ⰧⰊⰧ Intermiussion/幕間 =狂(きょう)の出来事=平成4年10月29日<ⰧⰊⰧ
☆★ ギネス認定の記録であろう、ペルー中部でマグニチュード8.5の地震、約1万人が死亡(1746年)。☆★ 船橋の競馬場にサラブレッドならぬオートバイが疾走(1950年)。これがオートレースの始まりだったりする。☆★ 家庭用ビデオの規格としてUマチックが発表される(1969年)。だが、何時の間にかVHSとベータマックスの血で血を洗う戦争で忘れ去られてしまうことに。
本日記載附録(ブログ)
表向きは生物統計学の上席研究員にして大学教授。しかし、その裏では体系的な認識のルーツと本質を探求/宗教、写本、はては「百鬼夜行絵巻」など
曰く、日本の進化学者/国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構農業環境変動研究センター環境情報基盤研究領域 統計モデル解析ユニット専門員にして、農学博士(東京大学)
【この企画はWebナショジオ】を基調に編纂(文責 & イラスト・資料編纂=涯 如水)
統計学を駆使してさまざまな対象に切り込む“系統樹ハンター”=系統樹思考の世界=
三中信宏(10/13) >◇◆ 第四回 実証できない進化論ははたして科学なのか =2/2= ◆◇
・・・・地球のある時期に出現したある生物群がどういうふうに分岐して、種分化して、発展していったのかを明らかにすること…ある特定の生物群がどんなヒストリーをもってきたのかを、現存のデータから逆に推論するっていう、そういうサイエンス…
「それは恐竜だけじゃなくて、一般の系統樹の推定、言語だって写本だってそうです。一般則、法則を導くんじゃなくて、ある特定のオブジェクトがどんな歴史をたどったのか知りたいと。そのときの方法論は、生物学に限らず幾つかの学問分野で共通にあって、それを我々は使い続けてきたんだと。あるオブジェクトのたどった歴史を現存のデータから調べるのは、常に同じサイエンスの共通性を持ってるはずなんですね」
現存のデータから、歴史を知りたい。そういったサイエンス。
収集したデータをもとに、様々な統計的手法を使って、一番もっともらしい、系統関係を割り出す。恐竜の場合は化石の形態。分子生物学的な方法が可能な現生の生物の場合は、核DNAやミトコンドリアDNAの塩基配列、あるいはタンパク質のアミノ酸配列。それらを比較することで、系統関係を推定する。
この時の思考法は、物理学や化学分野で、実験して理論構築し、一般的な法則を導くのとは違っているように思う。よく言われる演繹や帰納とは違った、方法である。
三中さんは、「アブダクション」という。
人によっては「アブダクション」は、「宇宙人に誘拐されること」かもしれないので、ややこしい。しかし、ここでは、科学的な思考法の一つとして挙げられている。
「もともとは、19世紀なかば、アメリカの論理学者・数学者、チャールズ・サンダース・パースが言い出したことですね。論理的な推論の様式として、演繹と帰納と、もう一つアブダクションというのがあると指摘したわけです。データから最善の仮説へとジャンプすることがアブダクションなんだと。要するに宇宙人がこう、人をさらうみたいに」
パースは、ここでは論理学者・数学者としたが、日本ではプラグマティズムの創始者として知られているかもしれない。彼は、実に博覧強記な人物であったらしく、論理学・数学のほかにも、記号論にも通じ、デジタル・コンピュータのひとつの基礎ともいえる電子的なスイッチによる論理演算を考案した。
さて、パースが言うアブダクションだが、データから最善の仮説へのジャンプ、と言われても、今ひとつよく分からない。
「たしかに、当時、最善の仮説へどうジャンプすればいいのか分かりませんから、あまり使える方法論ではなかったんですね。結局、1990年代の人工知能研究で、ロボットにどういうふうにものを考えさせるのかというところで、初めてアブダクションの様式化、定式化が出てきたんです。要するに、データがあり、選択肢が幾つかあった時、どの選択肢がベストか決めるのをアブダクションと呼ぼうと。数ある競争相手、競合仮説の中から真偽に関係なくベストのものを選択するという、そんなふうな考え方です」
ここまで来ると、アブダクションが、系統の推定と親和性が高いことは自明だろう。
たとえば、恐竜の化石なら、骨の形態的特徴から、これらの生き物が、どのように分岐してきたのか。とりあえず今持っているデータと整合する最適のものを選び出す方法。それは、統計学を駆使するだけでなく、数学的な裏付けも必要な分野であって、20世紀の後半にまさに発展したものなのである。
