○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○
探検家になるために必要な資質は、臆病者であることです =植村直己=
= Webナショジオ_“河江肖剰-新たなピラミッド像を追って”より転載・補講 =
☠ 自分が主役になるよりは常にメンバーを影でサポートするような立場でいたい ☠
◇◆ 故郷・・・・・・・・ =3/4= ◇◆
さて、2009年4月の日高町訪問では、吉谷館長の車で近くの蘇武岳(1074メートル)の頂上のすぐ下まで行った。 といっても、この山は植村が豊岡高校1年のときクラスメイトと競走して登ったことがあったというだけのこと。 高校生の植村は山にはまったく興味がなく、学校に山岳部はあったけれどどんな活動をしていたのかは知らなかった。
私としてはただひやかしで吉谷館長の車に同乗させてもらっただけで、南の方向に有名な氷ノ山(1510メートル)が遠望され、但馬盆地が意外に幾重にも低山に囲まれているのを知った。
いっぽう、植村の少年時代からの友人である正木氏とは、円山川沿いを何の目的もなく車で下ったり上ったりした。 正木さんとは84年に上郷に行ったときからの知り合いである。 そのときはもう一人の少年時代からの友人、小山允一氏にも加わってもらって、植村の少年時代のことを取材したのだった。
印象に残っているのは、正木氏と小山氏は異口同音に、少年時代の植村は「とにかく平凡で、地味で、目立たなかった」と繰り返し語ったことである。 「学校の成績は中の上、良い方にも悪い方にも目立った子ではなくて、どうにも説明のしようがありません」と、2人は困惑するばかり。
正木氏= 「イタズラはよくやったけれど、それも大勢でわいわいやっているなかに植村もいたという程度で、とび抜けて悪さをしたというわけじゃないんですよ」 小山氏= 「牛の世話とか、家族の炊事とか、家の手伝いはよくやっていましたねえ。そのほかの時間はいつも一緒に遊んでいたはずなのに、不思議にこれという印象がなくて」
そんな調子で、話が尻すぼみになってしまうのだった。 その後も正木氏と会うたびにそんな会話を何度か重ね、だんだん子どもの頃の植村については話題にならなくなった。 ただ年譜上の植村の経歴をいくつか確かめたりすると、じつに正確に答えてくれるのがありがたかった。
たとえば今は年譜にはしっかり記載されているが、植村は豊岡高校卒業後すぐに明治大学に進んだのではない。 1年間就職しているのである。 植村自身、こんなふうに語っている。______《……両親は就職しろといい、兄貴は大学行ってもいいんじゃないかといってくれて、自分としてはやはり学校へ行きたい。いちおう大学受けて通ったんですよ。関西大学でしたけど。しかしオフクロが半ば強制的に勤め先を決めてしまったんです(笑)。》(『植村直己と山で一泊』小学館文庫)
地元に新日本運輸という運送会社があり、そこの人事課長が同じ村の人で、母親の知り合いだった。 母親はひとりでさっさと人事課長に頼みに行って、決まった以上は植村もそれに従わざるを得なかった。 しかしそのとき、植村は自発的に東京支社勤務を希望した。 それが入れられて、東京に下宿し、朝早くから夜遅くまで根をつめて働いた。 「東京に出てそんな勤めをしていると、学校へ行きたいという気持ちがだんだん強くなって」きて、翌年、明治大学を受験し直すのである。
植村は、とても受験勉強どころではなかった、と語っているが、はたしてそうだったかどうか。 植村流の深謀遠慮で、何とかして東京の大学に進みたいと考え、東京勤務になって親元を離れ、ひそかに受験勉強も怠りなかったという証言もないではない。
正木徹氏はかつていったことがある。 「当時の感覚からすれば、この村から大学へ行くことさえ手の届きにくいことでした」から、植村が卒業後に外国に行きたいといい出したとき、もう彼が何を考えてるのか見当がつかなくなった。 おそらく、正直な感想だろう。
私は、正木氏が運転する車で円山川の土手の道に出る。 車から下りて、菜の花が風に吹かれて黄色い波をつくるのをぼんやりと眺めながら、植村がかつて語ったことを思いだすともなく思いだしている。
家の手伝いだけは、よくやらされた。 いやでいやでしょうがなかったけれど、農家の子どもは手伝いをやらないわけにはいかなかった。 ___《……小学校上がったらすぐに、いや、もう小学校行く前から(笑)。 畑仕事、田んぼ仕事、そして牛の世話。 牛は農耕用の牛で、子牛をとろうとして飼っていたんです。 牛というのは、すごく世話がやけるんですよ。 毎日餌やらなくちゃいけない。 まわりを清潔にしてやらなくちゃいけない。》(『植村直己と山で一泊』小学館文庫)
=補講・資料=
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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