○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○
探検家になるために必要な資質は、臆病者であることです =植村直己=
= Webナショジオ_“河江肖剰-新たなピラミッド像を追って”より転載・補講 =
☠ 自分が主役になるよりは常にメンバーを影でサポートするような立場でいたい ☠
◇◆ 先住民に学ぶ =4/6= ◇◆
植村は本気でシェルパ族の暮らしぶり、生活態度に感動し、彼らに敬意をいだいているのだ。 ペンバ・テンジンに言及するときは、つねに敬愛の気持がただよっている。また、留守宅の、10歳から5歳までの3人の娘たちの、少女とは思えない働きぶりに感嘆している。
ヒマラヤの高所で暮らす人びとに、いかなる先入観をいだくこともなく、心底から学ぶ。先住民に学ぶことから植村の行動が始まることは、意外にもエベレスト登山のときでもそうだったのだ。 その姿勢は、五大陸最高峰の登頂を果たし、南極と北極に目を向けたときも、持続していた。いや、その姿勢はいっそう強固なものになっていた。
1972年9月4日、植村直己はグリーンランド最北端の村シオラパルクに入った。そこでエスキモーから犬橇の操縦法を学ぶ。また寒気への対策法をはじめ、極地でのさまざまな生活技術を学ぶ。 そういう大きな目的があった。くりかえしいうように、南極大陸を単独で、犬橇を走らせて横断したいという夢が、目的の背後にはあった。
エスキモーの集落に単身で入り、ともに暮らしたこのときの記録が、『極北に駆ける』(1974年刊、現在は文春文庫)である。この一冊には、植村がエスキモーという先住民に何を、どのように学んだかが満載されている。
「学ぶ」といっても、もちろん誰かの講習を受けたわけではない。エスキモーの家で、また後には村内の廃屋に移り住んで、エスキモーとつきあいながら日々を暮らす。それが学ぶということだった。そして学んだ成果を試すために、グリーンランド東海岸を3000キロ、ひとりで犬橇による旅をした後、グリーンランド滞在を切りあげた。
エスキモーと同じものを食べることが、彼らと生活を共にする最初の、必要欠くべからずの第一歩であると、植村はしっかり自覚していた。 しかし、シオラパルク第1日目に、歓迎されているのか試されているのかよくわからないままに、天井からぶら下がっている赤黒い生肉を勧められたとき、いかに困惑したか。それについては第3章の「冒険家の食欲」でくわしく述べたから、ここでは省略する。
ただ注目すべき一つのことに言及しておきたい。植村はわずか1週間でこの生肉食になれるのである。そしてアザラシ、セイウチ、トナカイ、クジラなどの生肉を味わい分け、どの動物のどのあたりがうまいかを知るようになった。先に引用したように、「どこへ行ってもその土地のものがおいしく食べられるので、ありがたい」と植村自身がいう通りである。
アパリアスという渡り鳥の、アザラシの皮下脂肪漬け――キビヤックという、私にとっては聞くだけで薄気味悪いエスキモーの御馳走がいつのまにか大好物になる。また、植村は犬橇の操縦ができるようになった頃は完全に猫舌になった、と書いている。エスキモーは凍った生肉を叩き割り、ナイフでそいで食べるから、みんな猫舌で熱いものは受けつけない。植村もエスキモーと同じようになった、と胸をはっているのである。
まさに天才的な適応力といいたくなる。そういう適応は誰もができるものではないことを思えば、適応力は植村の力の源泉といってもいいだろう。「私は自分の身体ながら、その適応能力に感心してしまった」と感想を書きつけているが、彼にとっては誇らしいことであっただろう。
=補講・資料=
エスキモー : 障害者が存在しない社会(特異な人口構成)
イヌイットは自分たちが暮らす生態系の天然資源に過度の負担を掛けることの回避策として自ら人口構成を管理してきた。彼らの社会では人口構成において障碍者、双子、女性の割合が他の社会に比べて極端に低くなっていた。これは出生時に選択的な間引きが行われていたためである。
エスキモー : 連邦政府によるパターナリスティックな保護・管理政策
元々エスキモーは近代的で規模の大きな醸造の技術を持っていなかったため、彼らには飲酒に耽る習慣がなかった。しかし白人が酒と引き換えに高価な毛皮を安価に交換するという目的のためにエスキモーに醸造した強い酒の味を覚えさせると、白人たちが持ち込んだ酒類を飲み過ぎてトラブルを起こす者やアルコール依存症になる者が大勢出た。
その対策としてカナダでは、イヌイット(エスキモー)の住むいくつかの町ではアルコール類を購入するのにポイント制度を導入している。成人は1ヶ月間につき30ポイント分のアルコール購入券を受け取る。酒を買いたい時は店へ行き現金を払うと共にそのアルコール購入券も一緒に店に渡してアルコール類を購入する。アルコール購入券がなくなるといくら現金があっても店は客にアルコール類を売らない。
この制度の導入により過度の飲酒によりトラブルを起こす者がかなり減ったと言われる。なお、このポイントは、ビール1缶1ポイント、ワイン1本5ポイント、ウィスキー1本10ポイント、などアルコール度数に合わせて増える仕組みとなっている。
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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