〇◎ “私が知りたいのは、地球の生命の限界です” ◎〇
= 海洋研究開発機構(JAMSTEC)及びナショナルジオグラフィック記載文より転載・補講 =
☠ 青春を深海に掛けて=高井研= ☠
ᴂ 特別番外編 「しんかい6500」、震源域に潜る ᴂ
◇◆ その1 ワタクシの中に「断固たる決意」ができたのです(3/3) ◆◇
「本当に苦しい時こそ現実を超越したナニモノカにココロを救われる」。 それはある意味「信仰」にも繋がる真実だと思います。 アニメの「フランダースの犬」のネロにとって、それはルーベンスであり、ルーベンスの「キリストの昇架」だったのではないでしょうか。 地震直後の不安と落ち込みで苦しんでいたワタクシの場合、それが「地震を通じた地球と生命の営み」に思いを馳せることだったのかもしれません。
しかしそれでもやはり「今、日本海溝の深海の調査がしたいです」と力強く主張するのはためらわれました。 そんなとき仙台で地震に遭遇されたSF作家、瀬名秀明さんのメッセージを見ました。 丸善とジュンク堂書店の公式サイトにある瀬名秀明さんの「文系人間のための<科学本棚 第12回目前編>」というコラムに掲載されていた文章でした。
そのなかで瀬名さんは・・・・・・・・(引用始まり) 「東日本大震災の被害をニュース映像で目の当たりにして、いま多くの科学者は感ずるところがあるでしょう。 科学に従事しながら人の命さえ救えないのだとおのれを苛むこともあるでしょう。まずはいまの気持ちを忘れずにいてほしいと願います。 その上であえていわせて下さい。震災を目の当たりにしたからこそ、本当の科学者である皆様にできることは、今後もおのれの研究を続け、深めることなのだと。
どんなに大きな災害に直面しようが、これからも大自然の現象に「面白い」と言い切れる覚悟を持って下さい。 それが自然科学者の業であるはずです。 誰よりも面白がって下さい。 それが自然科学者として生きて死ぬことなのです。 科学者というのは、そうやって生きていいよと社会から認知された幸福な人々なのです。 その幸せを存分に享受して下さい。
地震に限らず、すべての自然科学者にそういいたい。 そのかわり中途半端な面白がりようでは承知しません。 どうか今後は身が切れるくらいとことんまで面白がって、これからもにっこり笑って私たちに語って下さい。 そして私たちを面白がらせて下さい。 心からの、お願いです。」 ・・・・・・・・(引用終わり) と書いておられました。
ワタクシは震えました。 覚悟は決まりました。 ワタクシの中に「断固たる決意」ができたのです。 とことん「超巨大地震が暗黒の生態系に与えた影響」を面白がってやろうと。 人やハード面、あらゆるJAMSTEC、いや、日本の持てる科学技術や研究能力を結集して超巨大地震の全貌を調査・研究すべきと主張することに全くためらいがなくなりました。
おそらく多くの研究者達も、ワタクシと同じような葛藤に苦しみながらもそれをおのおのが乗り越え、同じような自分なりの結論に辿り着いたに違いないと思います。 そしてJAMSTECを中心に日本中の研究者と協力して、「地震によって日本海溝の海底下、海底、そして海水中にもたらされた環境変動と生態系への影響」を調査・研究する計画が始まりました。
この調査の結果の一部は、公開され、JAMSTECのホームページに掲載されています。 例えばコチラ(JAMSTEC プレスリース)= http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20110428/ =。 また2011年7月30日から8月14日までJAMSTECの研究調査船「よこすか」と有人潜水船「しんかい6500」による調査の速報も、調査終了後プレスリリース(下記のVTR参照)を行い、テレビやラジオ、新聞といったメディアで大きく取り上げられました。
=光の届かぬ海底世界に、」人類が求める宝が眠る=
深海世界に生物の多様性の手がかりが隠されている(2/2)
研究を通じて、深海生物でも表層の海流に乗って遠くまで分散し、すむ場所を探して旅をしている生態がわかってきました。 事実、水深約1,000メートルに生息する深海生物の幼生が、表層で採取したプランクトンに混じっていることも知られています。ですが、そこからどのように深い海へ戻っていくのかは明らかになっていません。また、昼間は深海に生息していても、夜間になると表層域へと300メートルほど移動する生物もいます。
――そのほか、深海生物が持つ特有の生態はありますか?
渡部 例えば、深海底の「熱水噴出孔」に密集する深海生物には、その場所を特徴付ける化学物質を検知する受容体(センサー)が備わっていると考えられています。深海生物はセンサーによって熱水に含まれるメタンや硫化水素などを検知し、その場所に集まってくるようです。ですが、具体的な検知のメカニズムは、まだ解明されていません。
残念ながら、深海生物にはまだまだ謎が多く、そのほとんどが解明されていません。陸上の動物が移動するような横方向に加え、深海生物には深度という縦方向の移動も考えられます。そうした3次元の生態については、陸上の2次元で生活する私たちには、なかなか想像がつかない部分が多いということが原因かもしれません。
「しんかい6500」乗船。自分の目で深海を見て得られた発見(1/2)
――「しんかい6500」に乗船しての研究活動は、どのように行われていますか?
渡部 初めてしんかい6500に乗船したのは2006年で、南太平洋のパプアニューギニアのビスマルク湾にある、水深2,500メートルの熱水噴出域を調査しました。しんかい6500に乗船できるのは3名ですが、そのうちパイロットが2名、研究者は1名です。時間が限られる潜航中にひとつでも多くの成果を持ち帰るため、研究者はすべてをひとりで判断し、パイロットの協力を仰ぎます。
――初めて深海の景色を自分の目で見て、どんな思いを抱きましたか?
渡部 乗船時、コックピットのハッチが閉められて外の音が遮断されたときは緊張しました。それでも、海底に着くと、深海のさまざまなものが見えた高揚感で、緊張はどこかに吹き飛んでいました。研究者は生きた生物を採取しますが、実際に見た海底には死んでしまった貝殻が無数に転がっていて、生物の一生を垣間見た気がしました。
しんかい6500の覗き窓から見る景色は、想像していたより広く、それまで自分が見てきた映像は、カメラが切り取った一部分なんだと実感しました。また、しんかい6500の中には空調設備がないため、潜水船の内部は周りの海水と同じくらいの温度(深海の水温は2〜4度)になります。そのため、「深海生物たちは、こんな冷たいところに生きているんだ」と実感したほか、体が痒いのか、しきりにかくような仕草をする生物を見て、「人間でもこんな仕草をするなあ」と思ったのを覚えています。
・・・・・・・・つづく・・・・・・・
動画 : 東北地方太平洋沖地震震源海域に大きな亀裂を確認
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