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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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研究は戦争を止められない!!/廣瀬陽子(14/nx) _学究達=478

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ⰧⰊⰧ Intermiussion/幕間 =狂(きょう)の出来事=平成5年06月13日<ⰧⰊⰧ ◆ 中二病気味のドイツ南部の王様が、散歩の途中で某ミステリー小説の名場面を実演する(バイエルン王ルートヴィヒ2世の水死。1886年)。   ◆ 暑さでダレたぬこがツチノコと見間違われる。「チー」と鳴き、酒を飲んで、ジャンプし、するめも食った(1973年)。   ◆ 日本の小惑星探査機·はやぶさが帰還し、オーストラリアのウーメラ砂漠の上空で流れ星になった(2010年)。

本日記載附録(ブログ)

ロシアがウクライナに侵攻した背景とその行方を広厚に理解すべく、旧ソ連諸国紛争や「未承認国家」「ハイブリッド戦争」の著作

日本の政治学者=国際政治・比較政治学・コーカサス地域が研究テーマ

=黒海地域の国際関係・政治経済変動などが主な業績=

研究課題“ロシアのハイブリッド戦争とその影響”/‘14年12月以降 継続中

【この企画はWebナショジオ】を基調に編纂(文責 & イラスト・資料編纂=涯 如水)

廣瀬陽子(14/nx)

◇◆ 第5回 NATOとロシアの対立を深めたコソボという「パンドラの箱」 =3/3= ◆◇

 「その後、欧米各国は、ユーゴスラビア連邦が解体した後も、『コソボ』にいろいろ介入して、2008年にはコソボ共和国を国家承認してしまうんです。本来、ユーゴスラビアを含む、冷戦時代の連邦、つまり、ソ連、ユーゴスラビア、チェコ・スロバキアが解体したときには、連邦を構成していた共和国の国境線をそのまま国境と見做す『ウティ・ポッシデティス』を採用することとなっており、ロシアも欧米も応諾したはずだったんです。

 それなのに『コソボ』の独立を承認したということは、その約束を無視したことになります。ロシアにしてみれば、同じ図式を、例えば北コーカサス地方のチェチェン共和国に当てはめられてしまうと、自国の領域が揺らぐので、やはり許しがたいんです。そのため、2008年8月にジョージアで戦争をして、その後『アブハジア』と『南オセチア』を国家承認したのは、コソボ承認への意趣返しだったのだろうと思っています」

 ウティ・ポッシデティスとは、元はと言えば、植民地が主権国家として独立する際に旧植民地の行政区画を国境とする原則を指す。ソ連、ユーゴスラビア、チェコ・スロバキアの連邦解体時にも、この原則を採用し、連邦内の共和国の国境線を、そのまま主権国家としての国境線とすることになった。とすると、セルビア共和国の自治州だったコソボには、その資格はないことになる。一方、ロシアのチェチェン共和国は、名前こそ「共和国」だが、ソ連時代には、連邦構成共和国よりも弱い立場の「自治共和国」の一部だったので、ソ連解体後もロシアの中に留め置かれていた。だから、「コソボを認めるなら、チェチェンも」ということになりかねず、ロシアとしてはとてもデリケートな問題だったのである。

「なお、ロシア・ジョージア戦争には、もう一つのロシアの目的があったと思います。4月にジョージアとウクライナに、NATOの加盟行動計画(MAP)を適用しようという提案をアメリカがしたことです。旧ソ連諸国のNATO加盟を阻止したいロシアは反発し、ドイツ、フランスがロシアの意を汲む形でジョージアとウクライナへのMAP適用問題は同年12月に再び議論されることになったのですが、その前にロシアはジョージアで戦争を行い、NATO加盟の議論の進展を阻止したと考えられます。実際、その戦争を機にその議論は事実上立ち消えになりました」

 また、二つの未承認国家の国家承認について、2001年の同時多発テロの後、国際社会が「反テロ」を掲げたことが、ロシアにとってハードルを低くしたことも廣瀬さんは指摘した。例えば、ロシアにとって国内の分離運動として気にしなければならないチェチェン紛争について、民族の分離独立を要求する勢力との戦いではなく、「テロリストとの戦い」と主張できるようになった。それゆえに、「アブハジア共和国」や「南オセチア共和国」を国家承認することとの矛盾を避けることができたという見立てだ。

