地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン
つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで
インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う
驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・渡辺佑基
【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/バイオロギングで海洋動物の真の姿に迫る”を基調に編纂】
(文/写真=渡辺佑基= & イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ 発見! 渡り鳥の法則 =1/2= ◆◇
約200種の渡り鳥の移動パターンを比較し、渡りの距離がどのような要因によって決まるのかを明らかにした私の最新の論文が「Ecology Letters」誌に掲載された。「Ecology Letters」誌といえば、数ある生態学の科学雑誌の中でも断トツのインパクトを持つトップジャーナルだ。生態学者の集まる学会では、初対面の相手に「つまらない論文ですけど」と謙遜を装って、ペラリと「Ecology Letters」誌の論文の別刷りを渡すのが最上の自己紹介とされている。それはともかく、今回の論文は私にとって、何度も泥沼にはまり込みそうになった労作なので、その内容を今このような形で紹介できることを、心からうれしく思う。
さて、今回のテーマは渡り鳥である。世界中のおびただしい種類の鳥が、毎年、季節に合わせて地球上を移動している。夏の間、高緯度地域で子育てをし、冬の間は暖かい低緯度地域で過ごすというのが一般的なパターンだ。日本で夏に子育てをするツバメは、冬は緯度の低い東南アジアで過ごすし、ぎゃくに日本に冬に飛来するハクチョウは、夏は緯度の高いシベリアなどで子育てをする。
しかし、渡りの距離は鳥によって驚くほどまちまちだ。キョクアジサシのように南極と北極とを往復する巨大スケールの渡り鳥もいれば、ある種のツルのように中国の南部だけで渡りのサイクルを完結させる鳥もいる。
なぜ、同じ動機に駆り立てられた同じ渡り鳥なのに、渡りの距離はこれほどまちまちなのだろう。この素朴な疑問から、本研究の長いプロセスは始まった。
近年、鳥の体に小型の記録計や発信器を取り付けるバイオロギングの技術が急速に発展し、普及している。そのおかげで、ムシクイのような手乗りサイズの小鳥から、体重10キロを超えるオオハクチョウに至るまで、多種多様な渡り鳥に機器が取り付けられ、1年間の移動パターンが計測されている。
これは宝の山だ、と私はふと気がついた。多くの研究者は、自分の注目する特定の鳥の渡りを計測し、報告することに力を割いている。そうではなく、多種多様な渡り鳥の追跡データを1カ所に集め、同じ土俵にのせ、ざっくりと比較すれば、共通するパターンや背景にあるメカニズムを探ることができるのではないか。なぜ渡りの距離が鳥によってまちまちなのかという素朴な疑問にも、答えを見出すことができるのではないか。
そう思った私は、暇を見つけて軽い気持ちで始めてみた。鳥の渡りを計測した論文をインターネットで検索し、印刷して目を通す。夏期の子育ての場所と、越冬期間中に最も遠くまで行った場所を確認する。Google Earthを使い、それら2点間の直線距離を計測すれば、それがその種にとっての渡りの距離だ。うん、いい感じ。この作業を繰り返し、種数を増やしていけばいい。
ただ問題は、全部で何種くらいのデータが文献として蓄積されているのか、まるで予想がつかなかったことだ。せいぜい50種くらいの気もしたし、いや100種はあるだろうという気もした。でもとにかくやってみるしかない。検索して論文に目を通し、位置をチェックして距離を測定する――そのような単純作業をコツコツと続けた。慣れてくると目がスキャナーのようになり、論文から必要な情報をすばやく探し出せるようになってきた。
3週間ほどで100種の大台を突破したが、それでもまだ、条件を変えて検索するたびに新しい論文が見つかった。予想以上の量だ。終わりの見えない膨大な作業を始めてしまったことにいまさら気付き、焦りが出てくる。でももちろんやめるわけにはいかない。こうなったら意地だ。余計なことは考えず、目をスキャナーにして、新しい情報を探し続けた。
・・・・・・明日に続く・・・・
■□参考資料: 渡り鳥と足環 (1/2) □■
- Bird Banding - 環境省/山階鳥類研究所
日本で繁殖するツバメはどこへ渡っていくの?
大昔から、鳥の渡りは人間にとって大きな謎でした。夏にたくさんいた鳥たちが冬にいなくなってしまうのは、いったいなぜなのだろう?かの有名な古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、ツバメは木のうろや泥の中で冬眠すると考えていました。近年になって"渡り"という概念が一般的になっても、夏に我が家の軒下に巣をつくるツバメは、毎年来るあのツバメだろうか?どこをどう通って旅をしてきたのだろう?そんな疑問は消えません。このようなことを調べるために、鳥に個体識別用の足環をつける研究方法が、鳥類標識調査です。
日本では、ツバメに足環をつけて放した結果、秋から春にかけて、日本から2000km以上も離れたフィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシアなどから、足環のついたツバメを見つけたという情報が寄せられました。これは、現地の人たちが、小さな足環に刻印された"TOKYO JAPAN" という文字を手がかりに、手紙を書いて知らせてくれたのです。足環にはまた、個体を識別するための番号が入っていて、この番号からその足環がいつ、どこで、だれがつけたものかがわかったのです。
一番長い距離を渡る鳥は?
渡り鳥は、いったいどれくらいの距離を渡るのでしょうか?もちろん種類によって違い、長い距離を渡る鳥と短い距離を渡る鳥がいますが、長距離を渡るものの中には、地球を約半周して、自分の生まれ故郷と越冬地を往復する鳥がいることがわかっています。これも標識調査をおこなって初めてわかった事実なのです。
日本では、南極で足環をつけられたオオトウゾクカモメという海鳥が、赤道を越え、はるか12,800kmもの長距離を移動して、北海道の近海で発見された記録があります。この鳥が今のところ、日本に渡ってくる鳥の中で最長距離移動の記録保持者です。
一番長生きの鳥はどんな鳥?
京都府の日本海側にあるオオミズナギドリ繁殖地の冠島で1975年5月16日に成鳥で標識放鳥されたオオミズナギドリが、2012年1月26日に約4000km離れたボルネオ島で衰弱して保護されました。
実に、36年8ヶ月も生きていたのです。オオミズナギドリは4歳以上で繁殖のために生まれた島に帰って来ることが知られています。ですから、この鳥は40歳以上ということになります。 ・・・・・・明日に続く
◆ Demoiselle Crane or Mongolian Common Crane ◆
・・・https://youtu.be/_skh3a-h_uA・・・
=この動画同様、ムスタングに向かう一人旅程で、ヒマラヤ山脈を横切る鶴を眺めた感動は忘れ難し=
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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