〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇
= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =
☠ 青春を深海に掛けて=高井研= ☠
ᴂ 第二話 JAMSTECへの道・前編 ᴂ
◇◆ その3 国際ワークショップで撃沈 =3/3= ◆◇
掘越弘毅先生や大島泰郎先生といった大物は独特のオーラがあって誇らしく感じたのだが、その他の研究者の発表はボクでも考えつきそうな、あるいはボクでもできそうな研究の話ばかりだった。 超好熱菌の微生物学的な研究に限って言えば、ハッキリとボクの研究の方が上だと思った。
研究を始めて1年ちょいのボクの中に、「日本のこの研究分野をしょって立つのはやはり、ボクしかいないな」という感情が湧き上がってきた。なんて「ナマイキで身の程知らずな若造よ!」と思う。でも、ボクはホントーにそう思ったんだ。
しかし、講演の合間のコーヒーブレイクや講演終了後の懇親会では、そんなボクのナマイキな思い上がりは木っ端みじんに打ち砕かれた。ジョン・バロスに「留学が・・・したいです・・・バロス先生!」と言うのが精一杯。「キミは独身か?」という質問も聞き取れず、アワアワするだけ。
ジョン・バロスに露骨に「メンドーくさそうなヤツやのー」と思われたのだけは、機敏に感じ取ることができてしまった。カール・シュッテッターには、話しかけようと「アノ、アノ、アノ」と言っているうちに手でヒラヒラされて、「アッチ行け」と追い払われるシマツ。
同行したパメラさんはさすがラテンのノリを発揮して、キャピキャピ可愛い娘ブリッ子全開で大物研究者に顔と名前は売っているわ、東京大学の大学院生も先生に紹介されてしっかり自己紹介しているわ、でボクだけ完全に懇親会ハブ状態。海外のパーティーにおける典型的ダメダメ日本男児ぶりを猛烈に発揮していたのだ。
さらにダメなことに、「ボクはなんてダメなヤツだ」と急激に落ち込んで負のデフレスパイラルに陥ってしまっていた(ちなみにこの部分は、いまでもダメダメッぷりはさして直っていない)。
「日本をしょって立つ」と意気込んだわりには、可及的速やかに自分のダメさを認識してしまったボクは、現実逃避のタバコを吸うためにフラフラとした足取りでJAMSTECの岸壁の方に歩いていった。長い貧乏旅行の疲れと暑さと睡眠不足にやられた体、興奮と落ち込みでもはや何がなんだか分からなくなった頭。
そんなボクの前に、夕暮れの薄ら明かりと夜の闇が入り混じった静かな東京湾の海と、キラキラ光る湾岸の工場や街の明かりが重なった光景があった。とても美しい、印象的な光景だった。JAMSTECの岸壁には、昼間の暴走的な暑さの和らいだ磯の香りを含んだ涼しい風が流れていた。
こんな印象的な光景が、心が静まる海が、目の前に拡がる研究所、JAMSTEC。イイ所だな、ここは。このJAMSTECが、これから日本の深海微生物研究の中心になるんだろうな。あーあ、しょせんボクなんて・・・・・・。
やや自暴自棄的な感傷に浸食されながらそう思ったボクの中に、しかし突然、何かアツい、マグマのような、感情が湧き上がってきた。なぜ突然そんな都合良く気持ちが切り替わるのか、自分でもよく分からない。でも、ボクは自分の負けをしっかりと噛み締めたとき、不思議と立ち向かう元気と勇気が、カラダの奥底からフツフツと湧いてくることを何度も経験していた。今度もそうだった。
「見てろよ、お前ら(←誰?)。今は、誰も注目しないカスみたいな大学院生にすぎないけれど、今日この場にいたJAMSTECの、日本の、そして世界の研究者をあっと言わせる研究をしてやる。絶対、お前ら(←誰?)をギャフンと言わせてやる」
JAMSTECの岸壁の前に拡がる美しい印象的な光景を前に、ボクは強くそう思ったんだ。初めてJAMSTECという正体不明の研究所を訪ねて、凄い研究環境と設備が揃ったズルい研究所であることを見せつけられたこと、初めて世界の一流研究者が集まる国際集会に参加し雰囲気を肌で感じられたこと、留学先の先生と初めて話すことができてビビリまくったこと、自分の研究が世界に通じるという根拠のない強い自信とダメダメっぷりを同時に感じたこと、そしてなぜか、絶対やってやるという断固たる決意が芽生えたこと。
それが、ボクがこの夏の日のことを今でも鮮明に覚えている理由だった。そして、これがJAMSTECとの2回目の交わりだった。
=光の届かぬ海底世界に、」人類が求める宝が眠る=
“特別なことはするな”。 パイロットとしての心構え(1/2)
――研究のため、「しんかい6500」も進化を遂げてきたということですね。吉梅さんご自身も、もともと深海への興味があってパイロットを志したのでしょうか?
吉梅 私は商船高等専門学校出身で、JAMSTECに入ったときは、母船(編集部注:「しんかい6500」を調査海域まで運ぶ船のこと)の乗組員のつもりでした。しかし、実際に乗船することになったのは潜水船で、すべてを自分の目で見て、覚えていくしかありませんでした。我々の上の世代は、「見て覚えろ」という世代だったので、当時は暇さえあれば膨大な量になる潜水船の図面を読み漁っていました。
――パイロットも、技術について学ぶ必要があると?
吉梅 はい、パイロットは潜航に必要な、あらゆる知識を身につけなければなりません。船であれば選択や決定は船長の裁量ですが、潜水船の潜航中は2名のパイロットにすべての裁量が委ねられ、あらゆる状況に対応していきます。電気系統や油圧といったシステム面の知識のほか、深海調査中の内部の環境についてなど、幅広い知識を持つ必要があります。
――運転、操作技術だけではない、膨大な知識量が必要…となってくると、一人前のパイロットになるには、どれくらいかかるのでしょう?
吉梅 コ・パイロット(操船補助者)になるまで3年から4年、最終的にパイロットとして独り立ちできるのは、だいたい7年から8年といったところでしょうか。
――実際の潜航の中で、想定外の事態が起きることはありますか?
吉梅 海の中では、当初の計画通りに進むことは、まずないと思っています。むしろ、そうした状況にどう対処するかが、パイロットの腕の見せどころでもあります。あるときは、マニピュレーターが動かなくなり、研究のために持ち込んだ資材を海底に設置できなくなったケースもありました。結果、断線が原因だと判明しましたが、既に潜航した後で、その場ではどうすることもできません。そこで、同乗していた研究者にも相談し、マニピュレーターは諦め、深海の観察に切り替えました。
・・・・・・・・つづく・・・・・・・
動画 : しんかい6500、海底に到達
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