〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇
= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =
☠ 青春を深海に掛けて=高井研= ☠
ᴂ 第7話(最終話) 新たな「愛と青春の旅立ち」へ ᴂ
◇◆ プレカンラボ、絶滅の危機 =3/3= ◆◇
ウルトラエッチキューブリンケージ研究からプレカンラボ立ち上げに至るまで、たしかにみんなで協力してやってきた。それなしにはとてもできなかったことだろう。でもやっぱり、ここまでの道程は、ボク自身の勝手な思い入れやアイデア、意思、願望を前面に出して、みんなを強引に巻き込んできたという意識があったんだ。だからこそプレカンラボの存続は、ボクが何とかしないといけないという責任を強く感じていた。
でもヒアリングを前に自然に全員集結したメンバーを見て、それはボクの独りよがりだったかもしれないと感じた。キッカケはボクの勝手な思い入れや情熱だったかもしれない。でも一旦みんなで共有し分かち合った思いや情熱は、分野の異なるそれぞれの研究者の中で独自に芽を出し成長し実をつけて、一つの目標に向かって研究を進めて行く大きな原動力としてしっかりと成長していたと実感できたんだ。
ボクはそれが堪らなく嬉しかった。
ボクが感傷的になってどうする
ヒアリングを前に自然に全員集結したメンバーを見て、それはボクの独りよがりだったかもしれないと感じた。キッカケはボクの勝手な思い入れや情熱だったかもしれない。でも一旦みんなで共有し分かち合った思いや情熱は、分野の異なるそれぞれの研究者の中で独自に芽を出し成長し実をつけて、一つの目標に向かって研究を進めて行く大きな原動力としてしっかりと成長していたと実感できたんだ。
そしてヒアリングが始まった。目の前に難しそうな顔を並べ座る上層部の面々に対して、謙太郎君と渋谷君が一生懸命、渾身のプレゼンをしていた。緊張した面持ちながら、彼らの熱意がビンビン伝わってくる最高のプレゼンだった。ボクはその姿を見て涙が溢れそうになった。
彼らは自分の存在を賭けて、プレカンラボの研究の意義や素晴らしさ、そしてこれまでの成果についてアピールしていたのだ。
その内容のほとんどは、確かにかつてボクが口にした考えやフレーズだったかもしれない。でももうそれは立派に、ボクと研究分野を異にする彼らの発する彼ら自身の言葉となって語られているのだ。これこそがボク達が目指した真の分野横断であり、分野融合の一つのゴールだった。
ボクはほっておくと溢れそうになる感激の涙をこらえた。当然だ。彼らがこんなに分野横断研究の素晴らしさを見せつけてくれているのに、ボクが感傷的になってどうする。今度はボクがとどめをさす番だ。
ボクはいつものケンカ腰のプレゼンではなくできるだけ落ち着いてゆっくりと、このヒアリングに際してボクではなく若い中村謙太郎君や渋谷君がこれだけがんばってくれた事、ボクら研究者だけでなく事務方の人たちが一生懸命準備を手伝って応援してくれた事、末廣さんもこうしてヒアリングのチャンスを作ってくれた事、すなわちJAMSTECの多くの人の思いに支えられていることを述べた。
そして、こういう研究者の自発的な発想や行動を大切にして、それを現実の研究活動に反映することができるJAMSTECの素晴らしさに感謝するとともにそれを無上の誇りに思っていると。このヒアリングでその素晴らしさを少しでも共感して頂けたならば、ぜひこのような研究活動を引き続き支えて欲しいと。
ボクはそう伝えたんだ。ボクの話が終わると末廣さんはボク達の方にニコっと笑顔を向けた。そして居並ぶ面々に「では、そういうことでよろしいですね」と言って一瞬で話をまとめてしまった。
ヒアリングが終わった後、ボクはとても清々しい気持ちだった。それはまるで、ボクが昔、初めてJAMSTECの面接にやってきて掘越先生に自分の想いを伝える事ができた時に感じたような清々しさだった。伝えるべき事を伝えることができた満足感だった。
終身ラボヘッド任命
