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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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めくるめく知のフロンティア・学究達 =042= / 渡辺佑基(12/15)

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地球に生息するアザラシから、チョウザメ、ウナギ、ワニ、ペンギン

つまり 北極圏―中国深部―マレーシア―フロリダ―南極まで

インディ・ジョーンズばりに世界の極地を飛び回り、兵器“データロガー”で野生動物を狙う

驚くべきデータを次々に発表する / 大型捕食動物の生理生態学者・安藤寿康

【この企画はWebナショジオ_【研究室】「研究室」に行ってみた を基調に編纂】

(文=川端裕人/写真=藤谷清美 & イラスト・史料編纂=涯 如水)

◇◆ 渡辺佑基・マグロは時速80キロで泳がない!? =1/2= ◆◇

バイオロギングの研究は、未踏の大地を行く博物学者の仕事に似ていると書いた。

 詳しく調べたい動物を外から観察するのではなく、観測機器をくっつけて、それそこ対象動物と一体化してデータを取るわけだから、ぼくたちの目や耳やその他の感覚が拡大したようなものだ。新しい観測手段を得、新しい感覚器官を得たぼくたちは、やはり、最初は博物学的な記述から、ことを始めることになる。

 とはいえ、デジタル式のデータロガーが開発されてから、かれこれ20年。渡辺さんは、当時の一線の研究者から考えるとそろそろ孫弟子の世代だ。データや研究の蓄積は相当なものになっていて、渡辺さんは、今後、その蓄積を活かした横断的な研究に興味があるという。

 2011年に出たばかりの論文では、海鳥、海洋哺乳類、は虫類(ウミガメ)の3つのグループから39種の遊泳速度のデータを準備し、比較した。

 その結果、同じ分類群なら、体が大きいほどわずかながら遊泳速度が速くなることが分かった。

 また、分類群ごとの比較では、海鳥、海洋哺乳類、そして、は虫類(ウミガメ)の順となった。これは、それぞれの分類群の基礎代謝量と相関した。

 蓄積された研究論文を精査して得たデータから、非常にきれいな結果を出しており、権威ある科学雑誌『ネイチャー』でも紹介されたほどだ。

ちなみに、この件で、渡辺さんは、恩師の一人である佐藤克文さん(東京大学大気海洋研・国際沿岸大気海洋研究センター准教授※)の説を否定したことになる。

恩師の一人である佐藤さんには、「ペンギンもクジラも秒速2メートルで泳ぐ──ハイテク海洋動物学への招待」(光文社新書)という大変たのしい著書があり、その中で、水中の動物の推進スピードについての自説を紹介している。彼によれば、ウミスズメのように小さな鳥から、クジラにいたるまで、肺呼吸で息をこらえて水中で推進する動物のスピードは、秒速1メートルから2メートルがもっともエネルギー効率がよく、実際にそれくらいになっているという。

小さな動物はフリッパーや翼をあわただしく動かし、大きな動物はゆっくり動かす。そのストローク周波数と体重のあいだにもきれいな相関があり、結果、大きくても小さくても、似たような速度になる、とのこと。

 しかし、渡辺さんが、系統関係を反映させつつ統計処理を行ったところ、さきに説明したようなきれいな「大きさと速度」「基礎代謝と速度」の関係があぶり出されたというわけだ。

 自説を否定された恩師は、機嫌を損ねたかって?

