その最期の言葉は、死刑執行人・サンソン医師の足を踏んでしまった際に
○◎ “ごめんなさいね、わざとではありませんのよ。 でも靴が汚れなくてよかった” ◎○
◇◆ 囚人番号280のマリー・アントワネット・・・ ◇◆
コンシェルジュリーは、もともとフィリップ4世などカペー朝の王の宮殿(palais de la Cité、シテ宮)として建てられ、10世紀から14世紀にかけて使用されて来た。 フィリップ4世の宮殿だった。 しかし、シャルル5世らによって放棄され、ヴァンセンヌ城に居城が移された後の1370年に牢獄として使われ始める。 ロロージュ河岸に沿って建つ建物の地上階と2つの塔が牢獄に割り当てられた。 14世紀後半から牢獄として使われ始め、フランス革命の際には、多くの王族や貴族が収容された。 ルイ15世の寵姫デュ・バリー夫人もここに収容され、断頭台に送られている。
フランス革命の後、恐怖政治の時代は国民公会により革命裁判所が隣設され、1793年からフランス革命歴3年草月12日(1795年5月31日)までの約2年間に、2780名に対して死刑判決が下されたという。 多くの王族、貴族などの旧体制派が収容され、当時はその牢獄に入るとかならず死刑になるというので「死の牢獄」「ギロチン控えの間」とよばれた。 マリー・アントワネットが投獄されたのは1793年である。 そこにマリー・アントワネットは子供達から引き離されて移されたのである。
国王一家が幽閉されているタンプル塔では、フェルセン伯爵をはじめ、アントワネットを救い出そうとする動きを誘発させる。 この国外からの救出活動を牽制するために王妃のアントワネットを単独で幽閉したのである。 幼いルイ17世(ルイ=シャルル)はジャック・ルネ・エベールの罠に落ちていた。 コンシェルジュリーの収監名簿に、監獄所長リシャールは『フランスに対して陰謀を企てた罪』と書き、アントワネットに与えられた囚人番号は280だった。 少なくともタンプル塔では、住むのは王家の人間だと言うことが配慮されていたのだが・・・・・。
しかし、コンシェルジュリーの独房は、備品も設備も囚人用のものだったので、住み心地は格段に悪い状況である。 反対に、牢獄全体の雰囲気はタンプル塔よりもよく、監視もそれほど厳しいものではなかった。 囚人用の設備でタンプル塔よりも劣悪な環境にも関わらず、コンシェルジュリーの方が雰囲気良く感じられたのには訳があった。 タンプル塔で監視にあたっていたのは、活動家の中からパリ市が選んだ者たちで、反王政の人達であったが、コンシェルジュリーの監視は、フランス革命前に任命されている者たちばかりですので、王家を敬う気持ちも持ち合わせており、王妃のアントワネットに対しても、それなりに敬意を表して接していた。
独房内には2人の監視兵がいた。 この2人はパリ市が任命した者でしたが、タンプル塔にいた警備兵よりも好意的で、定期的に花を持ってきてくれ、革命に思誠を誓うことを拒否した僧侶と会うことも黙認してくれた。 =この僧侶は、コンシェルジュリーに収監されていた僧侶と思われる= また、身の回りの世話をする女性が2人つけられている。 この女性はポケットマネーでアントワネットに小さな鏡をプレゼントしてくれたり、自分の部屋から小さな椅子も持ってきてくれたと言う。
監視責任者のミショニは視察に来るたびに、タンプル塔の子供達の様子や、外の出来事を教えてくれ、リシャール所長の夫人も色々と便宜を図ってくれた。 他の囚人とは違う、上等なシーツを用意してくれたり、特別な料理も用意してくれるなど、タンプル塔に比べ、マリー・アントワネットに対して好意的な者が多くいた。
しかしながら、いくら好意的な者が周りにいても、アントワネットの行動は制限されてた。 朝は7時に起床し、就寝は22時。 朝食はパンにコーヒーかココアの軽いもので、髪を整えて2着しかない、黒か白の服を着ると、何もすることがなくなってしまう。 普通の囚人は、中庭で散歩やおしゃべりが可能だが、アントワネットは独房から出ることを許されていなかった。 独房内をウロウロしたり、散歩をする囚人を眺める気晴らしをしたりするしかない囚人生活である。
本は許可されていたが、編み物と刺繍は禁止されていた。 針でケガをしてはいけないという表向きの理由がありましたが、本音は自分で命を絶たれては困るということだったのであろう。 アントワネットは壁布から抜き取った糸を紐にして編んだりして時間つぶしをしていた。 王妃の独房での健康状態は極めて悪く、慢性的な出血にも悩まされていたと言う。 美貌の面影はなく、見違えるほど衰えてしまい、見る者が胸を痛めるほどであった。
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