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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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「バックマン」と呼ばれる西田賢司 =071=

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〇◎ “命のことを知らずして、命の大切さは理解できない” ◎〇

= 探検的調査を実践する “探検昆虫学者” 西田賢司 =

【この企画はWebナショジオ_“「コスタリカ 昆虫中心生活」” に追記・補講し、転載した】

☠ 中米コスタリカで新種の昆虫を見つけまくる男! 「バックマン」 ☠

曰く 『昆虫は、僕たちに自然の変化を教えてくれる一番身近な存在です』

◇◆ =071= 女王に会いたい!軍隊アリ密着型レポート ◆◇

 前回、グンタイアリの襲来について書いたが、あれから1カ月ほどの間に我が家へ3度の襲来があった。 なぜなのか? まさにグンタイアリに翻弄される日々が続き、この連載の更新も遅らせることになってしまった。 恐縮だが、これが昆虫中心生活(笑)。 でも、おかげでグンタイアリについていろんな情報が得られ、写真や動画もたくさん撮影できた。 今回は、その1カ月近くにわたる「グンタイアリ完全密着レポート」。

  我が家にやってくるのは、グンタイアリの中で最も研究されているバーチェルグンタイアリ。 1カ所に巣を持たず、狩りをしながら移動を繰り返すことが知られている。 兵隊アリと働きアリたちは、木の洞(うろ)や、倒木の下で自ら鎖のように絡み合い、サッカーボール大からそれ以上の大きさの「野営の巣」を設け、そこから狩りに出かけては、戻ってくる。

アリ-2

  野営場所の移動頻度は、毎日のように移動する「放浪期間(約2週間)」と、移動せずに同じところに野営を設けたままにする「静止期間(約3週間)」がある。まるで遊牧民、あるいは「寅さん」のような生活だ。 しかし、ぼくはここモンテベルデで何度もバーチェルグンタイアリの隊列に出会っているが、まだ野営の巣の場所を確認できないでいた。 アリの隊列を追ってみても、いつも途中でわからなくなっていたのである。 アリに詳しいモンテベルデの学者に尋ねてみても、やはり見失ってしまうことが多いそうだ。

  ところが先日、ついに野営の場所を突き止めた。 おやつの時間(午後3時)ごろ、グンタイアリの隊列を観察していると、何やら違う方向へ向かう列ができ始めた。 よく見るとそこには、巣の中にいるべきサナギのマユや幼虫をくわえたものもいる。巣の引っ越しを始めた様子だ。

アリ-3

  どこからどこへ移動するのだろう? ぼくは木々の間をすり抜け、引っ越しの列を遡ると、あった! 大きな木の根元の土の中からウジャウジャ黒い物体が湧き出しているではないか。 ここが野営の巣の場所だ! 引っ越す前の野営の巣を見つけたので、今度は引っ越し先を探してみることにした。 枝分かれしたり、合流したりと、鉄道網のようになったアリの隊列に沿って進んでいくと、約70歩進んだところで列が消えた。 探してみると、地面に開いたいくつかの小さな穴へアリたちが分かれて入って行く。 ここが新しい野営の巣の場所なのだろう。 ぼくの家のスグそばだ。

 上の写真は新しい野営の巣のある直径が1~2センチの穴(矢印)を出入りするグンタイアリ。 引っ越しの翌日撮影した。 アリに詳しい学者は、木の根元に開いた穴を出入りしているのを一度だけ見たことがあるというが、地面に開いたこんな小さな穴の中に野営の巣を設けることは、あまり知られていない。 穴の奥の状態が気になるところだ。

  家の近くでグンタイアリが野営の巣を設けたのは確かで、こんな機会はそうないかもしれない。 次の引っ越しのときは、女王にお目にかかりたいものだ!大名行列のように、多くの従者(兵隊アリ)に囲まれ、塊で移動するということを耳にしている。 なんとかこの目で確かめねば。 ぼくは毎日ひたすら巣の穴と隊列を観察することにした。

アリ-4

  狩りの隊列は、我が家へと、隣のラボへと。。。 そんなときは、いつものようにしばらく家の外へ退散だ。 隣のラボには、体長約2センチのポリステスというアシナガバチがいくつもの塊を窓枠のすみに作って休んでいる。 乾燥して暑いこの時期の低地からモンテベルデに涼みにやって来ているのだろう。 ラボ内、全体で千匹はいるだろうか。

 でもそんなごちそうをグンタイアリが見逃がすはずがない。次々とアシナガバチは狩られていく。 壁際には、グンタイアリの塊ができていた。 アシナガバチを解体し、運び出そうとしているようだ。 夕方になるころ、ラボ内にはグンタイアリから逃れたアシナガバチが数頭飛んでいるだけだった。

アリ-5

  ぼくはラボで手を洗い、この日の観察を終えようと部屋に戻ろうとすると、狩りを終えた列のグンタイアリが床に落ちた水滴に集まってきている・・・? 顔を近づけてよく見てみると、水を飲んでいるではないか! 「お疲れさ~ん」と狩りの打ち上げでもしているのだろうか。 この光景を見ていると心が和らいだ。 小さな穴からハタラキアリたちや兵隊が狩りに出たり、獲物の食べカスを穴の外へ出しにやって来たり、巣の周りを飛び回ったり歩きまわったりするグンタイアリと関係を持つ小さな昆虫なども観察しつつ、野営の巣の引っ越しの日を待った。

  19日目の午後、またおやつの時間あたりから次の野営場所への引っ越しが始まった! おまけ <続・鰹だし>  グンタイアリが家の中を狩りした後、あの香りが! 家中に生臭い鰹だしの香りが漂っていたのである! グンタイアリのニオイだ。

アリ-6

 あれから、実験をしてみた。 10頭の生きたグンタイアリを小さなプラスチックの容器に入れて、軽く蓋をしておく。 数分後ニオイを嗅いでみると、薄い鰹だしの香りで、1日経つと、乾燥ポルチーニ(セップ)というヨーロッパのキノコの濃いニオイがした。 旨味成分の香りだ! ぼくの脳には、グンタイアリのニオイがしっかりとインプットされてしまった。 あと、隊列が通るところに削りかつお節をまぶしてみたが、少し触角で触れる程度で、これといった反応はなかった。

アリ-7

 女王の引っ越しを見てみたい!

