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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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現代の探検家《田邊優貴子》 =13=

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○◎ Great and Grand Japanese_Explorer  ◎○

○ 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= ○

◇◆ 第5回 風の谷の湖 =2/3= ◇◆

貫通

 ドリルビットは5つ目に突入し、しばらく掘ったところで穴から水が吹き出してきた。 湖氷を掘りぬくことができたのだ。厚さは4m15cm! 南極は夏だというのに。

 私がよく知っている昭和基地周辺では、夏になると氷が解けてなくなる湖がほとんど。 ここの湖氷は4mと事前に聞いてはいたけれど、実際に自分で穴を開けてみると、その厚さが初めて実感できた。

 半日かけてアンターセー湖に直径25cm × 厚さ4m15cmの穴を開けたのち、そこの水深を測定した。先端におもりをつけたメジャーをスルスルと水の中に降ろしていく。 途中まで見えていたおもりはゆっくりと水の青色に溶け込み、消えていった。 私はこの、水の中に静かに機材が消えていくのを見るのがとても好きだ。 いつも、なんだか憧れと羨望のような気持ちで、機材が吸い込まれていく瞬間をじっと見つめている。

 おもりを降ろすこと5分、持っていたメジャーがふわっと軽くなる瞬間が訪れた。 おもりが湖底に到達したのだ。 メジャーのメモリを見ると、水深100mを示していた。

 その日の午後、湖の違うポイントへもう一つの穴を開けにいった。 午前のポイントよりも氷が少し薄かったが、途中から水っぽいシャーベット状の氷になったので、もっと時間がかかった。 穴を開け終えて水深を測定すると、こちらはなんと深さ160m! この透明な水がここから下に160mも続いているのだ。

 アンターセー湖には2つの湖盆がある。 湖盆というのは、湖の底が深くなっている部分のことで、1つ目が午前中に穴を開けた湖盆で水深100m、2つ目が午後に穴を開けた水深160mの湖盆だ。

 南極で露岩域上にあって水深100mを超える湖というのは、実はかなり稀だ。 南極の露岩域の湖の全てが調査されているわけではないのだが、恐らくその数は片手の指で数えられるくらいだろう。 南極のほとんどの湖は氷河に削られてできあがった氷河湖なので、水深はそれほど深くなく、湖盆はのっぺりとした形をしている。ところが、アンターセー湖は氷河で削れたのはもちろんだが、それだけではなく地殻の活動によりできあがった湖(構造湖)でもあるので、ドーンと深い湖盆になっているのだ。

 翌日、水の環境の指標となるさまざまな項目(光・水温・pH・塩分濃度・溶存酸素・酸化還元電位・植物プランクトン量)を測定しに行った。 これらを測定することで、水面から湖底にかけて水中がどんな状態になっているか、つまり湖のプロフィールが分かる。 こうして彼の自己紹介に耳を傾け、彼がどんな性格なのかをつかむのである。

 水深100mの一つ目の湖盆では、水深48mまで水温は一様に0℃付近で淡水。 ところが、そこからたったの1m深くなると、それまで一様だった環境が急に崩れる。 水温が4℃まで跳ね上がり、そのまま水深65mまでつづくのだ。 さらに、水深70m付近で5℃まで上がり、同時に急激に水中の酸素濃度が減っていく。 水深75mでは、酸素濃度はもはやほぼゼロ。 ここより深い部分は酸素のない還元環境になっていて、この還元層とその上の酸化層は半永久的に混じり合うことがない。

 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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