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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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めくるめく知のフロンティア・学究達 =072= / 渡辺佑基(39/mn)  

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地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン

つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで

インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う

驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・渡辺佑基

【この企画はWebナショジオ_“日本のエキスプローラ”/バイオロギングで海洋動物の真の姿に迫る”を基調に編纂】

(文/写真=渡辺佑基= & イラスト・史料編纂=涯 如水)

◇◆ ニシオンデンザメと奇跡の機器回収 =1/3= ◆◇

 サメの調査のために調査船「Nuliajuk」に乗ってカナダの北極圏に来ている。前回は、サメを捕獲するための延縄を海底に仕掛け、さあいよいよ巻き上げだというところまで述べた。今回はその続きである。

 右舷甲板に据えられたローラー機械は、デイビッドの操作でぐるぐると回転し、一定のスピードで延縄を巻き上げていた。巻き上げられてくるロープを私とアマンダが手で繰って、順々に後方に送っていく。そして船尾に立つナイジェルが大きなプラスチックの袋に、ロープをらせん状に収納していく。全身運動の忙しい作業である。

 海底は700mもの深さなので、海底に仕掛けられた一連の針が姿を現すには、20分以上の時間がかかる。私たちは黙々と作業をしながら、獲物が上がってくるのを今か今かと待った。

 やおらローラー機械を操作していたデイビッドが、「サメだ!」と叫んで機械を停止させた。皆、躍り上がって船べりに走り、ロープの先を覗き込む。するとロープが無茶苦茶に絡まり合っていて、その下にゆらゆらと揺れる大きな影が見えた。ニシオンデンザメだ。

 とたんに甲板に緊張がはしり、慌ただしく調査が始まる。ナイジェルと数人の船員が調査船から小型ボートを発進させ、ローラー機械の真下に回り込む。そして複雑に絡み合ったロープを解き、生きたサメのかかった一本のロープを引きはがした。

そのままナイジェルはサメを引っ張り、小型ボートの横にはわせるようにしてサメを固定した。尾びれの根元に別のロープを回せば、全長3mを超える大きなサメも、身動きはとれなくなる。

 面白いことに、ニシオンデンザメは引っ張られ、ロープで固定されても、ちっとも抵抗はしない。これは他のサメにはない際立った特徴であり、明らかに北極海の低水温の影響が見て取れる。水温0℃の海水中で、ニシオンデンザメのあらゆる生体機能はゆっくりとしか活動しないのである。

 さて、サメが固定されれば私の出番だ。私は記録計やビデオカメラの組み込まれたパッケージを持って、小型ボートに飛び移った。そしてサメの頭の上の皮膚に浅く穴を開け、ケーブルを通して、記録計のパッケージを取り付けた。海水は手がしびれるほど冷たく(なんせ水温0℃だ)、素手で長時間作業をしているナイジェルの苦労を知った。サメの体長を測定し、血液や組織等の採取をした後、ロープを解いてサメを放流した。

 自由になったニシオンデンザメは、尾びれをゆっくりと振って泳ぎ始め、静かに沈降していき、やがて見えなくなった。記録計は2日後に切り離され、海面に浮かび上がってくる予定だ。

 記録計の切り離される当日は、朝からドキドキである。なにしろ首尾よく回収することができれば、世界の誰も持っていない貴重なデータが手に入る。でも逆に、何か予期せぬトラブルが発生し、回収できない事態に陥れば、ざっと百万円ほどの機器と貴重なデータが海の藻屑と消えることになる。

・・・・・・明日に続く・・・・

■□参考資料:欧州と東南アジアを結ぶ最短航路 □■

北西航路(Northwest Passage)は、北アメリカ大陸の北方を通って大西洋と太平洋を結ぶ航路である。ユーラシア大陸の北を通って大西洋と太平洋を結ぶ「北極海航路」と対をなす。尚、北極海航路(北東航路)は中華人民共和国が強引に推し進める“新シルクロード”の北回り海路として布石を打っている。   

北西航路とは、北アメリカ大陸の北側にあるカナダ北極諸島の間を抜けて太平洋と大西洋を結ぶ航路のことであり、ヨーロッパから北西へ延びる航路であることからその名がついた。この航路は、ヨーロッパから見て北東へ延び、ユーラシア大陸の北側(ロシア沖・ベーリング海狭)を通って太平洋と大西洋を結ぶ北極海航路(北方航路、Northern Sea Route、20世紀初頭には北東航路 Northeast Passage として知られていた)と一対をなす。

具体的には、北太平洋側のベーリング海峡から北西航路を通る場合、 北太平洋→ベーリング海峡チュクチ海ボフォート海→北極諸島を貫く海峡群→バフィン湾デービス海峡→北大西洋

の順に通過する。北極諸島を貫く海峡群を通るにはマクルアー海峡ディーズ海峡プリンスオブウェールズ海峡など5つから7つの異なる航路があるが、水深が浅く大型船の航海に向かないところもある。なお、北極諸島の島々やカナダ本土を隔てる海峡を北西航路の一部と呼ぶこともある。

大航海時代の16世紀以来、ヨーロッパとアジアを結ぶ大圏航路であり最短航路になりうると考えられた北西航路の発見に多くの探検家が挑んできた。北極や北アメリカ沿岸の探検に向かった航海者たちの動機の多くは北西航路の発見であり、彼らの探検の過程でカナダ北部やアラスカなどの姿がわかるようになった。

しかし北極海は夏でも融けない流氷・海水や氷山があり、船が氷に閉じ込められ押しつぶされることもあるなどその環境は過酷で非常に多くの探検家が犠牲となり、20世紀まで横断航海に成功した者はいなかった。最初に北西航路を船で横断した人物は、南極点到達でも有名なロアール・アムンセンである。彼は1903年から1906年にかけて小さな船で大西洋から太平洋へと抜ける航海を成功させた。

近年、全地球的な気候変動により北極圏が温暖化し、北極海の氷の範囲が縮小し氷結する期間も減り、砕氷船でなくても北西航路が航行可能になってきた。2007年8月21日には流氷の減少により、砕氷船なしで北西航路が全て通れる状態になった。ノルウェー極地研究所によれば、これは1972年の記録開始以来初めての事態であった。

今後北西航路の開発が進み従来のスエズ・パナマ経由航路より距離が短い定期航路が作られれば、時間や燃料費を節約できるため世界の海運や物流が大きく変わるとみられる。また北極海の沿岸や海底に眠る資源開発も容易になると期待される。しかしこの海域をめぐる領有権問題が事態を難しくしている。カナダ政府は北西航路の一部をカナダの領海に当たる「内水」としているが、多くの国はこれらの海峡を自由な国際航行の可能な国際海峡であるとして対立している。

・・・・・・“北西航路開拓の歴史概要”に続く

◆ 世界一ノロい&長寿なニシオンデンザメ! ◆

・・・https://youtu.be/57By_XyCmPg・・・

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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