〇◎ “命のことを知らずして、命の大切さは理解できない” ◎〇
= 探検的調査を実践する “探検昆虫学者” 西田賢司 =
【この企画はWebナショジオ_“「コスタリカ 昆虫中心生活」” に追記・補講し、転載した】
☠ 中米コスタリカで新種の昆虫を見つけまくる男! 「バックマン」 ☠
曰く 『昆虫は、僕たちに自然の変化を教えてくれる一番身近な存在です』
◇◆ =100= アリではありません、何でしょう? ◆◇
コスタリカのカリブ海側にある熱帯雨林の低地に調査にでかけると、たまに見かける物体がある。これだ。葉の裏にくっついた、5センチほどのフワフワしたスポンジ状の薄茶色の塊。表面にはトゲトゲした細かい凹凸がある。実はこれ、ビワハゴロモという昆虫の卵の塊(卵鞘、らんしょう)だ。 薄茶色のスポンジ部はカバーのようなもので、中にたくさんの卵が入っている。
ビワハゴロモは、カメムシ目のセミやハゴロモに近いグループ。熱帯地域に多く分布しており、体長が数センチになるものが多い(次回紹介する予定です)。 ぼくは数年前まで、この卵の主は第7回で紹介したユカタンビワハゴロモだと思っていたが、論文を調べた結果、別のビワハゴロモ、ディアレウサ・イミタトリックス(Diareusa imitatrix)のものだとわかった。
卵に寄生するハチなんかが出てくるとオモシロそうだと思い、この卵塊を採集して袋の中で飼育してみることにした。 ところが、しばらくたったある日、この飼育袋の異変に気づいた。 中にたくさんのアリがウジャウジャとわいているのだ。なんでアリが・・・?
いや、アリではない。 翅のない寄生バチ?・・・それとも違う。 そうだ、これはビワハゴロモの幼虫だ! ビワハゴロモの1齢幼虫の多くがアリに擬態していることを思い出した。 その装いもさながら、ワサワサ、チョロチョロと動きまでアリそっくり。1カ所にたくさん集まっていると、余計にアリっぽい。
体長は5ミリほどだが、頭の先が「カバ」の口のように膨らんでいる。ビワハゴロモ特有の突起物だ。SFの世界に登場しそうな、なんとも言えないロボットのような作りをしている。 それでも後ろから見てみると、なるほど! アリに見えてしまう。
卵から孵ったばかりの赤ちゃん幼虫たちは、アリに擬態して群れていることで、捕食者たちから身を守っているのだろう。広大な熱帯雨林のジャングルの中、アリのように小さなこれらの命が、木の幹の適度な生活場所に定着するまでには、数知れない試練が待ち受けているに違いない。
Ӂ 幽霊のようなクモと高層ビルに住むセミ Ӂ
今回は、写真で涼しさを少しでもお届けできたらと思います(今回紹介する予定だったビワハゴロモは別の機会に紹介します)。 モンテベルデの我が家には、研究目的で飼育している昆虫たち以外に、いろんないきものが住んでいて、目にすることがある。その日は、床に置いてあったLEDセンサーライトが、ある生物を浮かび上がらせた。細い体に細長い脚が8本・・・ユウレイグモだ!
ユウレイグモの特徴である「雑で不規則な巣」のほぼ中央に、逆さになって獲物を待っている。下から照らされてたたずむ姿が、ちょうど幽霊っぽい。 そっと近づきながら撮影していくも、カメラが巣に触れてしまった! 次の瞬間、クモは巣の端っこに移動していた。細長く弱々しい体つきとは似合わず、動きは俊敏だ。 観察していて興味深かったことが二つある。
一つは、このクモの巣にホコリがそれほどくっついていないこと。一般的なクモの巣はネバネバしているのでホコリがたっぷりくっついている。不思議に思って文献を調べてみると、ユウレイグモの多くは、粘着性のない巣を張るそうだ。なるほど! だから、ホコリがくっつかないのだろう。
もう一つ、興味深かったのは、ユウレイグモが危険を察知したときの行動だ。サッと巣の隅へ逃げる場合と、長い脚で巣をワワワワワッサワッサと振動させる場合がある。自身の体ごと巣を揺らすため、このクモの細長い体が見えにくくなるのだ。これは、体形の似ている脚の長いほかの虫たち、ガガンボやザトウムシが体を揺らす行動に似ている。
姿を消すようなこの動き、薄暗い生息場所、細く弱々しい姿。どれをとっても、ユウレイグモとは絶妙な命名だなあと納得。ちなみに英語では「あしながおじさんグモ」や「ザトウムシグモ」、「ガガンボグモ」と呼ばれている。 所変わって、ここは大阪。 今年の夏、ぼくは一時帰国をしていて、ムシムシ暑い大阪の「中心」、大阪駅に舞い立った。周辺は高層ビルが立ち並び、昼間に太陽から届く光のエネルギーがビルやアスファルトに吸収され、一晩中放熱していく場所。いきものたちが住むには過酷な環境に思える。
そんな中、聞こえてきたのはクマゼミたちの声。クマゼミは西日本に広く分布するセミで、熱帯のような大阪の夏に適応しているのだろう。最近は昔に比べると、アブラゼミの数がかなり少なくなっているように感じる。ちなみに、アブラゼミのように翅が透明ではないセミは、世界的にみても珍しい。
大阪ステーションシティのビルの上のほうに、緑があるのが目についた。3~4メートルもある木々が数十本植わっている。あんな高いところにも、セミたちがいるのだろうか? ふとそんな疑問が湧いてきたので、さっそく階段を駆け上がった。 ビルの11階に「風の広場」と呼ばれる緑化空間が設けられていた。地上30メートルぐらいだろうか、憩いの場といった雰囲気で、クールビズ営業マン風の男性が木陰に座っていたり、若いカップルたちが会話をしていたり。
ぼくは、植えられている木々1本1本におじゃまして、セミがいないか確認した。10本ほどの木を上から下までくまなく探したものの、セミの姿は見当たらず、声も聞こえてこなかった。「やっぱりこんなところ(地上から高く、不自然な場所)には、セミはやってこないのだろう」と自分なりに納得した。
ところが、だ。 屋上14階にあるという野菜農園を目指して屋外の階段を上っていると、12階の植え込みに、大きなセミの抜け殻を見つけた! 空は夕暮れ色に染まり、ビルには明かりが灯り始めていた。植え込みの中に設置された照明に照らされながら、セミの抜け殻は大阪の街を見下ろしている。 写真を撮っていると、セミが飛んできて、木に止まった! クマゼミのオスだ。さらに探すと、セミの抜け殻がもう一つ見つかった。
これは、セミが住み始めて繁殖している可能性が高い。ここに持ち込んだ土や木の中に幼虫や卵が紛れていた可能性もなくはないが、おそらく成虫がここまで飛んで来て産卵し、世代交代をし始めたのだろう。ビルの上にある土の中で、セミの幼虫は木々の根の汁を吸って育ってきたわけだ。
セミの気持ちになって考えてみる。この場所は、ちょっとした崖や丘の上に生える木なのか、それとも地上から生えている巨木なのか? もしかしてビルの中はアリ(人間)の巣? わかることは、セミたちにとっても、ここは憩いの場になりつつあるってことだろう♪ まだしばらくは、大阪のムシ暑い夏が続きそうだ。
PS:調べてみると、地上50階ぐらいまでは、セミが飛んでくることが確認されているそうです。
・・・・・つづく
_ Corcovado Costa Rica_
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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