次回は“第5回 文系理系の壁を超えた新しい科学がやってくる!”に続く
=== 参考資料: 進化論(2/5) ===
進化論の歴史 ; 18世紀-19世紀前半
ルネ・デカルトの機械論は宇宙を機械のようなものと見なす科学革命を促した。しかしゴットフリート・ライプニッツやヨハン・ゴットフリート・ヘルダーのような同時代の進化思想家は進化を基本的に精神的な過程だと見なした。1751年にピエール・ルイ・モーペルテュイはより唯物論的な方向へ傾いた。
彼は繁殖と世代交代の間に起きる自然の修正について書いた。これは後の自然選択に近い。18世紀後半のフランスの自然哲学者ビュフォンはいわゆる「種」は原型から分離し環境要因によって際だった特徴を持ったものだと考えた。彼はライオン、ヒョウ、トラ、飼い猫が祖先を共有するかも知れず、200種のほ乳類が38の祖先に由来すると論じた。
彼はその祖先は自然発生し、内的要因によって進化の方向が制限されていると考えた。ジェームズ・バーネットは人が環境要因によって霊長類から誕生したのではないかと考えた。チャールズ・ダーウィンの祖父エラズマス・ダーウィンは1796年の著書『ズーノミア』で全ての温血動物は一つの生きた糸に由来すると書いた。
1802年にはすべての生物は粘土から発生した有機物に由来すると述べた。また性選択に通じる概念にも言及していた。
ジョルジュ・キュビエは1796年に現生のゾウと化石のゾウの違いを発表した。彼はマストドンとマンモスが現生のいかなる生物とも異なると結論し、絶滅に関する長い議論に終止符を打った。1788年にはジェームズ・ハットンが非常に長い間、連続的に働く漸進的な地質プロセスを詳述した。1811年にはキュビエとアレクサンドル・ブロンニャールはそれぞれパリ周辺の地質について研究を発表し、地球の先史時代研究の先駆けとなった。
1840年代までに地球の膨大な地質学的時間は大まかに明らかになっていた。
1841年にジョン・フィリップスは主な動物相に基づいて古生代、中生代、新生代に区分した。このような新たな視点はセジウィックやウィリアム・バックランドのようなイギリスの保守的な地質学者からも受け入れられた。しかしキュビエは生命の発展の歴史を度重なる天変地異による生物相の入れ替えと見て天変地異説を唱えた。さらにその支持者は天変地異に続く新たな創造によると考えた。
バックランドのようなイギリスの地質学者の中の自然神学の支持者はキュビエの激変説と聖書の洪水のエピソードをむすびつけようとした。1830年から33年にかけてチャールズ・ライエルは『地質学原理』を著し、激変説の代替理論として斉一説を提唱した。ライエルは実際の地層は天変地異よりも、現在観察されているような穏やかな変化が非常に長い時間積み重なって起きたと考える方が上手く説明できると論じた。
ライエルは進化に反対したが、彼の斉一説と膨大な地球の年齢という概念はチャールズ・ダーウィンら以降の進化思想家に強く影響した。
ラマルクの進化論
ジャン=バティスト・ラマルクは、最初は生物が進化するという考えを認めていなかったが、無脊椎動物の分類の研究を進めるうち、19世紀になって、生物は何度も物質から自然発生によって生じると考え、著書『動物哲学』で進化の学説を発表した。
ラマルクは進化のしくみについて、使用・不使用によって器官は発達もしくは退化し、そういった獲得形質が遺伝する。従って非常に長い時間を経たならば、それは生物の構造を変化させる、つまり進化すると考えた。ラマルクのこの説を用不用説と呼ぶが、生物にとって適切な形質が進化するという意味では適応説と考えてよい。
彼は、進化は常に単純な生物から複雑な生物へと発展していくような、一定の方向をもつ必然的で目的論的な過程だと考えた。
複雑な生物は大昔に発生し、単純な生物は最近に発生した途中の段階のもので、やがて複雑な生物に変化していくと考えた。生前彼の唱える進化の機構には賛同が得られなかったが、ダーウィンはパンジェネシスという考えで獲得形質の遺伝を自説に取り込もうしたし、ネオラマルキストを自称する科学者達は、RNAからDNAの逆転写にその科学的な説明を与えようとすることが知られている。
現在ではその説に否定的な研究者が多いものの、ラマルクの仮説は科学的手続きによって検証される最初の進化論であり、そのことに関して異論をもたれることはない。 ・・・・・・明日に続く
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