○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○
○ 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= ○
◇◆ 第5回 風の谷の湖 =3/3= ◇◆
湖水はなぜ混じり合わないのか
どうしてこんなことになるのか。 低温で乾燥し、かつ風が強いこの場所では、湖の氷は解けて液体になるよりもむしろ、どんどん昇華して気体になっていく。 すると、氷の中にわずかながらに含まれている塩分が水中を沈降し、塩分濃度の高い重い水が湖の深い部分に徐々に蓄積されていく。
重い水の上に軽い水が乗っかるようになると、まるで二重底のような状態である。 大気に触れることがなくなった重い水は、有機物の分解とともに酸素を失い、還元環境になる。 一見するとただただ連続的につながって見える水だけれど、実はとても不連続で、あるところでポンッと環境がジャンプする。 なんだかいつも驚きとともに騙されたような不思議な気持ちになる。そしてこれが水中環境の面白いところの一つだと私は思う。
ところが、もう一つの湖盆である水深160mの水はまったく違う様子だった。 表層0mから湖底160mまで、水温0℃付近かつ酸素濃度の高い水がただひたすら同じようにずーっと続いていたのだ。 つまり、ここの水は表面から湖底までが鉛直的に混じり合っていることを意味している。
実はこちらの湖盆には、現在大きな氷河が接していて、水中に氷河が落ち込んでいる。 この氷河から酸素をたっぷり含んだ融解水が少ないながらも流れ込み、湖水がかきまわされる。そのため、深い部分に重い水が溜まることがないのだ。
アンターセー湖の正確な湖盆マッピングはまだされていないのだが、2つの湖盆の間には水深50~60mと浅くなったエリアがある。これが障壁のようになって、双方の深い部分の水は混じり合うことがない。こうやって、対照的な二つの環境ができあがったわけだ。
ちなみにこれは、このたび水中環境の鉛直プロファイルデータを測定し、周辺環境と地形と湖盆形状を見た上で、私が組み立てたシナリオである。 極めて地道な行為ばかりではあるがやはり、ジッと黙って彼のプロフィールに耳を傾けて、ちょっとずつちょっとずつ、彼のことを知っていくのだ。
潜水用の穴を開ける
調査開始から4日目、今度は湖岸に近くて浅いポイントにアイスドリルで穴を開けた。 水深を測定すると20m。私たちは、この穴から潜水するのである。ただ、直径25cmでは人が入ることはできないので、どうするかというと、“融解する”。水を熱して蒸気にし、コイル状にした金属パイプ内を循環させる装置を直径25cmの穴に入れて、氷を解かすことによって穴を広げる。
辺り一面の分厚い氷の中に、透き通った深い青色の水が揺らめく穴が、少しずつ大きくなっていく過程はなんだか幻想的だった。
このスチーマーで湖氷を解かし始めてから4日目、穴の大きさは直径1.5mを超えた。 水面は湖氷の表面より35cmほど低くなっているので、解けずに残っている厚さ35cmの表面の氷をチェンソーで切って取り除いた。 そうしてついに潜水調査用の“ダイブホール”が完成した。
いつも調査機材が水の色に溶け込み吸い込まれるように消えていくのと同じように、この神秘的な青い水の中に私ももうすぐ入っていくのだ。 そう思うと、なんだかドキドキが止まらなかった。
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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