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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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未知なる深海へ 高井 研 =036=

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〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇

= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =

☠  青春を深海に掛けて=高井研=  ☠

ᴂ  特別番外編  「しんかい6500」、震源域に潜る ᴂ

◇◆ その2 端的に言うと「ちょっとビビッていた」 =2/2= ◆◇

3回の潜航調査では、しょこたんが潜った時には何もなかった海底に、大きな亀裂や微生物マット(微生物が多量に繁殖してマット状になったところ)が見つかった。 また、しょこたんが潜った時には、どちらかというとイソギンチャクの仲間が多かったが、今回は「キャラウシナマコ」というクチをビヨーンと伸ばして泥をムシャムシャ喰うナマコの巣窟となっていた。

この地点では地震後の海底環境や生態系の明らかな変化を捉えることができた。 ただし、ここは本震の震源からは水平距離で160km程離れていた。 つまり「最大海底変動域」ではなかった。 そして、東北地方太平洋沖地震の「最大海底変動域」への潜航が、調査5日目の今日、まさしく行われようとしていたのだった。

潜航調査の対象は、日本海溝の陸側斜面の海底下にしばしば観察される巨大な正断層の直上海底。 一説には東北地方太平洋沖地震ではこの断層が大きく動いた可能性も指摘されているというきな臭い場所である。 事前の深海曳航カメラ観察では、断層直上海底にフレッシュに見える微生物マットが広がっていた。

この微生物マットは、地震による地殻変動で思わず漏れてしまった「海底下汁」に含まれていたであろうメタン、さらに言えばもしかすると水素、によって急遽海底に出現した「地震微生物生態系」の一部と予想されたのだ。 つまり普段なら「すかすこと」ができていた放屁が、超巨大地震という「人生上最も危険な破局的モヨオシ(ビッグウェーブ)」により「すかす」どころか、禁断の・・・という状況になったと想像していただきたい。

そういう「下ネタ」、いやもとい「地震汁や地震微生物生態系」が調査対象ならボクの出番だ。 いつもの「しんかい6500」の潜航調査と同じように、ボクはいくぶん緊張した朝を迎え、潜航準備に取りかかっていた。 じつはこの調査航海が始まる前から、研究航海に参加することとは別に、ボクは今回「しんかい6500」で潜航したいような、潜航したくないような、微妙な気持ちがあった。

1973年に出版された小松左京さん(2011年7月26日に他界された)の「日本沈没」というSF小説がある。 ボクは原作を読んでいないけれど、テレビドラマの再放送を見た記憶があり、子供心にそこで見た「地割れ」に尋常ならざる恐怖を抱いたのを今でも覚えている。 そのせいで「地震」=「地割れパックリ→ヒト落ちる→地割れ閉まる」という方程式が頭に刻み込まれてしまったぐらいだ。

「日本沈没」は2006年にも映画が制作されたが、そこにはJAMSTECが全面協力した。 「わだつみ6500」と偽名を語る「しんかい6500」やご本名で「ちきゅう」が登場し、JAMSTEC本部のしんかい整備場では草なぎ剛さん演じるシーンが収録されたりした。

そんな縁もあって、普段は滅多に見ない日本のSF映画だけれども、この映画はDVDで見たことがあった。 その最後のシーンでは、日本海溝に潜航中激しい地震に遭遇し、巨大な乱泥流に巻き込まれ、あわれ「わだつみ6500」は日本海溝の藻屑と消えてゆく。

こんなシーン、「想像するな」って言われても、「想像しますわな」。 まさしく余震が頻発する日本海溝に「わだつみ6500」で、いやもとい「しんかい6500」で、潜航調査するわけですから、安全性の確認は充分するとは言え、映画と同じ運命をたどる可能性はゼロではないです。 むしろ100%安全なところに潜航しても調査の目的は達成できないわけで・・・。

潜る以上は「なるたけリスキーな調査地点! バッチこーい!」なわけで・・・。 端的に言うと「ちょっとビビッていた」

しかしまあ、そのビビリというのは寝る前にちょっと想像するくらいで、思わず汗をかくというほどのものではなかったけれど。むしろ、前夜から微妙に下り坂風味のお腹の調子の方が、ボクにとってははるかに喫緊の課題だった。 「じゃあ、タカイさん、行きましょうか」。 頼れるパイロットチバさんのかけ声とともに「しんかい6500」の耐圧殻に乗り込んだ。

= 極限環境で生命の起源を探る・高井研 : 1/3 =

カギは400度の熱水噴出孔、何千mもの深海で微生物を探す(1/2)

──先生は「生命の起源」を明らかにするために研究をされていると伺っています。誰でも興味のあるテーマだと思いますが、そもそも生命とはどういうものなのでしょうか。

高井 私としては、生命というものの一番しっかりした定義は、NASAの「ダーウィン進化を受けることが可能な自律自己保存的な化学システム」だと思っています。でも、これだと、何言っているかわかりませんよね(笑)。だから日本では一般的に「自分を維持するために代謝する・子孫を残す・外の世界と区別できる内部組織がある・進化する」の4つを生命(生物)の定義としています。

──そうすると、先生の研究テーマである「生命の起源」とは、そのような4つの仕組みを持つもので進化を逆戻りした、一番単純なものということになるのでしょうか?

高井 そうです。

──具体的にはどのようにご研究をされているのですか?

高井 深海の「極限環境」に生きる微生物を研究しています。微生物は、深海、土の中、また強アルカリ性・強酸性の中と、どんな場所・環境でも存在しています。そうした極限にいる微生物を調べていけば、生命が存在できる「限界」を知ることができる。そこには生命が誕生する条件とか、生まれる仕組みとか、生命起源のヒントがきっとあるはずなんです。

──深海の極限環境とはどのようなところなのですか?

高井 熱水噴出孔という非常に高温の熱水が噴出している場所です。昨年は、世界でもっとも深いといわれているカリブ海の調査に参加したのですが、深度5000mの場所で400度もの熱水が噴き出ていました。

──400度! そんな高温の中に生物がいるんですか?

高井 はい、いるんです。地球に海が誕生した40億年前からこうした熱水噴出孔は存在していて、世界中で500ヶ所以上発見されています。でも、ここまで高温な場所はまだあまり調査が進んでいないんですよ。世界の海底には誰も採取したことのない微生物がまだまだたくさんいるはずです。

・・・・・・・・つづく・・・・・・・

動画 : 相模湾を探る ―深海に見る地球の変動

  https://youtu.be/10LToXpxGJ8 

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