DNAを分析すると 生物の進化の歴史を辿れる 人間でも同じこと
人間の細胞にある「ミトコンドリアDNA」というモノを扱って
ミイラや古い人骨などからそのルーツを解明、「人間とは何か」を問う
国立科学博物館人類研究部研究グループ長 / 篠田 謙一
【この企画はWebナショジオ_【研究室】「研究室」に行ってみた を基調に編纂】
(文=川端裕人/写真=藤谷清美、& イラスト・史料編纂=涯 如水)
◇◆ ヒトの進化はアフリカ限定だった! =1/3= ◆◇
まずは、現生人類の母方の祖先をどんどん辿っていったらたった一人の共通の祖先に行き着く、いわゆるミトコンドリア・イヴの話。
ミトコンドリアDNAの突然変異の発生率と、現在の人類のミトコンドリアのDNAの多様性を考え合わせると、だいたいの時代がわかるという。篠田さんによれば──
「実はせいぜい15万年とか20万年前なんです。これは人類史の観点からは、非常に新しい時代です。人類は700万年前ぐらいにゴリラ・チンパンジーの共通祖先から分かれて、アフリカ大陸を出たのが200万年前ですね。それ以降、世界の各地で、旧人ですとか原人とかいわれるグループが出てきます。世界の各地の人たちはそこから独自に進化して、今の人類になったんだと、20年ぐらい前は考えられていました。これが正しいとすると、人類の共通祖先を探していけば、100万年、200万年前に戻っていくはずなのに、ミトコンドリアDNAの分析で、実は10分の1の歴史しかないということが分かったわけです」
母系で伝わるミトコンドリアの研究だから、その共通祖先は当然女性ということになり、ミトコンドリア・イヴとして大いに話題になった。
ただ、篠田さんが慎重になるように、この話には注釈をつけておく必要がある。「すべての人類の母」というイメージを持たれがちなのだが、それは明確に間違えだ。その女性の同時代には、ほかの男女も生きており、その中には我々の先祖となった人もたくさんいると考えられる。
たまたまある女性が持っていたミトコンドリアが、今のすべての人類が持っているミトコンドリアの起源になった、という不思議は充分驚嘆に値するのだけれど、その時にその女性が一人きりで暮らしていたわけではない。あくまで、我々の祖先の一つになった集団に属していた、という理解が正しい。
「ミトコンドリア・イヴを包含する集団は、数千人くらいの規模だったと思います。祖先を辿ったら、1人の女性に行き着くというわけでは決してなく、1つの遺伝子を交配しているグループに行き着くくらいのイメージでとらえたほうがいいんです。1人の女性に行き着くという言葉の響きは、非常によくないと思っています」
ちなみに、ミトコンドリアの変異をまるで動物の系統樹のように考えて分析していくと、15万年から20万年前の「ミトコンドリア・イヴ集団」はまだアフリカにいた可能性が高い。さきほど、人類は200万年前にアフリカを出たと篠田さんの発言を引いたが、ここでの「人類」は、北京原人やらジャワ原人といった旧人・原人のたぐいを含めたものだ。
日常言語で「人類」と述べると現生人類ホモ・サピエンスのことを指すように思うが、研究者が同じ言葉を使う時、もう少し広く旧人・原人を含めた「ホミノイド(ホモ属)」を指すことがある。ここから先、混乱しないように現生人類のことは、きちんと「現生人類」と表記する。
とにかく、現生人類であるホモ・サピエンスの祖先「ミトコンドリア・イヴ集団」はまだアフリカに留まっていたというのがポイント。
・・・・・・明日に続く・・・・・・
◇ 日本人 謎のルーツ1 ◇
・・・https://youtu.be/HZW90htwbGw?list=PLlC3I1HrmA24u1ygVh9lnZbzeURQ5zAZk・・・
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//////参考資料///////
■□ 参考資料: DNAで読み解く日本の古代史(4/6) □■
日本でこそある程度まとまった数の全塩基配列が決定されていますが、他の地域ではほとんどデータがないのが実情です。日本人の七人に一人が該当する第2グループがハプログループBです。四万年前の中国南部に共通の祖先を持ち、一方は北へ、他方は南へ拡散した集団の子孫です。
ハプログループB以外に、古い時代に日本列島に南から侵入したと考えられるハプログループにはM7があります。M7にはa、b、cの3つのサブグループの存在が知られています。M7が生まれたのが4万年以上前、サブグループが生まれたのが2万5千年ほど前です。
おそらくM7aの起源は寒冷化によって海水面が低下していた時代の、黄海から東シナ海にかけた広大な陸地だと考えられます。本土日本人では7%を占めるだけですが、沖縄の四分の一を占めています。このM7aは、DNAデータベースでは日本と朝鮮半島以外にはまず存在しません。
ハプログループAも日本人の7%を占めるだけですが、新大陸では普遍的に見られ、北東シベリアと北中米先住民では過半数を占めています。
第6章 日本人ミトコンドリアDNAの地域差--北海道先住民、沖縄人、そして本土日本人
現在の日本人が持つハプログループの成立とその後の拡散は、そのまま東アジアの地域集団の成立を物語っています。本土日本と沖縄、そして近隣の集団のミトコンドリアDNAハプログループ頻度をクラスター分析という手法により、近縁関係を調べると、中国有東北部、朝鮮半島、本土日本人はほとんど変わらないハプログループ構成を持っています。
細部では違いがありますが、この地域の集団は、大きくは同じ人の流れの中で成立してきたと考えていいでしょう。 沖縄と本土日本人の最大の違いはM7aの突出した頻度にありますが、これは非常に古い時代に南方から日本に入ってきたと予想されています。
これを南方系の縄文人のDNAと考えれば、沖縄の集団は北海道のアイヌの人たちと並んで縄文人の形質を色濃く残してるという、形態学者の唱える二重構造論(東南アジア系の縄文人と、東北アジア系の弥生人が徐々に混血して現在に至るという説)にも合致します。
明日に続く・・・・・
日本人はどこから来た?① ◆・・・https://youtu.be/1bViZMDzQ9A?list=PLlC3I1HrmA24u1ygVh9lnZbzeURQ5zAZk・・・
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