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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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現代の探検家《田邊優貴子》 =79=

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○◎ Great and Grand Japanese_Explorer  ◎○

○ 北極・南極、アァー 素敵な地球のはて =田邊優貴子=  ○

= WEB マガジン ポプラビーチ powered by ポプラ社 より転載 =

◇◆ 南極から北極まで旅する鳥 =2/3 = ◇◆

 今晩のメニューは、レタス、トマト、人参、パン、トナカイの肉を塩胡椒で焼いたもの、少し不思議な味のするホウレン草のスープ、フライドポテトだった。 だいたいはノルウェー人と、たまにロシア人が作っているので、日本人からするとかなりボリューム満点で、味は単調で塩辛く感じる。 が、それでもやはり自分たちでつくらなくてもよいことに、とても感謝するのである。

 トナカイの肉でお腹いっぱいになり、いつものようにミルクティーで一服しながら、食堂の窓の外に広がる景色をながめた。 なんて贅沢な眺めだろう。目を細めながら、雲一つ見当たらない快晴の空を見ていると、いても立ってもいられなくなった。 もうすぐ20時だというのに、辺りはまだまだ明るい。 このまま部屋に戻ってしまうのはなんだかとてももったいない。 そこで、私たちは食後の散歩がてら、いつも部屋の窓から見下ろしている海岸を目指すことにしたのだった。

 小屋のわきを通り、かすかな風でホッキョクヒナゲシが揺れる斜面を下りていった。 砂浜になった海岸まで、20分ほど歩いただろうか。 小屋は遠く丘の上に見える。 斜光線に照らされた海がキラキラと輝いていた。

  水べりに立って海を眺めていると、何者かがゆっくりと漂っている。 顔を出して不思議そうにこちらを見ているその生きものに、そっと近寄ってみると、それはアザラシだった。 近づいて来ては潜り、また水面から顔を出しては呼吸をする、という動きを繰り返している。 そしてどこに行くでもなく、その辺をただ悠々と、気持ちよさそう泳いでいた。 ワモンアザラシだろうか、顔をちらりと出すだけなので、なかなか判別ができない。

 アザラシは近くまでやってきて、仰向けになって漂ってみたり、真正面を向いてゆらゆらしてみたり、真っ黒の大きな瞳が時折こちらを向いてみたり。 そんな姿を見ていると自分もゆったりとした気持ちになっていくのを感じた。 いつまで見ていても飽きることはなく、アザラシがいなくなるまで、海岸からただただその姿を見つめていた。

  私のすぐ目の前の水際を、2羽のハマシギがくちばしで砂浜をつつきながら歩いている。 ほんの少しだけ湿った潮風が心地いい。 あのアザラシも、ただこの心地いい風を感じたかったのかもしれない、仰向けになって夏の太陽をただ浴びたかったのかもしれない・・・そんなことを思いながらしばらく砂浜でたたずんでいると、

 「ギギギギギギギギ───」

  後ろのほうから不思議な声が聞こえた。 とっさに振り向くと、少し離れた辺りを散策していた仲間の一人が小さな鳥から猛攻撃を受けていた。 彼の頭上すれすれを3羽の鳥がくるくると旋回しながら猛スピードで飛んでいる。翼はグレー、体は白、頭は黒い帽子をかぶっているかのようで、くちばしは燃えるような赤。 空中で巧みに上下左右、さまざまな方向にターンしながら、ヒラヒラヒラヒラとまるで舞うような飛び方をしている。

  あぁ、ついに間近で会えた。

  そう、それがいつも部屋の窓から双眼鏡でながめていた鳥、キョクアジサシだった。 襲われている仲間には悪いのだが、私はしばらくそのキョクアジサシが空をひらひらと舞う光景に見とれていた。

  なんて美しいのだろう……。

 キョクアジサシが宙で急旋回するたびに、斜めから差し込む太陽で白い体が反射し、青く澄んだ白夜の空を背景にキラキラと輝いていた。 北極に来て、このキョクアジサシが一番会いたい鳥だった。 今、ここ北極はまさに夏を迎えており、このキョクアジサシもちょうど繁殖のシーズンで、ここにやって来ているのだ。

 初めてキョクアジサシという鳥の存在を知ったのは、私が初めて南極に行く約1年半前だったろうか。 そして、その話を聞いて心から驚き、心から感動したのを覚えている。 このキョクアジサシ、北極で繁殖するものは北半球が夏の間に北極に行って子育てをし、子育てを終えると、その後、夏を迎える南半球のずっと果て、なんと南極まで渡りをするというのだ。 そしてまた、南極の夏の終わりとともに、再び北極を目指して渡りをする。

 

 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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