○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○
○ 世界中を飛び回り、恐竜の姿を求める / 小林快次 ○
◇◆ 第4回 「恐竜研究者」に向いている人 =2/2= ◇◆
大学にいると、次々と雑務(もちろん重要な雑務ばかりだ)が襲いかかってくるが、フィールドにいると、かかってくる電話もチェックするメールもない。 目の前にあるのは、白い息を吐きながら集団で歩くドールビッグホーン(Ovis dalli)であったり、オレンジ色に照らされる美しい崖だったりする。 温かいコーヒーを片手に、研究仲間と恐竜について議論する。
アラスカの場合、そこに生きる厳しさは、実体験によって感覚的に理解できる。 夏でもこんなに寒く、日照時間が短くて、食料は限られている。 このような環境で恐竜はどうやって過ごしていたのかということを、眠くなるまで語り尽くす。
運のいいことに、アラスカの夜は長いため、延々と議論は続く。議論は毎日続き、論文の内容のほとんどがフィールドで組み立てられる。 こんなに刺激的・生産的で、ストレスフリーである環境は、(少なくとも私にとって)大学では得るのが難しい。
アラスカのフィールド生活は、実に原始的だ。
朝起きたら、お湯を沸かし、コーヒーとオートミールを食べる。歯を磨いたら、バックパックに必要な荷物を詰め、準備ができたら出発だ。 山や砂漠をひたすら歩き、お昼になると、ビーフジャーキー、チーズ、ナッツを食べる。 食べ終わったら、またひたすら歩く。 その頃には、晩ご飯を何にするか話しながら調査を続ける。夕方になったら、キャンプに戻り、フリーズドライフードに湧かしたお湯を注ぐ。この毎日が続く。
エンターテインメントは、食べ物の話をすることくらい。 イタリア料理、ギリシャ料理、当然日本料理、韓国料理・・・。
食べ物の話があまりにも頻繁に出始めると、「そろそろ家に帰る時期だね」と笑う。 食べ物以外の話もたくさんする。 ただし、政治と宗教の話は厳禁。 こういうゆっくりとした時間の流れの中で研究仲間と時間を共有すると、他では生まれない団結力が生まれる。
とにかく地味、それでも行きたい
恐竜研究者って、私が昔抱いていたイメージと、現在私が行っているものとは、かなりかけ離れているようにも思う。 何か華やかなイメージがあったが、今現在は、非常に地味な作業だと実感している。
フィールドに行くと、ひたすら歩く。 今日も歩いて、明日も歩く。 とにかく気力と体力の勝負。恐竜骨格を見つけると、削岩機やスコップ、ハンマーを片手に土砂と格闘である。 よく発掘映像に骨を掘り出している作業が映るが、それは調査期間のほんのひと時であって、ほとんどは土砂をスコップで掻いている。
映画「ジュラシック・パーク」では、恐竜の全身骨格がわかるような発掘風景が描かれているが、あれもほとんどない風景。 見つけた骨化石は、現場ではあまり岩から露出させないで、丸ごと掘り出すのがいちばん良い。 骨を露出するような細かい作業は、ラボ(研究室)に戻ってからやる作業だからだ。
現場では、恐竜骨格の全貌がわからないまま、発掘が進む。 もちろん、私たちの専門家の目には、一部の露出でもその骨格の重要性がわかるため問題ないが、経験のない人が発掘を見学に来ると、「どこが骨なの?」とよく聞かれる。
恐竜化石調査のフィールド作業は、危険が伴うくせに、とにかく地味なのである。 それでも無性に行きたくなる。 不思議な魅力だ。 この魅力がわかる人は、恐竜研究者向きなのだろう。
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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