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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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未知なる深海へ 高井 研 =081=

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〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇

= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =

☠  青春を深海に掛けて=高井研=  ☠

ᴂ 第5話  地球微生物学よこんにちは ᴂ

◇◆  人生最大の恐怖体験 =1/3=  ◆◇

2回目の留学でアメリカ・ワシントン州にある、海から遠く離れた研究所で過ごし、「地球微生物学」という新しい研究分野の虜になった高井研さん。でも、そこで人生最大の恐怖体験に遭遇するのでした・・・・・・。

 結局、パシフィックノースウエスト国立研究所でのボクのスパイ活動武者修行は、「2000年10月にJAMSTEC海底下微生物研究グループを立ち上げるから帰国せよ。異論は認めない」という再びのギョーム命令により終わりを告げる事になった。

この2回目のアメリカ滞在中で、どうしても忘れられないエピソードが2つある。それだけを書き記して、新章「JAMSTECの拳―天帝編―」に移ろう。そうしよう。

一つはボクの母親が砂漠の田舎街、リッチランドに遊びにやってきたときのことだった。たぶん1999年の晩秋だったと記憶している。砂漠の田舎街リッチランドは2、3日滞在してしまうともはや見るべきものがなくなってしまう程何もないところだったので、長期滞在型の来客があった場合、3時間ほどドライブしてシアトル近辺に出かけるのが定番だった。

その時もいったんシアトルに行った後、ワシントン州フェリーを使ってポートタウンゼントやポートエンジェルスを経由して、カナダのビクトリアへ渡り、再びワシントン州フェリーで、アメリカのフライデーハーバー(2008年ノーベル化学賞を受賞した下村脩博士がまさにオワンクラゲを研究していた研究所がある場所)、アナコーテスを巡ってシアトルに戻ってくるという旅程を立てた。

最初のシアトル留学時代からその辺のコースは何度も訪れていたので、ボクにはそれほどの目新しさはないはずだった。母親を喜ばせるための旅行で、たまには風化した玄武岩と砂とコロコロ草以外の緑溢れる自然を楽しもうというぐらいの気持ちだったんだ。

なのに、ビクトリアからフライデーハーバーに向かうフェリーの甲板で一人、宮城県の松島によく似た海と島の風景を見て佇んでいたボクは、溢れる涙がほほを流れていることに気がついてびっくりした。

なぜかわからないけれど、ボクが今までに感じた事がないぐらい海が美しいと思ったんだ。その美しさを見た時、ボクは何かすごく懐かしい気持ちと悔しい気持ちが入り交じって、抑えられない感情の高まりを感じていたんだ。それが自分でもびっくりした溢れる涙の理由だった。

「安西先生・・・、海の研究がしたいです」

= 地球外生命は土星の月にきっといる。エンセラダスの海に (1/3) =

= 深海生物を研究する高井研は、いま宇宙を見ている。衛星エンセラダスに生命がいるのではないかと考えているからだ。その答えを出すために、いま探査機を送る計画を企てている。これは生命科学最大の難問に迫る 戦となるが、決して夢物語ではない。わたしたちが生きているうちに結果を見ることができる、実現可能なプロジェクトなのだ。 =

 

海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、海洋生態系の調査から地球温暖化による気候変動シミュレーションまで、海洋に関する幅広い研究開発を行う世界有数の海洋研究機関だ。このJAMSTECでプログラムディレクターを務める地球生物学者の高井研は、これまで有人潜水艇「しんかい6500」を用いた深海探査などを通して、地球最古の生態系の生き残りである微生物生態系「ハイパースライム」の発見や、40億年前の海において生命の誕生につながったと考えられる熱水活動の仮説提唱と裏付けなど、深海生物や地球化学に関する数多くの研究を行ってきた。

122℃という現在知られているなかで最も高い生育温度記録をもつ微生物は、2008年に高井が発見したものだ。これらの研究を通して、高井は新たな科学の未来を拓く「チェンジメーカー」として評価され、今年CHANGEMAKERS OF THE YEAR 2012を受賞した。

「この地球上に生命が存在できない場所はほとんどない、という生命のたくましさを知れば、当然ほかの場所、つまり宇宙にもいるだろうと思うようになるんです」

高温、高圧など、過酷な状況で生育する極限環境微生物を研究してきた高井にとって、これまでの研究に裏付けられた直観と言えるだろう。高井はさらに続ける。

「確かに、誕生した生命が進化によってDNAやRNA、タンパク質を中心とした複雑なシステムをつくり上げ、40億年も続いているという点において、地球生命はとてもユニークで奇跡的です。しかし生命の本質は、どんな材料でできているかという部分ではなく、現象にあるはずです」

シンプルに言えば生命の本質とは、ある容れ物(細胞)の中で、物質からエネルギーを取り出し(代謝)、そのシステムを継承していく(遺伝)、という現象そのものにある。地球上でなくても、ある条件が揃えば、これらの性質を備えた生命は誕生するはずだ。こうした考えのもとで、生命の起源や生命現象について、生命科学のみならず、天文学や惑星科学、地球化学など、生命が誕生し持続するための環境や背景までをとらえて考える学問、それが「宇宙生物学」だ。その最大の目標は、まさに「宇宙で生命を見つけ出す」ことにある。宇宙生物学を机上の空論から実証科学のステージへと押し上げるからだ。そして何より、科学者として最高に面白い挑戦だ。

・・・・・・・・つづく・・・・・・・

動画 : 下北八戸沖石炭層生命圏掘削 サンプル採取に成功

  

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