〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇
= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =
☠ 青春を深海に掛けて=高井研= ☠
ᴂ 第一話 実録! 有人潜水艇による深海熱水調査の真実 ᴂ
◇◆ その4 その瞬間 稲妻が走った =Extra= ◆◇
第1話「実録!有人潜水艇による深海熱水調査の真実」のあとがき
今回紹介した潜航調査の様子は2009年10月10日から10月30日までJAMSTECの「よこすか」と「しんかい6500」を用いた「インド洋熱水探査航海」(正式な航海番号はYK09-13 Leg 1)でのワンシーンから紹介しました。本航海は、東京大学大学院工学系研究科附属エネルギー・資源フロンティアセンター、センター長である玉木賢策教授を首席研究者とする国際研究チームによって行われました。
玉木賢策先生は、長年インド洋における新たな熱水活動調査研究に多大な貢献をされ、そのリーダーシップにより、ようやく見つけた熱水活動の兆候を基に、この航海で2つの熱水域を発見するという成功を導きました。
熱水を見つけた潜航研究者(ワタクシのことでもあります)が、興奮して船上に戻り、嬉しそうに話す報告に、玉木賢策先生がもっと嬉しそうな笑顔で頷いている姿が忘れられません。玉木賢策先生は、2011年4月6日、出張先のニューヨークにて、急病のため突然逝去されました。
本章で伝えたかった「研究の楽しさ、喜び、熱い思い、そして感動」は、玉木賢策先生が「その研究」を通じて伝えたかったことに他なりません。「科学の原動力は感動であることを再認識した」。この「インド洋熱水探査航海」で最も大きな成果は何か?と問われた時、玉木賢策先生はそう答えました。ワタクシの駄文を、天国から見て、「あいかわらず高井さん、無駄に愉快でエネルギッシュですね~。でもボクはそういうの好きですよ」とおっしゃっていると思ってます。本当に一緒に研究できて楽しかったです。ありがとうございました。そして安らかに。
=補講・資料=
しんかい6500・その二(3/3)
推進力・電力
2012年にスクリューやモーターを追加する改造が行われ、操作性が大幅に向上した。推進力(スクリュー)は、船体後部に主推進スラスターを左右に各1台、船体中央の左右両側に垂直スラスターを各1台、船体前後に水平スラスターを各1台。垂直スラスターを埋め込み式にすることで下降・上昇時の抵抗減少・時間短縮に努めている。後部の推進スラスターは左右独立して推進力の調整が可能で、水平スラスターも併用して左右に旋回する。潜行する際は、そのまま沈むのでは垂直スラスターの推力およびバラストに依る比重しか利用できないため、潜行トリムを取った上で旋回(すなわち前進推力を利用)しながら潜行していくことで、目的深度までの到達時間短縮を図る。
浮力材は、ガラスマイクロバルーン(極小の中空ガラス球)を高強度エポキシ樹脂で固めたシンタクチックフォーム(水との比重は0.53)を船体全体に使用している。特に、しんかい6500で使用されているシンタクチックフォームは、直径88〜105μmと直径40〜44μmの2種のガラスマイクロバルーンを使用、より小さなバルーンで間を埋めることで比重を抑えたまま強度を向上している。浮上する際に排出するバラスト(重り)は、しんかい2000では鉄球のバラストだったが、しんかい6500では鉄板に変更されている。バラストには潜行番号が刻印されているため、いつ、どの潜水船が調査を行ったか分かる。
主蓄電池は当初、軽量で高容量の酸化銀亜鉛電池1組2群(1群72セル)を潜水毎に入れ替えて使用していたが、2004年からはリチウムイオン電池となり、小型軽量化と整備性改善が図られている。
調査用装備
耐圧殻前方に投光器(メタルハライドライト)とハイビジョンカメラ2台(光出力可能)、デジタルカメラ1台を装備している。前下方に2本のマニピュレーターと調査機材や採集サンプルを入れるバスケット2個を備え、これによって調査・標本採集を行う。マニピュレーターは油圧・サーボ弁で動く7関節のマスタースレープ式で、片方で大気中での重さにして約80kgまで持つことが可能。サンプル採集用の吸い込みホースはマニピュレーターで挟んで操作する。操作は船内のジョイスティックで行う。バスケットは300kgまで入れられる。2013年6月の生中継の際には船尾に光ケーブルを収容したスプーラーを取り付けた。また、カラー画像をデジタル処理し音波を使って母船に送る音響画像伝送装置を備える。
・・・・つづく・・・
動画 :しんかい6500
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