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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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めくるめく知のフロンティア・学究達 =153=/ 堀川大樹(05/mn)

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ちょっと間抜けで憎めない、いや、愛すべき容貌をしたクマムシ

低温にも負けず、高圧にも負けず、乾燥にも放射線の照射にも負けず

2700メートルの海底から標高5000メートルくらいの山まで、頑健丈夫な体で生き抜く

華の都パリでそんな“かわいいけど最強”の生物・クマムシを研究する栃本武良

【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】

(文=川端裕人/写真=川端裕人・堀川大樹 & イラスト・史料編纂=涯 如水)

◇◆ クマムシ/堀川大樹 : 第3回 ヨコヅナクマムシ登場 =1/3= ◆◇

 さて、堀川さんは、大学院の博士課程に進む時点で、クマムシを飼育する必要を痛感していた。というのも、従来のクマムシは飼育ができず、実験後「使い捨て」にせざるを得なかったからだ。

「従来ですと、放射線だとか圧力だとか温度だとかクマムシに何かストレスを与えて、その後、1日後、2日後まで生存したのを確認したら、もう捨てちゃうんですね。飼育ができないから、継続して調べられないんです。正確に生物学的な評価をするためには、飼育をしてどれぐらい寿命が縮むかとか、どれぐらい繁殖能力が落ちるかまで見たい。オニクマムシの飼育系の論文を書いた慶応大学の鈴木さんの研究室を訪れ、飼育環境について色々と見せてもらったりしまして、それを使う前提で放射線耐性の生物学的評価をする研究計画を書いたら、通りまして──」

 というわけで、堀川さんは北海道大学大学院に籍を置いたまま、放射線耐性の研究のために関東に引っ越すことにした。茨城県つくば市の農業生物資源研究所に、幼虫の状態で乾眠できるネムリユスリカという昆虫を研究している研究室があったため、研究者としてはそこに居候させてもらい、群馬県高崎市の原子力研究開発機構の施設で放射線耐性の実験をするという変則的な研究生活が始まった。

 飼育系が確立したという論文の著者は前述した慶応大学の鈴木忠准教授のもので、その概略は、一般書『クマムシ?!─小さな怪物』でも確認出来る。多少の苦労はあれど、今後クマムシはこの方法で飼育可能! と読めてしまう。

 しかし、思わぬ落とし穴が──。

「すごい論文で、データもきちんとして、これはできる! と思っていたんです。でも、実際にやり始めたら、とんでもない。全然駄目なんですよ。要するにオニクマムシは非常にデリケートでして。ワムシを餌にして増えるんですけども、大量に与えないと卵を産まないんで」

 ワムシというのは、クマムシと似通ったサイズの微小動物でやはりコケの中などに潜んでいる。オニクマムシは肉食で、このワムシが好物らしい。生き物を飼育するには餌が必要なのは道理で、特に「生き餌」を好む肉食の動物を飼うのは大変だ。たとえば、ヘビの愛好家が、餌としてマウスを大量飼育するのはよくある光景。堀川さんは、オニクマムシを飼う前に、まずワムシを飼わなければならないのだった。

「ものすごく手間がかかるんですよね。培養槽を何十個も置いて、米粒とかを入れておくとそのうちにワムシがわいてくるんですけど、なかなか増えないし、増えても、そこから集めるのも一苦労で、更に悪いことにオニクマムシがワムシを食べてフンをいっぱいすると、シャーレの中の環境が悪くなる。オニクマムシは、身をくねらせて、見るからに苦しそうになるんですよ。結局、培地を数日間取り換えないと死んでしまったり。最強の動物って言われるのに、意外と繊細なんですね。だから、もう毎日のように培地を交換したり、ワムシを育てて集めたりとか、結局、維持するだけで1日16時間、顕微鏡を見ながら作業してたわけです(笑)」

・・・・・・明日に続く・・・・・・

■□参考資料: クマムシに新たな伝説 月面に置き去り実験の行方は? (2/3) □■

恐るべしクマムシの能力

そんなクマムシが注目されるのは、ある能力があるからです。
クマムシには陸上で暮らしている種類もいますが、呼吸するための気管などはなく、体表についた水から酸素をとりこんでいます。逆に言えば、水分がない乾燥した環境ではそれができません。
そこで、コケの中など乾燥しやすい場所で暮らすクマムシは、自身を乾燥から防ぐのではなく、乾燥した状態で耐える能力を持っているのです。
これを「乾眠」といい、代謝、つまり体の中のすべての化学反応が起こらない状態になります。
「普通の生物だったらそれを『死』というんですけど」と鈴木先生。クマムシの場合、再び水にめぐりあえれば蘇生することができるのです。ちなみに、クマムシは乾燥すると、「樽」のような形になります。

驚くべきは、この乾燥した状態のクマムシの耐性です。記事の冒頭のように、低温から高温、高線量の放射線や紫外線、地球上の自然にはありえない高圧にも耐え、水をかけると蘇生したと報告されています。
過酷な環境下でも生命を維持できるそんな特性から、今回の月面探査機以前にも、クマムシが宇宙に飛ばされた歴史があります。

2007年には、欧州宇宙機関などが乾眠しているクマムシを乗せた宇宙実験衛星を打ち上げ、宇宙空間に約10日間さらすという実験が行われました。地球に帰還した後、数百匹のうちの3匹が蘇生したそうです。
「この『数匹』をすごいと思うか、こんなものかと思うのかは人それぞれだと思いますが、太陽の強い紫外線を直接浴びて、全滅しなかったというのは大きいですね。普通の生物であれば生きられませんから」

月に残されたクマムシは…

では、今回月に残されたクマムシはどうなるのでしょうか。
先ほど紹介したように、乾燥状態のクマムシの耐性は非常に高いため、今も月で生き延びている可能性はあります。ただし、水がない限り、蘇生はできません。月に液体の水は存在しないとされているため、蘇生の可能性は低いと言えます。
鈴木先生は「もしも蘇生したとしても、目覚めた状態のクマムシには乾眠状態ほどの耐性はないため、よほど温和な場所でなければ生存は難しい」と分析します。

今回の月面探査計画で鈴木先生が懸念するのは、宇宙環境の汚染です。クマムシが月面に残されたことで、もしも今後生物の痕跡が見つかったとき、本当に地球外由来のものなのかを判断しづらくなるといいます。
「言ってしまえば、人類が初めて月に立ったアポロ計画などでも、しっかりと無菌操作がされていたかという疑問もあります。宇宙開発をしていく人たちが、汚染についてどれくらい考えていくかが重要」と警鐘を鳴らします。

◆ クマムシ的生き方のすゝめ ◆

動画のURL: https://youtu.be/J6Qxr1gUw7k 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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