〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇
= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =
☠ 青春を深海に掛けて=高井研= ☠
ᴂ 第5話 地球微生物学よこんにちは ᴂ
◇◆ そうだ、もう一度、海外で修行しよう =3/3= ◆◇
微生物学の祖国とも言えるオランダでは、オランダ科学アカデミーが10年ごとにその10年で最も顕著な発見を行った微生物学者に対して、レーウェンフック・メダルを授与しているのだ。いわば微生物学のノーベル賞。
いやむしろ、ノーベル医学・生理学賞やノーベル化学賞は毎年授与されるのに対して、レーウェンフック・メダルは10年に1度。その狭き門ぶりはノーベル賞の比ではないということをすこし誇張したいッス。実際、最近はそうでもないけれども、ノーベル医学・生理学賞や化学賞の初期には、微生物学こそ最も注目を浴びたスター研究分野だったのだ。
そのレーウェンフック・メダリストを列挙したマニア向けネタが下の表。
1895年のルイ・パスツールや1935年のセルゲイ・ヴィノグラドスキーは、「細菌学の父」と呼ばれるロベルト・コッホと並ぶ「微生物学三大巨頭」だ。しかも、13人のメダリストのうち2人はノーベル医学・生理学賞もゲットしている。世間には全く知られていない賞かも知れないが、実は・・・スゴいんです。
そして直近(1992年と2003年)の受賞者2人に注目!! ちゃんとカール・ウーズとカール・シュテッターって書いてありますね。これで理解できよう。ボクが尊敬する微生物学者が、決して個人的オタク「地下アイドル」の類いでないことを。
来年あたり第14代レーウェンフック・メダリストが発表される予定だが・・・、「エドワード・デロング、あるで!」。さらに2025年の第15代には・・・、「初めて日本人の戴冠、あるで!」
そんな妄信的空想はさておき、「達成感から生じる焦燥感」を募らせたボクは、この第13代か第14代(予定)のレーウェンフック・メダリストの研究室で修行しようと企てたんだ。
その企みをボクの大ボスである掘越先生に相談したところ、「カール・シュテッターの研究室なら行ってよし」という許可が下りた。カール・シュテッターは、南ドイツのババリア地方出身の変人で、「常時アドレナリン120%大解放中」な暑苦しさ、「バカにバカ、くだらない研究にくだらない」と言ってしまう融通の利かない正直さ、「地球上の超好熱菌のすべてを自分の手で明らかにしたい」という独占欲の強さと好戦的な性格のため、世界中でやたらと敵が多い人だった。
特にアメリカ人研究者から「バーバーリアン」と呼ばれている事は既に、「第2話 JAMSTECへの道 前編」でも紹介した通りで、さらに言うと、ボクが最初に留学していたワシントン大学海洋学部のジョン・バロスとは不倶戴天の敵対関係にあった。
しかしなぜか、掘越先生とは気が合うらしく、「カール・シュテッターの研究室」スパイ活動には大賛成のようだった。逆にエドワード・デロングは若い世代のスーパースターだったが、掘越先生が言わばエルビス・プレスリー世代だとすれば、デロングはマイケル・ジャクソン世代に相当するわけで、「ワシは好かんぞ、あんな浮ついたのー」的な感じだった。
というわけで、急遽「私をカール・シュテッター研究室に連れてって」作戦が展開される事になった。
= 超深海をめざす「しんかい12000」 (5/8)=
―今の6Kは日帰りですが、超深海底に滞在するのですか?
磯崎: 海底に1~2日程度は滞在できるようにしたいです。そのために耐圧殻を二つ作り、進行方向の耐圧殻はガラス球で、後方はチタン合金の耐圧殻にしてパイロットが横になれるレストルーム兼用にするつもりです。簡易トイレも作ります。
でも上のイラストをよく見てください。後方の耐圧殻に出窓がありますね。研究者は眠らずに深海の様子を観察し続けるでしょう。そこで耐圧殻から頭を半分出して、ぐるっとまわりが全部見られるように、半球型の窓を出しているのです。
―国際宇宙ステーションの出窓「キューポラ」みたいですね。最大何人まで乗れますか?
磯崎: 最大6人乗りで、そのうち4人が研究者です。
―イラストでは2人が椅子に座っていますね。6Kでは寝転んだ姿勢ですが
磯崎: 研究者も椅子に座らせる予定です。だから居住性はよいと思いますよ。内部も6Kは昔風に箱ものが多いです。6Kが開発されたのは1980年代、ブラウン管テレビの時代ですからね。でも今は有機ELの時代でタッチパネルが主流です。耐圧殻のガラス球に文字を映せばいいのです。
―6Kはあえてアナログにしているのかと思いました
磯崎: アナログにもよい面はあります。たとえば航空機のコックピットはどんなに発達してもアナログのメーターがあります。デジタル画面の数字を読むのではなく、針が上をさしているから正常だとか、ぱっと判断できるように。でもアナログ画面をガラス球に映せばいい。
母船からのクレーン方式も変わる!
―フルデプス、フルビジョン、効率性アップ……楽しみです
磯崎: 母船も新しくするつもりです。今は支援母船「よこすか」の後ろからクレーンで下ろして着水させ、スイマーがケーブルを手ではずしています。そのスイマーたちの安全を確保するために天候の条件があるのです。「ちきゅう」(地球深部探査船)という船の内部を見たことはありますか?
―はい、つい先日……
磯崎: 船の真中にムーンプールという開口部があって、そこから掘削しますよね。「しんかい12000」の母船も真中に開口部が欲しい。そこから「しんかい12000」を出し入れしたいのです。
―そうすると、スイマーは必要なくなるんですか?
磯崎: はい。揺れずに静かに海におろすことができます。現状はたとえばインド洋まで出かけて行ったのに、天候条件が悪くて「今日は潜れません」と潜航しないことがあります。安全第一とわかっていても研究者にしてみれば、せっかく得た機会だし、はるばるインド洋まで行って潜れなかったりすると、愚痴のひとつも言いたくなります。潜れる機会をいかに増やすかも効率化にとって大事です。
―ムーンプールを作れば天候にはほとんど左右されなくなりますか?
磯崎: 船が留まれる限り大丈夫です。
・・・・・・・・つづく・・・・・・・
動画 : 巨大地震発生メカニズムを調査! https://youtu.be/Cw3_PxLR8M8?list=PL97pirzgh57Ms7dQy4rBYdXdGFoAdqmXY
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