 ただ、当時は「意趣返し」の面が強かったと分析されたロシアによる「アブハジア共和国」と「南オセチア共和国」の国家承認だが、今からすると、この時点で、ロシアは未承認国家とその国家承認の考え方を変化させつつあったのかもしれない、とも言える。

 2014年にはクリミア半島が一時的に主権宣言して独立した体で(ロシアも国家承認し)、住民投票を行わせ、その結果を受けてロシアに併合した。2022年2月のウクライナ侵攻直前には、ウクライナ東部の未承認国家「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」を国家承認した上で、形式上、要請を受けて侵攻を始めたことも、その流れの中にある。

 それでは、今後、ロシアは、例えば、ウクライナ侵攻の中で、新たな未承認国家を梃子にしたアクションを起こすことはありうるのだろうか。

「ロシアは2022年、9月上旬にドネツク、ルハンシク(ルガンスク)のみならず、ウクライナの南部2州、すなわちヘルソン州とザポリージャ州でも住民投票を行おうとしています。そうなれば、クリミアのように独立、彼らの意志によるロシアへの併合要求、併合、という流れが生まれる可能性が高いです(ただし、記事を公開した8月末段階で、実施はほぼ不可能という評価が圧倒的である)」と廣瀬さんは、考えている。

次回は“第6回 ウクライナ侵攻の伏線、欧米が関与した旧ソ連の「民主化」と「ハイブリッド戦争」”に続く・・・・・

【参考資料】 :  「自分の長年の研究は何だったのか」/廣瀬陽子(3/3)

Ω・Ω・Ω クライナ侵攻を予測できず悔やんだ。それでも研究を続ける理由とは? Ω・Ω・Ω

相互依存論で平和が維持できるとしていた論者は、相互依存状態が戦争を防がないという現実に衝撃を受けているという。また、核抑止論者は、核は戦争の抑止にならないばかりか、核を持つ好戦国が戦争を起こせば、その核が他国の介入をも抑止してしまうという現実に打ちひしがれているという。このような例は枚挙にいとまがないだろう。それでは研究は戦争を止められないのか...。残念ながら止められないことは、今回の顛末からも明らかだ。

しかし、研究に意味がないのか、と言えば、そうではないと思う。研究はあくまでも起きてしまった事象を分析し、どうしたら戦争を抑止できるのか、より早く解決できるのかなどという問いに迫るものであるが、第二次世界大戦後の世界では、それらの研究がさまざまなアプローチからなされ、また、時代の変化に伴って新しい議論も次々に生まれていた。そして、かつての戦争や紛争を分析することで、その反省を次に活かすこともできていたと思うからだ。たとえば、今、ウクライナが大国ロシアに対して善戦しているのは、海外からのサポートに加え、2014年にクリミアを失い、東部の混乱を防げなかったことの反省を徹底的に分析し、その問題を乗り越えたからに他ならない。

また、これまでの世界の歴史で節目節目に「パラダイム・シフト」が起きてきた。今まさに「パラダイム・シフト」の時代であるともいえる。新たなパラダイムの研究が求められているのかもしれない。

だが、戦争を起こすのは人間だ。全ての人間がそれぞれのバックグラウンドを持ち、それぞれの思考、独自性を持っている。全ての人間の思考、行動を網羅できるような研究が行えるはずもない一方、ウラジーミル・プーチン大統領1人のせいでこのような惨事が起こってしまった現実を受け、今後は1人の人間が歴史を動かすという現実を分析に取り入れてゆく必要が出てくるのかもしれない。承認欲求で歴史は動く、とフランシス・フクヤマが『アイデンティティ』で説いたように、施政者の個性に踏み込んだ分析が必要となりそうだ。

研究は戦争を止められない。しかし、研究が果たせる役割もゼロではないはずだ。私の旧ソ連研究は一旦振り出しに戻ったが、また心新たに旧ソ連研究に取り組みたいと思っている。そして、今回の戦争にショックを受けている方々にも、ぜひそれぞれの分野で研究をしていただきたいし、この新しいパラダイムに挑戦できるのは総合政策的アプローチしかないと確信する。研究が世界平和に貢献できる日がくることを祈るばかりだ。

“ロシアとウクライナが「こじれた」複雑すぎる経緯”に続く・・・・・

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https://youtu.be/a6YBA86mwm8  == 【兄弟か宿敵か】ウクライナとロシアにまつわる歴史をわかりやすく解説  ==

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=上記本文中、変色文字(下線付き)のクリックにてウイキペディア解説表示=

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