明できる。キャプテンが疲れたり、食事をしたりする時に、さっと私がキャプテン席に座って舵を握ることもできる。もう一つのメリットは、一番濡れにくい場所であるということだ。特に風が強くて波しぶきが激しい日などは助かる。

 とはいえ、ずっと濡れずにいられるわけではない。成功港では、初夏のこの時期が旬のライチをたくさん買った。航海中は、たまにカヌーの右側の桟敷に座ってライチを食べるのだが、海が荒れているので、波しぶきが果てしなくかかってきて、びしょ濡れになってしまう。ライチを食べた後、また揺れて滑るデッキを這うようにしてキャプテン席の後ろに戻った。

 晴れた日の楽しみは夕陽だが、夕刻になって水平線に厚い雲がかかってしまい、がっかりすることも少なくない。この日もいつの間にか太陽が隠れてしまい、中途半端な夕焼けが現れた。しばらくして星が出てくる。月が高く昇っていて明るいのだが、人工的な光がないおかげで、星は降ってくるのではないかと思うほど、たくさん、明るく輝いている。

島影と星を頼りに

 快晴だったので、ナビゲーションは容易だった。東京では見られないが、この辺りでは北極星と南十字星が、どちらも水平線近くに見えた。私たちは東へ向かうので、左手に北極星を、右手に南十字星を見ながら進めばいい。

 正面よりやや南寄りにサソリ座が見えた。天の川の中に、他に名前のつけられないような、まさしくサソリ、という姿で鎮座している。その中の一等星アンタレスは、火星や金星のようにまばゆく光っている。太古の人たちもこれらの星を自分の位置を確認するために使ったはずだ。2年前に出航したインドネシアのランべでは、南十字星は真上にあった。それが今では水平線の方向にある。遥々と長い距離を航海してきたのだと感心する。

 夜になると、舵はイルサンが握った。時々うつ状態になり、精神的に不安定ではあるが、一番力が強く頼りがいのある男だ。1年目、スラウェシ島からボルネオ島に渡った直後、荒れた海の中で、アウトリガーの竹が外れたことがある。波の衝撃で、結んでいたラタン(籐)が緩んだのだ。すぐにカヌーを止めると、イルサンはロープをもって荒れる海に飛び込んだ。冷静にフロートの竹を縛り、再び走れるようにして、難を切り抜けた。応急処置とは言え、その時の彼の活躍は目に焼き付いていた。

=補講・資料=

航海術

航海術とは、船舶の自位置および方角を算出あるいは推定し、目的地に到達するための最も合理的な進行方向・速度を決定する為の技術の総称である。この技術には様々な手法があり、方位磁針六分儀クロノメーター海図などを用いる方法、陸地の特徴的な地形を目印にする(山アテ)方法、天体の位置や動き、風向、海流や波浪、生物相などから総合的に判断する方法などがある。

近年ではGPS(グローバル・ポジショニング・システム)や衛星通信を利用する方法が主流を成すが、水上でピンポイントで漁場の上に船をつけるには、民生用のGPSでは精度が不足するとして、山アテを併用する漁師も多い。また、ポリネシアやミクロネシアでは、民族のアイデンティティのよりどころの一つとして、伝統的な推測航法術を再評価する気運が高まっている。

交差方位法 : 肉眼、方位磁針(コンパス)、海図、を用いて船位を求める方法。「方位線」や「重視線」を用いた方法である。

「方位線」とは肉眼とコンパスを用い、以下の手順によって海図上に引く線。 1.まわりの景色の中に確認でき、かつ海図上でも確認できる目標物を選ぶ。 2.目標物の方位をコンパスで測定する。 3.海図上で目標物から測定した方位の線を引く。自船はこの線上のどこかにいる、ということが判る。

「重視線」は「トランシット」とも呼ばれ、コンパス無しでも海図上に引ける線。まわりの風景の中に二つの目標物が同一線上に(一直線に)見えている時に、海図上でそれらを特定し、二つを結ぶ線を引く。自船はこの線の延長上のどこかにいる、ということが判る。

以上の「方位線」や「重視線」などの線を2本以上海図上で引くと、線の交点ができる。その交点に自船はいる、ということが判る。

【参考 ; 天測航法 / https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E6%B8%AC%E8%88%AA%E6%B3%95

・・・・・新節につづく・・・・・

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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