カメルーン南東部のピグミー系狩猟採集民―研究しようと足を踏み入れた
目を奪われ、魅了されたのは、異質な独自の文化を持つ子どもたちの「遊び」だった
大人たちとは異質で豊かで深遠なる楽しい世界に、我知らず深入りしてしまった
愛知県立大学 アフリカ文化人類学 亀井伸孝
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/研究室にいって来た”を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=藤谷清美、(アフリカ=亀井伸孝) & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 亀井伸孝 : 第4回 夢は「世界遊びの大百科事典」 =2/2= ◆◇
「・・・・・・・そういうことは、実際に起こっている。でも、それだけではないんですよ。子どもが自分達で好んで魚獲りに行って、それを晩御飯のおかずに持ち帰ったからといって、そのことを「児童労働だ」として責め立てて、やめさせて学校に通わせるとしたら、それはちょっと違うんじゃないかと。一緒に暮らしていると感じるんです」
これに対して、亀井さんは述べる。 「子どもの目線になってバカの子どもたちの間に入り込んでみたら、大人に教えを請うだけの無力な存在には、もはや見えなくなりました。もちろん、児童労働という言葉で語られるような、社会問題として子どもが無理に働かされている、学校に行く権利を奪われている、という見方を否定する気はないんです。・・・・・・」
こんなことを述べると、反発をくらうこともあるのではないかと心配になるが、実はそうでもないらしい。
「都市部では、やはり、深刻な児童労働の問題があるでしょう。でも、子どもが働くのをやめたら、生活の糧を失ってしまうようなケースもある。だから、アフリカの子どもが働くのを一律に悪だと決めつけるのは一面的なんじゃないかというふうに、NGOの人と話したこともあります。場所場所に応じて、あるところでは、子どもの労働を一律やめさせて学校に入れるのでなくて、働きながらいかに学校に通うかみたいな工夫が求められているそうです。もちろん、バカの子どもが学校に行く効果だってあるんです。狩猟採集をしながら、時々、学校にも行きたい子どもが、フランス語とか算数を勉強しに行くみたいに、選択肢が増えればいいと思っているんです」
面白いから遊ぶ。面白いから学校に行く。
そうであれば、本当にいいと思う。
最後の話題としてふさわしいのは、「弟子入り」して子ども目線にこだわってきた亀井さんが、今後の研究について持っている壮大な夢だろう。
まずは、「アフリカ子ども学」。
「文化人類学者達は、特定の民族の地域に入って研究する分、その民族、その集団だけに目を奪われがちです。でも、多分、子どもがやってる行動っていうのは、似てるところが多いと思うんですね。民族とか文化、環境を問わず。子ども学とあえて言うからには、子どもが何を考え、どんなことを夢見ているのかを見ていきたいんです。町に出た子ども、農村で暮らしている子ども、ラクダと共に砂漠で遊牧している子ども、アフリカにはいろんな文化や環境があります。そんな中でも、子どもたちは、きっと将来何になりたいとか色々考えてるはずでしょう。それを子どもたちから学びたい。教育とか、労働とか、環境とか、大人目線で語られていたものを、ひとつずつ子どもの目線で考え直していくって、とってもワクワクします」
そして、視線はさらに「世界」に向いている。
「世界には、子どもの遊びについての文化人類学の資料はたくさんあって、集めているんですよ。すごく勉強になります。でも、子どもが遊びを通して大人になっていくとか、心理的な葛藤を和らげる効果があるとか、遊びへの解釈って、何かの役に立っているだろうっていうのが前提なんですね。でも、それは、大人側に都合のいい解釈ですね。面白いから遊ぶという子どもの視点を大事にして、世界の子どもの遊びの百科事典をつくれたらいいですね」
「子ども学」にせよ「百科事典」にせよ、実に壮大な夢ではないか。そんな大風呂敷は、良い意味で、実に「子どもっぽい」ではないか。
ぼくも正直ワクワクする。
次回は“新企画“双子もどき”ジェミノイドに会ってみた”に続く・・・・
■□参考資料: “ピグミー”の身体的特徴は遺伝子由来(2/2) □■
身長的特徴の要因を生活環境に求める研究者もいる一方、バレイロ氏のように、遺伝子変異が低身長の形質をもたらす要因と考える研究者もいた。根拠の1つが、熱帯の多湿な環境では、小柄なほど体温の異常上昇を防ぎやすいという事実だ。
またバレイロ氏が発表した従来の研究論文で明らかにしているように、熱帯雨林を移動する際はさまざまな障害物を避けなければならないが、それには多大なエネルギーを要する。小柄であれば移動に要するカロリーの消費量も少なくて済むのである。
◆顕著な遺伝子変異
バレイロ氏らの研究グループは、バトワとバカの両集団と、平均的な身長を持つ近隣の3つの農耕部族から遺伝子データを収集し、さまざまなゲノム領域の解析を行った。そして両集団のヒト成長ホルモンの受容体に関わるゲノム領域に、顕著な遺伝子変異が認められる事実を突き止めた。
さらに詳しく解析を進めると、両集団の遺伝子変異は完全な偶然の産物であり、始祖たちはたまたま身長が低くなったにすぎないと判明。ただ、その遺伝子変異が、熱帯雨林の環境で暮らす彼らにとって有利に働いたことだけは確かだろう。バレイロ氏によると、同一の形質(低身長)が異なる集団間で独立に発現したという点で、これは収斂進化の一例になっているという。
どちらの遺伝子変異も、発現した時期についてバレイロ氏らの研究グループは比較的最近と見ている。しかし、あくまで独立して発現したという事実は、低身長の要因がかなり強力で、しかも短期間の間に影響をおよぼした可能性が高いことを示している。
小柄な民族集団を産んだ要因に迫った今回の研究は、人類の持つ豊かな多様性がどのように培われてきたのかを理解するうえで大きな手掛かりとなるだろう。
今回の研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌オンライン版に8月18日付けで掲載されている。 文=Carrie Arnold
◆ Twa (Batwa) Dancing and Singing ◆
・・・https://youtu.be/9sVHP-wDQts?list=RDzFjbdw9j1io・・・
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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