〇◎ 未知の世界へ飛び込んでいく関野吉晴 ◎〇
= Webナショジオ_“北極探検 二つの物語”に転載・補講 =
☠ 関野吉晴の探求心はどこから来たのか ☠◇◆ 出航は、逆風に弱い帆で =後節= ◆◇
オールの軌跡に合わせて、黒い海に無数の夜光虫の蛍光色の光の点が走る。月明かりがないと暗いので、慎重に船を進めなければならない。サンゴ礁にぶつけると、小さなものでも、カヌーにダメージを与える。岩に乗り上げれば、海に飛び込んで押したり引いたりしてカヌーを岩から下ろす。
東の空がオレンジ色に染まって来る。海の中はまだ見えないが、水平線がはっきり見えている。やがて東の空の雲が最初にピンクに染まり、その後真上、西の雲もピンクに染まっていく。星も東から西へと順番に明るくなった空に吸い込まれていく。
風がない時はじりじりと照りつける太陽の下で、素っ裸でも汗びっしょりになって、上半身全体を前方に屈ませ、オールを引きながら、身体を後方に反らせて漕ぐ。それでも時速2キロ、シーカヤックの3分の1のスピードしか出ない。重たいのだ。潮の流れが逆の時はもうお手上げだ。浅瀬に錨を下ろしてじっと待つ。辛抱することの多い航海だ。
逆にいい風が吹いている時は爽快だ。このまま止まないで欲しいと願う。操縦席の人間以外は寝ていてもかまわない。カヌーの方向を変えるために帆を動かす時だけは操縦士をフォローしなければならない。実は順風に乗って走っている時は昼寝していても誰も文句は言わない。実際に寝てしまうこともある。
どちらにしても船上ではほとんどの時間は座っているか、横になっているかで、足腰の筋肉が弱ってしまう。私は努めて最後部に立っていた。時々操縦士が疲れたり食事のため席を立つ時にキャプテン代行で舵を握る。舵を握りながら、自分たちでコツコツと造りあげたカヌーで、日本に向かって航海しているのだということを実感し、噛みしめる。
太古の人々の航海を想像する
縄文号のデッキで風と潮に身をゆだねながら、太古の人々の旅に思いを馳せた。彼らは、たぶん島をひとつかふたつ移動するために、幾世代もの時間をかけていたはずだ。食料が豊富で航海技術が発達していたとしても、島にたどり着けるとは限らない。今とは違って地図がない。島がどこにあるのかも分からなかったのだから。
私たちは追い風の日を見計らい船を出すが、太古の人は果たしてそうしただろうか。順風では船足が早過ぎる。陸から離れた海域で海が荒れたら一巻の終わりだ。だとしたら向かい風のタイミングで、ゆっくりゆっくり慎重に進んだのではないか。インドネシアから日本にやってくるまでは、気の遠くなるほどの歳月を要したに違いない……。航海中、海原と空を見ながら幾度もそんな想像をした――私にとって、かけがえのない時間だ。
スールー海に面したパラワン諸島で沿岸警備隊のガルシア司令官に会った。「8月にパラワン諸島からミンドロ島に渡るのは危険で薦められない」と言う。ここは狭い海峡なので、潮の流れが速い。流れの速い潮と強い風がぶつかれば大波が起こる。とくに8月は危険性が高いので、別の季節にやるようにとのアドバイスだ。他の漁師、船員、海軍の将校も8月は避けた方がいいと言う。様々なデータを集め、マンダール人クルーたちの意見も聞いて、2009年の航海はパラワン諸島の北端コロンまでとした。
=補講・資料=
パラワン島
パラワン島( - とう、Palawan Island)はフィリピンの南西部にある島。北西を南シナ海、南東をスールー海に面し、ミンドロ島とボルネオ島の間にまたがる、南北の長さ397km・東西の幅の平均約40kmと極端に長細い島である。ルソン島、ミンダナオ島、サマール島、ネグロス島に次ぐフィリピンで5番目に大きな面積(11,785km2)の島で、パラワン州に属す。主な都市は、島の中央部にあるプエルト・プリンセサ。
熱帯雨林・密林に覆われた高い山岳地帯が島の大半を占め、南部のマンタリンガハン山(標高2,086m)が最高峰である。「フィリピン最後のフロンティア」などとも呼ばれる秘境で、生態系がよく残っており、エコツーリズムの対象ともなっている。プエルト・プリンセサ地底河川国立公園やトゥバタハ岩礁海中公園が世界遺産に登録されている。
南北に長いパラワン島の周囲には無数の小島がある。島の北西にはブスアンガ島、クリオン島、コロン島などで構成されるカラミアン諸島(Calamian)があり、フィリピン屈指の良好な漁場として、ダイビングスポットとして(周囲は太平洋戦争中の日本軍の沈没船が多い)、また高級リゾートとして知られている。
島北部の町、エルニドは、高く切り立った大理石でできた数十の島々の景観と、美しい白砂のビーチで知られており、周囲に点在するリゾート・アイランドへの発着港でもある。これらのリゾートは島一つをひとつのリゾート施設が独占するという贅沢な造りのもので、隠れ家的なリゾートを求める観光客に大変人気がある。
・・・・・後節につづく・・・・・
=上記本文中、変色文字(下線付き)のクリックにてウイキペディア解説表示=
・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・
前節へ移行 : http://blog.goo.ne.jp/bothukemon/e/836749b930fc83c2db3d623be9f525ae
後節へ移行 : http://blog.goo._not-yet////
----------下記の姉妹ブログ 一度 ご訪問下さい--------------
【壺公夢想;如水総覧】 :http://thubokou.wordpress.com
【浪漫孤鴻;時事自講】 :http://plaza.rakuten.co.jp/bogoda5445/
【疑心暗鬼;如水創作】 :http://bogoda.jugem.jp/
下線色違いの文字をクリックにて詳細説明が表示されます=ウィキペディア=に移行
================================================
・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
================================================