そしてこのヒアリングのおかげかどうか分からないけれど、2009年4月以降の新しい中期計画でもプレカンラボが存続することが決まった。しかも架空のバーチャルラボではなくて、現実のリアルラボとして再スタートすることになった。しかもしかも、新中期計画移行の混乱に乗じて、専任研究員を3名採用する事ができるという超VIP待遇だったのだ。
新生プレカンラボの準備が完了した2009年3月、ラボヘッドだった末廣さんにいろいろ感謝の気持ちを伝えに行った時、末廣さんは突然、「ボクは5月からIODP-MI*に移るから後は任せたよ、タカイ君」と言ったんだ。ボクは思わず絶句してしまったが、末廣さんにはもう十分お世話になりっぱなしだったことを思い返した。
ボクは精一杯、淋しさを隠して「ボクに何の断りもなく勝手に出て行かないでください。今ここで、末廣さんをプレカンラボ終身ラボヘッドに任命します。なので、形式上IODP-MIに出向と言うカタチにしておきますよ」と減らず口を叩いた。末廣さん「ハハハ、じゃあIODP-MIをクビになったら雇ってもらうか」。ボク「でもウチは厳しいですから、その時はポスドクから始めてもらいますからね」。
ボクの心の中では、末廣さんのプレカンラボからIODP-MIへの貸し出しはまだ継続中のままである。
*IODP-MI:JAMSTECの地球深部探査船「ちきゅう」などが活躍する統合国際深海掘削計画(IODP)の中央管理組織。
= エンケラドゥスvsエウロパvsケレス(5/7) =
・・・・・ 宇宙に生命を探せ‼ ・・・・・
エンケラドゥスの優位性
ワタクシは、もともと太陽系地球外生命探査対象としてのエンケラドゥスのアドバンテージは絶大であると思っていました。内部海や内部深海熱水の存在がほぼ確定的で、内部海からの噴出物(プルーム=潮吹き)が確認されており、なによりもNASAの土星探査機カッシーニによるその場化学成分分析によって、海水や熱水活動、生命活動のエネルギー物質や栄養塩、有機物の存在が定性的にはほぼ明らかになっていたからです。
しかもエンケラドゥスでは内部海の潮吹きのおかげで、着陸などの難しいオペレーションを想定しないでも、潮吹きを通過するフライバイを繰り返すだけで自動的にその場分析やサンプリングができるという利点がありました。
たしかに地球からの距離はとても遠いので、片道切符ならともかく往復できるのかという探査機工学上の問題はあります。しかしその問題をアメリカ・日本の探査工学者達に問うた時に、彼らから返ってくる自信に満ちた「不可能ではない、キリッ」というセリフにはもちろん勝算があるわけで、実際に探査工学を含めた日本、アメリカのそれぞれサンプルリターン生命探査の実現可能性について、論文も発表されています(日本版計画についてはこちらで閲覧可能。)。
つまり、エンケラドゥスだけが、生命存在可能性を想像ではなく、科学的に評価できる唯一の例だったと言えます。
一方、様々な間接的証拠から類推できる予想まで含めた場合、エウロパは太陽系最強のポテンシャルを持っていると言えます。巨大な内部海をかなり長期にわたって保持できることは、生命が存在するために大きなアドバンテージだからです。
それでもやっぱりそこには(希望的)想像の部分が大きく入りこんでしまっていることは否めませんでした。しかも、いかに生命の存在可能性が高くても、分厚い氷に阻まれていては生命活動の検出をしようにも手の出しようがないと。
ただし、世界的な情勢を見れば、強力なコミュニティ・実績作りとロビィ活動で「エウロパ」派(必ずしも生命探査を含んでいるわけではなく探査対象としてのエウロパ推進派の意味)は遙かに上を行っていて、サイエンス誌の記事にすら「探査対象として圧倒的にエウロパが優勢、にゃむ」と書かれている状況です。
……続く
・・・・・・・・つづく・・・・・・・
動画 :深海底の掘削が生み出した熱水噴出孔生物群集
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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