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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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現代の探検家《田邊優貴子》 =61=

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○◎ Great and Grand Japanese_Explorer  ◎○

○ 北極・南極、アァー 素敵な地球のはて =田邊優貴子=  ○

= WEB マガジン ポプラビーチ powered by ポプラ社 より転載 =

◇◆ 果てしない南極海の氷原で = 2/3 = ◇◆

  なんと不思議な光景だろう。 まるでおとぎ話の世界に迷い込んでしまったかのような気分になった。 2種のペンギンがこんな野生の中で、こうやって並んで触れ合うような瞬間があるなんて。 いったいどんな会話をしているのだろうか。 それにしても、並んでみるとより一層、それぞれの大きさの差が目立つ。

 アデリーペンギンは体長約60~70センチ、体重約5キロでわりと小さいが、かたやコウテイペンギンの体長は約110~130センチで、体重は25~40キロもある。 立ち居振る舞いもなんとなく貫禄があり、どっしり悠然としている。 そうこうしているうちに、コウテイペンギンは再び腹這いになり移動し始めた。 すると、またもや不思議なことに、アデリーペンギンたちがその後をついていくように行進し始めたのである。

  途方もなく広がる青と白だけの世界の中、大きなペンギンが先頭に立ち、小人のようなペンギンの群れを率いていくその光景は、もはや時間も空間も越えた幻想的で壮大な物語を見ているようだった。

 そんな光景を見ていると、いつまでも決して飽きることはなく、時間が経つのを忘れてしまう。 まるで旅人同士が互いに情報交換をするかのように見えたあの瞬間は、何を意味するのだろう。何より、こんなにも果てしなく広がる南極海の氷原の、単なる一つの点に過ぎないようなこの場所で、彼らが偶然に出会ったこと、そして、そんな彼らと私たちが偶然にも出会ったこと、すべてが本当に不思議でならなかった。単なる奇跡という言葉だけでは片付けられない何かが、そこにはあるような気がした。 

 私にとって、ホッキョクグマもそうなのだが、ペンギンのような氷の世界に棲む生きものは、ある種、空想の中に存在する動物だった。 だから、そんな空想の世界の動物が、まさに今、自分の目の前に立っていることが信じられなかった。 が、私が生活しているのと同じ時間に、確実に彼らもここで同じように生を営んでいる。

  あまりにも捉えどころのないこの空間の広がりを前にすると、私はただただ感嘆し、ひれ伏すことしかできない。 けれど、今、目の前にいるペンギンたちは悠々と、何の気なしに動きまわり、エサを採り、ただひたすらに生きている。 そのただ生きているということ、それだけのことなのに、私はそこに強く惹きつけられ、憧れとともに圧倒的な生命の輝きを感じるのだ。

  2年前に初めて南極に来た時、無限の世界の広がりというものを強烈に感じた。 それまで、世界のどこかへ旅に出るには飛行機を使って行った。 南極でさえ、飛行機を使えば、天候にもよるだろうが数日ですぐにたどり着ける。

  19歳の夏、私はペルーを旅した。 京都から東京へ出て、成田空港を出発してからアメリカで2回飛行機を乗り継ぎ、途中、機内で6時間ほど待たされたりもしながら、48時間くらいかかって旅の入り口となるペルーの首都リマに到着した。

 最初は、やっと着いたか、という気持ちだったのだが、預けたザックを受け取り空港の外に出た瞬間、戸惑ってしまった。 確かにそれは長い時間ではあったが、すぐ目の前に飛び込んできた熱気溢れる異国の景色と匂いは、あまりにも突然過ぎたのだ。自分が移動してきた距離に、心が完全についてきていないと感じた。

 世界というものは、限りなく広がっている存在であったはずなのに、突然それが頭の中で理解できてしまうほどに現実的で限りあるものになってしまったような気がして、なんだか無性に淋しくなったのを覚えている。 けれど、初めて来た南極は、定着氷縁にたどり着くのでさえ、オーストラリア・フリーマントルから2~3週間。 さらに、ここから時間をかけて分厚い氷を割って進まなければ、大陸まで到達できない。 氷状によっては定着氷縁からさらに2週間以上もかかることがある。

 それまで私の人生の中で、船に乗って海を旅するといえば、長くともせいぜい丸1日程度、フェリーに乗るくらいのものだった。

 フリーマントルから南極大陸沿岸まで、1か月もの時間をかけて移動するなんて、効率的に物事を進めることを考えるならば、今の時代には決してそぐわないことなのだろう。が、やはりそれくらい時間がかかって来てみて、やっと、この土地にやって来たという実感が湧くのだと思った。

  フリーマントルを出港してすぐに、あたりは360度、何一つ見当たらない大海になる。 船はひたすら南へ南へ進むのだが、周囲にはずっと果てしない大海原が、ただただ延々と広がっているのである。 まるで、世界の中にこの船だけがポツンと取り残されてしまったような気分で、ひどく不安で孤独を感じるような、 けれど、この上ない最高の自由を得たような気持ちにもなる。

  周囲に何も見当たらない海をゆくと言っても、ただ同じような海がひたすら続くわけではなく、その海の色、頭の上を吹き抜ける風の匂いと冷たさ、空を飛ぶ海鳥の種類と数、様々なものが日々刻々と変化していく。

 しかも、決してゆったりとした航海ではない。 南極大陸の周りには地球を一周する海流があるため、南極海には常に暴風が吹き荒れている。 そして、南極大陸を取り囲むこの暴風が、まるで障壁のようになっていて、生きものたちが南極大陸へ侵入するのを大きく拒んでいる。 おかげで、氷海に入るまでは船が激しく大きく揺れ続ける。

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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