本日記載附録(ブログ)
ロシアがウクライナに侵攻した背景とその行方を広厚に理解すべく、旧ソ連諸国紛争や「未承認国家」「ハイブリッド戦争」の著作
日本の政治学者=国際政治・比較政治学・コーカサス地域が研究テーマ
=黒海地域の国際関係・政治経済変動などが主な業績=
研究課題“ロシアのハイブリッド戦争とその影響”/‘14年12月以降 継続中
【この企画はWebナショジオ】を基調に編纂(文責 & イラスト・資料編纂=涯 如水)
廣瀬陽子(17/nx)
◇◆ 第6回 ウクライナ侵攻の伏線、欧米が関与した旧ソ連の「民主化」と「ハイブリッド戦争」=3/4= ◆◇
もっとも、廣瀬さんは、「ハイブリッド戦争」について、あまり過大な幻想を持つべきではないという立場のようだ。
「ロシアにとって、ロシア・ジョージア戦争が、ハイブリッド戦争の最も重要な『練習』になって、クリミア併合で注目されたわけですが、ハイブリッド戦争が何かを変えたかというと、あまり変化はない気がします。クリミア併合を除き、結局最後は全面戦争に至ってしまっているからです。ハイブリッド戦争は、極力『軍事的な全面戦争』に至らないように、非軍事的な戦いや軍事的脅迫で相手にこちらの要求をのませたり、懲罰行為を行ったりすることにメリットがあるわけで、ロシアと欧米の戦いにおいてはうまく機能しているとも言えるかもしれません。しかし、旧ソ連域内ですと、戦闘に至る事例が多いように思います。クリミア併合やロシアの2007年のエストニアに対するサイバー攻撃を使った懲罰行為などは非正規的な戦いで収まったとも言えますが」
さらにその後、2014年4月から5月にかけて、ウクライナ東部のロシア系住民が多い地域で、親ロシア勢力が武装蜂起して、「ドネツク共和国」「ルガンスク共和国」が相次いでウクライナからの独立を宣言したことも、親欧米を志向するウクライナに、ロシアが影響力を行使した騒乱の一部として、「ハイブリッド戦争」の要素を見出すことができるだろう。と同時に、この連載での中心的な話題、未承認国家を創設する動きをロシアがここでも示して、国家ではないけれど国際関係上の「主体」(エンティティ) であることを梃子にして目的を遂げようとしたことは、あらためて強調しておきたい。
「もちろん、その後、国際社会からいろいろな制裁があって、ロシアはすごく大変でしたし、今もその制裁に苦しんでいる部分があるのですが、ただロシアはかなりの部分を克服しちゃったんですよね。経済的な締めつけも、内需を増やすとか、貿易多角化とか、経済の効率化とかで乗り切ってしまったので、どんな制裁を受けてもロシアは乗り越えられるのだ、というような間違った自信をつけてしまった。それも今回の侵攻を行う上での背景になったと思います」
なお、廣瀬さんは2015年、併合後のクリミアでも調査を行っている。はたして、クリミアの人々の「本音」では、ロシアによる併合を歓迎しているのだろうか。
「かなり多くの人がロシア化を歓迎し、こんなにいいことがあったと、いろいろな逸話を話してくれたのも事実です。しかし、完全にロシア化したかと思いきや、そうでもない人もいて、例えば、インタビューをして住民投票はどうでしたかと話すと、『もちろん行きました』と淡々と返事をしてくれた後で、またコソコソッと戻ってきて、『軍人がいっぱいいて脅迫されていたような場面での住民投票に意味があると思うか』みたいなことを言ってきたり。あと、現地で頼んだガイドさんが、わたしはおばあちゃんがウクライナ人でウクライナが大好きだったのに、こうなってしまって悲しい、と言っていたりもしました。クリミアですらそういう空気があって、だから全員が全員、ロシアを手放しで歓迎したわけじゃないですよね」
旧ソ連諸国の「民主化」をめぐる鍔迫り合いが、「ハイブリッド戦争」の要素を折々に散りばめつつ、2022年2月に至る伏線となったことを見た。さらにもう一つだけ、2020年代に入ってから、この文脈において重要な事項がある。前回でもすでに少し触れた、2020年のナゴルノ・カラバフ紛争の再燃だ。
・・・・・・・・明日に続く・・・・・
【参考資料】 : 「ウクライナは民族国家なのか」(3/4)
Ω・Ω・Ω ロシアとウクライナが「こじれた」複雑すぎる経緯 歴史で紐解く Ω・Ω・Ω
親米政権の発足が問題の発端に
第二次世界大戦では、ソ連はヒトラーのバルバロッサ作戦(1941年)によるソ連侵入によって、大きな被害を受ける。連合軍の勝利の後、ロシアはウクライナ共和国を拡大し、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、チェコスロバキアと直接接するように国境地域を拡大する。結果的にウクライナにロシア人以外が住むようになる。とはいえ、ウクライナの人口の多くはロシア語を話すロシア人であった。
1991年のソビエト崩壊によって、ソ連の共和国が独立していく。その中にウクライナもあったが、ロシアはこれらの地域がNATO(北大西洋条約機構)に入らないという条件付きで、独立を認めた。
ウクライナは、2014年の「マイダン」のクーデターで、ロシアと対立する資産家ポロシェンコが、大統領ヤヌコヴィッチをロシアに追放し、親米政権を創る。ここからウクライナ問題が起こる。ロシアは東部に軍隊を送り、その結果、ウクライナの中にロシアに近いルガンスク共和国とドネツク共和国が生まれたが、これをウクライナも西側も国として承認していない。一方クリミアは、ロシアに編入された。もちろんこれも承認されてはいないが。
ウクライナにとって不幸なことは、エネルギー資源を含め最も豊かなのが、この東部であることである。だからウクライナはこれらの地域の分離独立を認めることはできない。こうした問題は、何もウクライナだけではない。ボスニア・ヘルツェゴビナの北にあるスルプスカヤ共和国も同じような状態が続き、ユーゴでの紛争を長期化させた。またスペインのカタロニア独立を求める運動を、スペイン政府が認めていないという問題もある。要するに近代国民国家の独立には、認められるものと認められないものがあるということだ。
ここに当然、大国が介入する余地がある。そもそもウクライナはヨーロッパに属するのだが、EUには軍事組織がない。あるのはNATOである。ソ連時代はワルシャワ条約機構があり、それが東欧を束ねていたのだが、今ではNATOが束ねている。しかし、ウクライナがこれに入るとなると、ロシアはNATOに包囲されることになる。
EUは独自の軍事組織を持つということを課題にしていたのだが、実際にはNATOの傘下に入ることになる。これがウクライナ問題をこじらせている最大の原因である。EUに参加すると、結果的にNATOに入ることになり、ロシアと敵対することになるからだ。もちろんEU独自の軍事組織をもてば、ロシアの近隣にアメリカ中心のNATOが軍事組織を持つことはない。しかし、EUの中でそうした軍事組織をアメリカが認めるはずはない。この問題がウクライナ問題を袋小路に導いているといえる。
・・・・・・・・明日に続く・・・・・
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https://youtu.be/BMSMsxRktyk ==順調だったソ連が滅亡した本当の理由(feat.共産主義) ==
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