○◎ 19世紀末 探検家ナンセンは大胆な企てに乗り出した =フラム号の軌跡= ◎○
= Webナショジオ_“北極探検 この物語”に転載・補講 & 世界のスーパーアルピニスト =
☠ 流氷の流れを利用して北極点への到達する冒険を開始_氷の世界の1,000日_☠
◇◆ 探検・行動的学究から人道支援活動へ ◆◇
ナンセンは北極点に到達できなかったが、そんなことは問題でなかった。 当時、スウェーデンの支配下に置かれていたノルウェーの人々は国民的な英雄を待ち望んでいた。 そんな時、ナンセンは独自の方法と強い意志をもって、極点の間近まで迫ったのだ。 幸運が味方した面もあるが、隊員全員が生還を果たせたのは、彼の洞察力と正確な判断力の賜物だった。
この探検を通じて、北極海の潮流に関する仮説を証明したほか、ナンセンは北極地方について重要な発見を成し遂げた。 北極地方は、つねに移動し続ける流氷に覆われた深海で、陸地がまったくないという事実だ。 つまり北極地方は海洋だったのである。 この学術的確証が後年の北西航路の開拓や北海航路のトレースへと探検的な航路開拓競争を強国に強い、数多くの探検家が北極海に挑んでいく動機づけとなる。
当時、北極遠征の伝統的なやり方は、大規模の部隊に頼ってきており、ヨーロッパの技術が敵対的な極圏の気候に移し替えられるという仮定に基づいていた。 長年にわたってこの戦略ではほとんど成功せず、人や船を多く失ってきた。 これとは対照的にナンセンの採った、小さく訓練された隊員と、イヌイットやサーミ人が使う橇を旅に利用するという方法が、一人の隊員も失わず、大きな失敗もなく遠征を完遂させることに繋がった。 世界を驚愕させた。
北極点に達するという目標を達成することはできなかったが、ナンセンの遠征は地理と科学の大きな発見を成し遂げた。 イギリス王立地理学会会長のクレメンツ・マーカム卿は、この遠征が「北極の地理の全体的問題を」解決したと宣言した。 北極点は陸地の上にはなく、また恒久的な氷盤の上にもないが、漂流しており予測不能な叢氷の上にあることを証明した。
北極海は深い海盆であり、ユーラシア大陸の北にはそこそこ大きな陸地が無く、隠れた陸地があるとすれば、氷の自由な動きを妨げるであろうことが示された。 ナンセンは、極圏漂流理論を証明した。 さらに地球の自転によって、氷を風の向きに運ぶコリオリ力が存在することも示した。 この発見はナンセンの弟子であるヴァン・ヴァルフリート・エクマンによって発展されることになった。 エクマンは後の時代の指導的海洋学者になっていく。
ちなみに、この遠征の科学的観測計画から、北極海の詳細な海洋学データが初めて得られた。 フラム号の航海の間に集められた科学データから、その後6巻の本が発行され、次の時代を切り開く礎となる。 また、ナンセンはこの遠征を通じて装置や技術の実験を続け、スキー板や橇のデザインを改良し、衣服、テント、調理器具を幾つか発明し、それらによって北極探検の方法に革命を起こした。
ナンセンが戻ってきてから始まった極圏探検の時代で、探検家達は方法や装置についてナンセンの助言を求めるのが普通のことになった。 それでもその助言に従わない者も居り、それが裏目に出た場合もあった。 ハントフォードに拠れば、南極の英雄であるアムンセン、ロバート・スコット、アーネスト・シャクルトンは全てナンセンを信奉する者だった。
偉業を成し遂げたナンセンだが、探検に打ち込む時期はもう終わったと悟ると、極点到達への挑戦をピアリやスコット、同じノルウェー人のアムンセンに譲った(事実、アムンセンはフラム号に乗って南極を目指し、人類初の南極点到達を果した)。 ナンセン自身はその後、海洋学、気象学、外交といった新たな分野へと進んでいく。 政治の世界である。
ノルウェーがスウェーデンから独立を果たした翌年の1906年、ナンセンは初のノルウェー大使として英国に赴任。 その後、妻エヴァが亡くなると、人道支援活動に力を入れるようになる。 第一次世界大戦後には、国際連盟の高官に任命され、戦争捕虜の帰還のために尽力し、トルコやロシアにおける難民問題の解決に取り組んだ。 1922年には、その精力的な活動が評価されて、ノーベル平和賞を受賞する活動に没頭するのであるが・・・・・・・・
【ナンセンの人道支援に没頭する政治家としての活動詳細は拙文“壺公夢想(ブログ)=科学者・政治家 フリチョフ・ナンセン博士=https://thubokou.wordpress.com/2013/12/11/ ”をご参照ください。
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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