○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○
探検家になるために必要な資質は、臆病者であることです =植村直己=
= Webナショジオ_“河江肖剰-新たなピラミッド像を追って”より転載・補講 =
☠ 自分が主役になるよりは常にメンバーを影でサポートするような立場でいたい ☠
◇◆ 『青春を山に賭けて』の時代 =4/9= ◇◆
最後に、軍の司令官は、植村の登山装備が貧弱すぎる、と指摘し、植村は必死で弁明につとめた。 セータを取り出し、両袖に足を通して着てみせて、寒いときはこれが立派にズボンの役割をする、と大勢の見物人に笑われながらパントマイムを実演してみせた。
司令官は植村の熱意にほだされたのか、あるいは相手にしていることに飽きたのか、ついに許可を下した。 そして手袋や防寒具を貸してやるから持っていけ、といった。 植村は、「山登りは自分の足でやるもの。自分の装備でやるものだ」
と見栄をきった。
そして、直ちにアコンカグア頂上めがけて出発。 周囲から20日かかるといわれたのを、わずか15時間で登頂してみせた。頂上に雪はなく、奥穂高岳のそれのように平たい。 置いてあった手帳に、「一九六八年二月五日午後二時十五分、植村直己」と書きこんだ。
植村の日記・覚え書、あるいは『青春を山に賭けて』を読んでみると、登山そのものの困難よりも、たとえば登山の許可を得るというような交渉ごとのほうが何倍も大変だったことが如実に伝わってくる。
組織で事に当るのであれば、事態はもっと円滑に運ばれていくであろう。 植村のばあいはいつもひとりで、何のバックアップもなかった。 不得手なスペイン語を使っての交渉は、ほとんどマンガのようなものである。 ロコと陰口を叩きながら大笑いしている相手よりも、植村のほうがこれはマンガの一コマであることをよく知っていた。
しかし、植村は自分の胸に宿った願望を実現するために、自分をマンガのなかに置くことに耐えた。 彼が手づくりで、単独の登山や冒険をやろうとするかぎり、多かれ少なかれ彼の行動につきまとってきたことである。 そして青春放浪の時代にそれはもっともあけすけに彼が直面しなければならないことでもあった。
このように見ていくと、この青春放浪時代にこそ、植村直己という冒険家の原型が誕生したのである。 彼の願望とそれを実現するための道筋がこの「海外放浪」の時代にひとつの型をもちはじめている。 ここで植村直己の誕生に立ちあっているような思いが私にはある。
植村はメンドサからボリビアを経てペルーのリマに入った。 そこからさらにオンボロのバスに乗ってイキトスへ。 イキトスはアマゾン河の上流部にある大きな町で、ここに来てアマゾン河6000キロの河下りの可能性を考えるのである。
アマゾン河の河下りは、フランスを発つ前からぼんやりした夢というかたちながら構想はあった。 モルジンヌ出発が目前に迫ったとき、南米でやってみたいこととして、覚え書に書き留めてあった。 そしてアコンカグア単独登頂だけでは満足せず、イキトスまでやってきてその可能性を考えるのである。 例の「これぐらいやらなければ、誰もオレを認めてくれない」という思いが、ここでも植村の背中を押す。
現地在住の日本人数名に相談し、そのアドバイスを受けながら、彼はイカダが最上の手段だと決心するに至った。 そう決めれば、あとは実行あるのみ。 手帳には、イカダが出来あがるまでは克明に悩みや手順がつづられているが、出発してからは記載がパタと途絶える。 その冒険の詳細は、『青春を山に賭けて』の「六十日間アマゾンイカダ下り」の章に描かれている。
出発して62日目、6月20日に河口の町マカパ(ブラジル)に到着。
アコンカグア単独登頂と、アマゾン河6000キロのイカダ下りの冒険と、南米での2大目標は達成された。 だが、私が驚くのはこれで日本にまっすぐ帰国しないことである。
植村直己は1967年12月、3年間暮らしたフランスのモルジンヌを出発し、68年1月7日、船でアルゼンチンのブエノスアイレスに着いた。 南米での二つの行動、最高峰アコンカグアの単独登頂とアマゾン河6000キロのイカダ下りについては、前章でくわしく触れた。
68年の元旦を南米に向う船の上で迎えて、その日の日記に彼は書いている。
=補講・資料=
メスナーだけじゃない!すごい海外の登山家まとめ=シルヴィオ・モンディネッリ
世界で6人目の「8000m峰全14座完全無酸素登頂」を果たしたイタリアの精強なクライマー。
2001年には春にエベレスト、夏にガッシャーブルムⅠ・Ⅱ峰に連続登頂、秋にダウラギリと1年に8000m峰4座に登頂するという人類の限界に近い快挙を成し遂げた。
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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