〇◎ “命のことを知らずして、命の大切さは理解できない” ◎〇
= 探検的調査を実践する “探検昆虫学者” 西田賢司 =
【この企画はWebナショジオ_“「コスタリカ 昆虫中心生活」” に追記・補講し、転載した】
☠ 中米コスタリカで新種の昆虫を見つけまくる男! 「バックマン」 ☠
曰く 『昆虫は、僕たちに自然の変化を教えてくれる一番身近な存在です』 12p 白黄
◇◆ =040= 動かないセミに何が起きた? ◆◇
夏のイベントで信州の菅平を訪れていた時、いつもお世話になっているペンションふくながの福永さんが、菅平高原実験センターに行ってみては?と勧めてくれた。
センターは、筑波大学の教育研究施設で、ペンションから車で15分ほどのところにあるという。そういえば、センターで菌類を研究している出川洋介先生には、コスタリカからメールで変形菌について教えてもらったりしたことがある。さっそくおじゃましてみることにした。
突然の訪問にもかかわらず、出川先生ほか菌学研究室のみなさんは温かく迎えてくれ、一緒に森の中の滝まで採集調査に出かけることになった。 「エゾハルゼミにつく新種のハエカビがいるんです!」と、出川先生が教えてくれた。
ハエカビというのは主に昆虫などの動物に寄生する菌類のグループで、そのなかにセミに寄生する珍しい菌がいるそうだ。動かないセミがいたらそこに寄生している可能性が高いという。
出川先生はこの菌を研究中で、動かないエゾハルゼミのサンプルをもっと見つけたいようだった。面白いので、ぼくもそれを探しながら歩くことにした。
道中では、先生や学生のみなさんがいろんな菌類を紹介してくれた。オオバコの葉っぱの裏の「花畑」のようなオオバコさび病菌、冬虫夏草の一種であるサナギタケ、粘菌のツノホコリなどなど。形といい生態といい、どれも独特なものばかりだ。
教えてもらって、実際のものを見れば見るほど、菌類の世界の奥深さにどんどん興味がわいてくる。
ところでセミのハエカビはと言うと、滝への道中では見つからなかったのだが、あとでセンターそばの樹木園でそれらしきセミを見つけた。
生きているのか死んでいるのかわからない。ゆっくりと手を伸ばし、指先で軽く押さえてみる。それは、木の幹にとまったまま、動かなくなったエゾハルゼミだった。
このハエカビは、春から初夏に羽化したエゾハルゼミが生きている間に、セミの体に取りついて殺してしまう。そのカビの胞子は休眠したまま、次の年になって生え広がってくることもあるという。
普段、ぼくが昆虫の多様な姿や生き方に魅せられてコスタリカの森を歩き回っているのと同じように、菌類にも驚くべき多様性がある。思わずこの世界に吸い込まれそうになった。
=参考資料・文献=
エゾハルゼミ
エゾハルゼミ(蝦夷春蟬、Terpnosia nigricosta)は、カネムシ目(半翅目)セミ科ハルゼミ属に分類されるセミの一種。特徴的な鳴き声を持つ小型のセミで、ブナ林などの落葉広葉樹林に生息する。 体長はオス31-33mm、メス22-24mmほど。体色は全体的に黄褐色だが、頭部・胸部はやや緑色を帯び、黒い線や斑紋の模様がある。 同属のハルゼミより色が淡く、ハルゼミというよりむしろヒグラシを小さくしたような外見をしている。
冷涼な地域の、ブナなどで構成された落葉広葉樹林に生息する。成虫はハルゼミより少し遅く、5月下旬から7月にかけて発生する。 オスの鳴き声は「ミョーキン・ミョーキン・ケケケケ…」あるいは「オーギィー・オーギィー・オーギィーォ・キギギギギギギ」と聞こえる。 アイヌ語では「ヤキ」と呼ばれるが、これは鳴き声からきた名前である。
北海道・本州・四国・九州、日本以外では中国にも分布する。 和名に「エゾ」(蝦夷)とあるが、北海道以外にも分布している。 日本産のセミとしては北方系で、西日本の分布は標高の高い山地に限られる。 また、西日本の生息地ではコエゾゼミTibicen bihamatus と同所的に見られる。 北海道では多くの地域で最もメジャーなセミで、最盛期には森林や低山帯で無数の鳴き声が聞かれる。
またこのセミは本州以南でいうところのヒグラシのようなセミで、純粋な森林性であるため、市街地で鳴き声が聞かれることは少ない。 北海道ではエゾハルゼミのほかにエゾゼミやコエゾゼミも生息するが、これらのセミもやはり森林性のため、北海道の市街地では一年を通じてセミの鳴き声はほとんど聞こえない。 なお、札幌市の郊外など一部の地域では市街地でもコエゾゼミが年々少しずつ増えているという報告もある。
・・・・・つづく
◇◆ エゾハルゼミ ◆◇
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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