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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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めくるめく知のフロンティア・学究達 =082= / 渡辺佑基(49/mn)

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地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン

つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで

インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う

驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・渡辺佑基

【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/バイオロギングで海洋動物の真の姿に迫る”を基調に編纂】

(文/写真=渡辺佑基= & イラスト・史料編纂=涯 如水)

◇◆ ペンギン参勤交代 ◆◇

2016年末から2017年3月まで、南極でアデリーペンギンの調査を行う渡辺佑基さん。南極到着直前に、「ただ事じゃない」と目を見張った光景は――。

「ペンギンがいる」と廊下のざわつく声を耳が受信し、跳ね起きた。私はここ1週間ばかり、それだけを心待ちにしていたので、他の重要な情報はあっさり聞き落としても「ペンギン」の一単語だけは逃さない。ベッドから抜け出して船室の電気を点けると、自分史上最速のスピードで防寒用の上着を身に付ける。カメラをひっつかんでサングラスをかけ、廊下を急ぐ。船特有の金属の重い扉をギイと開け、甲板に出る。

 外に広がっていたのは、一面の氷の世界だ。南極観測船「しらせ」は今、氷海の真っただ中で一時的に停船している。氷と氷がぶつかり合い、押し固められて、まるでゴロゴロとした岩石砂漠を真っ白に漂白したみたいな、世界でここにしかない独特の景観を形成している。早朝にもかかわらず太陽は既に天高く輝き、氷の塊一つ一つに複雑な陰影を投げかけている。

 船尾に人が集まっていることに気付き、私も駆けつけた。見ると船の真後ろの遠い一点に、藍色の水面が露出しており、そのすぐ手前にアデリーペンギンが数十羽、まるでボウリングのピンみたいに突っ立っている。背後の水面からは、新たなペンギンが1羽、また1羽と飛び出してきて群れに加わり、そのため群れのサイズが目に見えて大型化している。これはただ事じゃない、と私は目を見張った。

 そして総勢100羽以上ものペンギンの大集団が形成され、それがなんと、わらわらとこちらに向かって歩き出した。振り子みたいに体を左右に揺らせて前進し、時折岩石のような氷の塊をひょいとジャンプで乗り越える。それぞれのペンギンは先行するペンギンの背後につく傾向があり、そのためばらばらだったペンギンの大集団は次第に列をなし、やがて参勤交代の殿様行列のような整然とした長い行列が完成した。それは気まぐれな自然の生み出す奇跡の光景だった。先頭を行く露払いのペンギンは、後ろを振り返ることもなく無表情で歩を進める。

 船上から夢中でシャッターを切る私たちに好奇心を抱いたのか、あるいは「しらせ」の鮮やかなオレンジ色の船体に惹かれたのか、ペンギンの大行列はほとんど手の届きそうな船の真横までやってきた。しかしちょうどそのタイミングで、試験飛行をしていた船搭載のヘリコプターが、バリバリと空を引き裂くような音をたてて遠くから近づいてきて、するとペンギンたちは蜘蛛の子を散らすようにちりぢりになり、やがて見えなくなった。

 その後には、太陽光をまだらに反射している荘厳な氷海だけが残った。あっという間の出来事だった。私は夢でも見ているような気がして、しばらくその場に突っ立っていた。何度シャッターを切ったかわからないカメラを再生すると、整然としたペンギンの参勤交代行列が確かに写っていて、それだけが唯一、いま目の前で起こったことの証明だった。

次回“海氷の消えた南極とアデリーペンギン”に続く・・・・・

■□参考資料: 南極のペンギン、360万羽も多かった □■

従来よりも精緻なデータで推定個体数が2倍以上に

 東南極(南極大陸のうち東半球にある部分)には、従来の推定個体数の2倍以上のアデリーペンギンが生息しているらしいことが、オーストラリア、アデレード大学の研究者の調査で判明した。新たなデータによると、その個体数は約590万羽で、従来の推定より約360万羽も多い。

 従来の手法では、繁殖しているペアを数えることでペンギンの個体数を予想していた。つまり、繁殖中でないペンギンは数えられていなかったことになる。「繁殖中でないペンギンは海に餌をとりに行っていて陸上のコロニーにはいないので、数えるのが難しいのです」と、オーストラリア南極局の海鳥生態学者ルイーズ・エマーソン氏は説明する。

 研究チームは今回、上空と地上からの調査および自動撮影した画像の情報を組み合わせて、数回の繁殖シーズンにわたってペンギンの個体数を調べ、推定個体数を更新した。

海岸は大混雑

 個体数が予想外に多かったことに喜んでばかりはいられない。アデリーペンギンのコロニーは南極大陸の全域に広がっていて、南極の夏に相当する10月から2月までは、ペンギンたちはほとんど陸上にいて巣作りと繁殖にいそしんでいる。その間、おとなのペンギンは、海に魚やオキアミを食べに行くのに50キロ近く歩かなければならないこともある。

 ペンギンの個体数がこれだけ多く、活動範囲も広いことから、ペンギンと人間の相互作用はこれまで考えられていたより頻繁に起きている可能性がある。論文の筆頭著者で海鳥生態学者のコリン・サウスウェル氏によると、アデリーペンギンは氷がない岩場に巣を作るのを好むが、研究者らもキャンプを設営する際にはまさに同じような場所を選ぶからだ。

 サウスウェル氏は、研究ステーションから20キロ圏内で100万羽以上のペンギンが繁殖していると推定する。「研究ステーションの近くで重要な繁殖集団を特定すれば、将来、重点的に保護すべき地域が見えてきます」とサウスウェル氏。

激増から激減へ

 個体数がこれだけ多ければなんの心配もないように思われるかもしれないが、アデリーペンギンは重大な問題に直面している。南極大陸は気候変動の影響を受けやすいからだ。氷が移動し氷河が融解すればペンギンの生息地は減少するし、海水が温暖化すれば採餌は困難になるおそれがある。

 さらに、南極大陸の温暖化により、繁殖期に雨が降ったり氷が解ける時期が早まったりすれば、生まれたヒナがまだ十分に成長していない時期にコロニーに水たまりができてしまうかもしれない。水たまりができると、水をはじく羽毛をもたないヒナの体が濡れて、低体温症を引き起こすおそれがある。

 米デラウェア大学の研究者が昨年発表した研究によると、現在あるアデリーペンギンの生息地の半分以上が、今世紀末までにペンギンのコロニーに適さなくなるかもしれないという。

 2015年のインタビューでサウスウェル氏は、海氷が解けると東南極のペンギンがオキアミや魚を食べやすくなり、個体数が激増する可能性があると語っていた。一方で、その傾向が長期にわたると、メリットよりもデメリットが勝るとも警告していた。

「私たち人間にも言えることですが、どんなに良いものでもありすぎると困るのです」とサウスウェル氏。

 ちなみに、南極大陸の別の地域のアデリーペンギンは厳しい状況にある。南極西側にある米国のパーマー基地周辺では、この30年にペンギンの個体数が80%も減少している。

文=Sarah Gibbens/訳=三枝小夜子

◆ アデリーペンギンがやってきた ◆

・・https://youtu.be/-iXlc2saa5g・・・

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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