 決して、そんなことはない。

 なにしろ、渡辺さんのこの論文の副著者は佐藤さん自身であり、結局は、佐藤さんの数年前の研究を発展させたものと見るのが正しい。それにしても、わずか数年で、どんどん議論が精緻になって、細かなことが分かるというのは、研究者にとっても楽しいことだろうなあと、ぼくは想像する。

 渡辺さんは、今後興味を持っている研究として、「魚の遊泳速度」をあげる。

 ちなみに、先ほどの遊泳速度の比較に魚類が入ってこなかったのは、海鳥、海洋哺乳類、ウミガメのように、肺呼吸で息をこらえて潜る動物と、単純に比較しにくいからだ。

次回に続く・・・・・

◇ 皇帝ペンギンが昭和基地にやってきた(前編) ◇

・・・https://youtu.be/uxe5WgCwXbo・・・

動画再生不能の時は上記URL(⇑)をクリックしてください

//////参考資料/////// 

■□ 渡辺佑基「上陸、生ガキ、そして次の冒険のはじまり」(1/2) ■

朝起きると「しらせ」はフリーマントルの数キロ沖に浮いていた。入港は翌日の朝10時と決まっているので、それまでの時間調整をするのである。甲板から遠目に見える海岸線には、ビルやクレーンなどの巨大な人工物がみっしりと連なっている。見慣れた南極の景色とのあまりの違いに、ポカンとあっけにとられるばかりである。よくぞ人類はこんなものを作り上げたなと、信じられない気持ちになる。

 翌朝、手ぐすね引いて待っていた入港の時間である。ゆっくりと陸に向かって波間をすべる「しらせ」の甲板に立ち、もう冷たくも何ともない爽やかな風に吹かれていると、ずっと長いこと見ていなかった緑が見える! 建物が見える! たくさんの人たちが見える! どうしようもなく心が浮き立ってくる。脇を通り過ぎるレジャーボートのオーストラリア人が、陽気に手を振っている。

 船内での入国審査を済ませるや否や、待ってましたとばかりに友人たちと街に飛び出した。脱兎のごとくフィッシュマーケットに直行である。この数カ月間、ぷりぷりの新鮮な魚介類をどれだけ夢見てきたことか。しかし危ないのが道路の横断。びゅんびゅん飛ばす車を見るのも4カ月ぶりなので、まごついてしまい、渡るタイミングがつかめないのである。ほとんど現代にタイムスリップしてきた原始人といってよい。

 そうしてついにたどり着いたフィッシュマーケット。はやる気持ちを抑え、新鮮な生ガキを大皿いっぱい買い込む。そういえばお金を使うのも4カ月ぶりで、貨幣価値などよくわからないけれど、まあいいか。さんさんと照る太陽の下、皿全体にレモンを絞り、ぷりぷりの身ののったカキの殻をひとつ手に取って、ちゅるりと吸い込むように一口で平らげる。さらに間髪おかずにビールをうぐうぐと飲み下す。はあ~!! この4カ月間、冷凍品ばかりを食べ続けた口なんて、とろけてしまうほどうまかった。

 このようにして長い南極観測の旅は終わり、日本での日常生活が戻ってきた。といっても、私のペンギン生態調査がこれで終わったわけではない。よく、「家に帰るまでが遠足ですよ」といわれるが、それと同じように、フィールドで得られたデータを解析し、論文にまとめて発表するまでが調査である。アデリーペンギンたちが、どのように海氷を利用し、あるいは海氷に妨げられながら、餌をとり、ヒナを育て、命を次世代につないでいったか。これから起こりうる、もしくはいま現に起こっているのかもしれない大きな環境変動に、ペンギンたちがどれほど柔軟に対応できるのか。データの海に潜り込んでじっくり考えようと思う。外に出る冒険は終わったが、内に入る冒険はいまから始まる。すべての冒険が無事におわり、研究成果を世に送り出すことができたのならば、またどこかで紹介したいと思う。そうしてまたいつか、次の謎を求めて、あのユーモアあふれるペンギンたちに会いに行けたらいい。

次回に続く・・・・・

◆ 情熱大陸_1/3_【渡辺佑基▽生物学界のインディ・ジョーンズが持つ世界】 ◆

・・・https://youtu.be/0cXEPVzOY5k?list=PLw3QxSAmxbO08nPTUdZcf5cx_mRmcw6l2・・・

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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