〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇
= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =
☠ 青春を深海に掛けて=高井研= ☠
ᴂ 第4話 JAMSTEC新人ポスドクびんびん物語 ᴂ
◇◆ 緊急激論!“クマムシvs極限環境微生物” =2/2= ◆◇
「ははは、よくご存じですね~。いやー、まいった、まいった、ペシペシ。確かにクマムシの生存能力はすごいものがありますね。でもあれは耐える能力で、ワタクシの申し上げているのは生育する(増殖する)能力なんですね」と“クマムシ”こと堀川大樹は、池上彰風に取り繕った。
しかし心の中では、「へっ、なにがクマムシだよ。あんなプニュプニュのユルユル歩きなんて、相手じゃねえぜ。地球最強はアレよ、極限環境微生物よ。そらそうよ」などと嫉妬の炎が燎原の火のごとくメラメラしていたりするわけで・・・。
そういえば昔、フジテレビ系でやっていた「ザ・ベストハウス123」という番組でも、「無敵の最強生物」というテーマで、ワタクシ達が研究している黒スケーリーフット(通称:クロスケ)という深海に生息する巻貝が第3位で、第1位のクマムシに惨敗したよな~、と頭の中の消しゴムでゴシゴシ消したはずのどーでもいいメモリーが蘇ったりするわけで・・・。
何よりも驚くのが、本当に多くの一般の人がクマムシのことを知っていることです。これは「クマムシ」研究者達やそのサポーターの不断の努力と協力、そして行動によって為された研究プロモーション活動の偉大なる成果といっても過言ではないと思います。それが「クマムシ」の持つ特異な生存能力と遍在性の魅力と相俟ってこれだけの認知を獲得したと言えるでしょう。
クマムシ研究者達の努力によって築き上げられた「クマムシ愛」は、多少の誇張も含めて「クマムシ地上最強伝説」となって一般社会にかなり浸透しています。そしてその「クマムシ研究界」の若きイケメンカリスマ研究者としてそのプロモーションに大きな役割を果たしているのが、現在パリ第5大学およびフランス国立衛生医学研究所ユニット1001でポスドク研究員をしている堀川大樹さん、その人です。
川端裕人さんの書くWebナショジオの特集記事を読むと、くやしいことに「めっちゃおもしろいやんけー」と引き込まれることしきり。記事から派生して、堀川さんのブログ(むしブロ+)やらツイッターなどを読んでも、「クマムシ愛に溢れた極上のエンターテイメント」としか言いようがない。こういう努力があってこその「クマムシ地上最強伝説」なんだと納得します。
しかし、そのブログやらツイッターやらのコメント欄に、どうもうら若い女性達の「堀川さん素敵 ♡、クマちゃん最強、きゃわうぃーねー♡」みたいなニュアンスのコメがたくさん載っているのを見た瞬間、ワタクシの心の闇に「堀川許すまじ!クマムシ許すまじ!」の黒い情念がゴッゴッゴッと湧き上がってくるのを止められずにいたのだ。
そして思わず、自身のツイッターで「オラー、クマムシ表出ろやー! Webナショジオで勝負したるワイ」とか言っちゃったんですね~。おっさんの嫉妬って恐いですね~。いやー、ホントに世の中で一番恐ろしいのは政治にしろ研究にしろ会社にしろ、組織の中でのおっさんの嫉妬なんですね~。って、それはとりあえず全く関係なかった。その言葉を多くの人達に目撃されてしまったわけです。
というワケで、本当なら、因縁のJAMSTECでポスドク研究員としてのスタートを切ることになったワタクシのJAMSTEC新人ポスドクびんびん物語をサクサク始める所だったはずですが、このマクラ部を使って、「緊急激論!“クマムシvs極限環境微生物”激突! ドーなる?! 地上最強伝説」をお送りするはめになってしまいました。
とは言えワタクシの専門は一応「微生物学」なので、微生物のことはともかく、クマムシのことは全くの素人です。孫子の兵法「彼を知り己を知れば百戦殆からず」を実践しようにもクマムシの論文を検索するにも一苦労でした。そこで、思いっきりズルをして、敵役である堀川さんにお願いして、クマムシの生存能力に関する論文を全部教えてもらいました(堀川さん本当に有り難うございます)。
そんなこんなで、一枚の対決表を作り上げた。 対決論点を整理した一覧表をじっくり解説しましょう。
= 生命は海から?陸から?宇宙から?—高井研さんに聞く・前段 1/6— =
海洋研究開発機構(JAMSTEC)深海・地殻内生物圏研究分野分野長 高井研さん。「しんかい6500」実機前で。(高井さんの右側にある丸窓が研究者用窓)深海や生命について語り出すと止まらない、めちゃくちゃ熱くて濃い方です。
「土星の衛星エンセラダスに地球外生命の可能性が!」という2015年3月のニュースは衝撃的だった。エンセラダスは太陽から遥か彼方の、氷の衛星。その氷の下に生命が誕生した頃の原始地球と似た海が広がり、今も熱水活動が行われているというのだ。その事実を実験により明らかにしたのが、深海のプロ集団=海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究者たちというのも興味津々。そこで「生命の起源×深海」と言えばこの方、JAMSTECの高井研さんを訪ねた。ものすごく難しい話をものすごく丁寧にお話くださった(時に「ここ、感動ポイントやで!」とあきれられつつ)インタビューを2回に分けて紹介します。後半ほど熱くなるトーク、最後までついてきてくださいね。深海へGo!
深海の熱水噴出孔はラスベガス!?
—- 水深数千mの深海に、熱水が噴き出す熱水噴出孔(チムニー)があって、生命が誕生した場所と考えられていますよね。どんな世界だろう?と興味がありますが、高井さんは「砂漠で忽然と現れるラスベガス」と表現されていて、オモシロいなぁと。
高井: アメリカをドライブしたことあります?基本的にアメリカってど田舎で、変わらない景色が延々と続くじゃないですか。たとえば砂漠の中を走っていると、「あれ、ちょっと家が出てきた」とか「電線が出てきた」という感じで、深海の底にぽろぽろっと生物が見えてくる。「近いんじゃない?」と思うと、もはーっと郊外の住宅街が出てきて、突然ゴーンとラスベガスの摩天楼のように熱水噴出孔が出てくる。深海底は真っ暗で「しんかい6500」がライトで照らす10メートル先しか見えないから、近づかないと見えないんです。
・・・・・・・・つづく・・・・・・・
動画 : 熱水海底下生命圏を調査!(Vol.3)
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