  前回、グンタイアリの引っ越しに密着することで、そんな思いに火がついた。 グンタイアリ密着レポートのクライマックスである女王アリの移動に出会えるのか?  19日目 深夜の観察・・・・・・・前回の引っ越しから待つこと19日目。 野営の巣となっていた小さな穴からの引っ越しが始まった。 次の野営の巣の場所をたどってみると、アリの列はぼくの家のスグ目の前にある朽木と朽木の隙間、地下へと入っていく。 時間は午後3時。

 前回は、午前1時半まで引っ越しの様子を見届けたので、今回は深夜を狙うぞ! 仮眠をとり、夜中の1時半から女王が出てくるのを待つことにした。 ところがなかなか女王が出てくる気配がない。 ハタラキアリたちは、サナギをくわえてたんたんと移動するばかりだ。 そして午前4時、列の勢いがなくなり、出口周辺の兵隊アリの姿が消えた。 穴から出てくるアリの数も極端に減っている? どうやら女王は午前1時半までに移動をしていたようだ。 ん~残念!

アリ-8

  でもネバったおかげで、オモシロイものも見せてもらった。 列の最後尾、最後の最後に小さな穴から出てくるグンタイアリに、トゲダニが大量についていたのである。 歩くのもままならなく、よたよた、ふらふら、転げまわるものがたくさん! 列についていこうとするが、おいてけぼり状態だ。

  午前5時前、夜が明け始めた。 辺りがだいぶ明るくなってから、新しい野営の巣がある朽木の下を見に行った。隣に横たわっている木々や枝、土などを少し退けると、高さ30センチ、幅20センチ、奥行きが40センチほどの地下の空間にグンタイアリがビッシリ! 引っ越し当日ぐらいは朽木の下でおとなしくしているのだろうと思っていたら、とんでもなかった。

  午後4時、ぼくが家の前でイトトンボの写真を撮っていると、地面が動くように見えた。 幅4~5メートルはあろうか、グンタイアリがじゅうたんのように広がって、あの生臭い鰹だしのニオイと共に、こっちに迫って来た! 動画を撮影したので見てください。 それにしても休む間もなく狩りに出るとは、流石グンタイアリ!

アリ-9

 23日目 万全の態勢で・・・・・・・朽木の下の野営の巣からの狩りが4日間続いた午後、またもや午後3時ごろから引っ越しが始まった。 「よっし、今日こそは!」 家から延長コードを引っ張ってきて、クリップ式のデスクランプを野営の巣の場所の真上にセット。 懐中電灯やヘッドランプ、カメラのフラッシュの電池の充電などもしっかりと確認。

 動画①:わが家に迫るグンタイアリ : https://youtu.be/QJporrFdaVQ

 午後5時、明りを灯し、引っ越し元であるアリの巣を目の前に観察をスタートした。 午後6時過ぎ、辺りはもう暗い。気温は15℃を下回った。 辺りには生臭い鰹だしのニオイ。 巣の出口やアリの列の横には兵隊アリやハタラキアリの偵察隊が陣取り、やんわりと動いている。 ぼくの周辺にも何匹か偵察にやってきているので、咬まれて刺されないように注意だ。

  午後7時、変化が起き始めた。 引っ越しするアリの「川」の流れに逆らって、巣の出口へ向かう兵隊アリが増え始めたのである。 出口周辺が慌ただしくなってきた。

 動画②:グンタイアリの引っ越し : https://youtu.be/C98IjCSJfug 

 午後8時、出口に集結した兵隊アリと大型ハタラキアリのざわつきがさらに増し、同時にハタラキアリたちでできたトンネルが出口周辺に構築されつつあった。 落ち葉が道脇に落ちると近くのアリたちは一斉に反応し、落ち葉に襲いかかる。 何かが起こりそうな緊迫感が現場にみなぎっている。

  午後9時、大型ハタラキアリと兵隊が出口に形成した15センチほどの塊が、徐々に朽木の上の方(ぼくから遠ざかる方向)へと移動し始めた。 もしかするとこの中に女王が? 女王は見えないが、女王がいるに違いない!  塊のアリたち自体は落ちつきがなく、常にせわしなくしている。 でも塊自体の動くスピードは、動いていることさえわからないぐらいゆっくりだ。 そして、塊は、じわり、じわり、闇の中へ・・・。

  後日、コスタリカのアリの研究者のJack T. Longino博士に上の写真を見せて確認したところ、このアリの塊の中に女王がいたに違いないと教えてくれた。 グンタイアリについて博士に指導を仰ぎ、頻繁にメールで情報を交換する日が続いたこの1カ月であった。 女王を囲んだ塊を目にすることができ満足感はあるけど、いつか女王自体を見てみたいものだ。

アリ-10

・・・・・つづく

_ Best Of Del Mar - No.7 Costa Rica, Selected by DJ Maretimo _

・・・・・・ https://youtu.be/CEAvHoGPS5g ・・・・・・

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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