Quantcast
Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2016

現代の探検家《田邊優貴子》 =47=

$
0
0

○◎ Great and Grand Japanese_Explorer  ◎○

○ 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= ○

◇◆ 第19回 「シーサイドテラス きざはし」  ◇◆

 約10日ぶりに下界に来ています。 下界、というのは日本の南極観測基地である昭和基地のことです。 南極大陸に上陸してからおよそ10日間、私たち生物調査パーティーは4人で野外調査地で過ごしてきましたが、ここ昭和基地にはなんと約100人もの人間がいます(52次越冬隊と我が53次隊とを合わせて)。

 そして、さらに驚くなかれ、この“大都会”ではいわゆるインターネットもできるのです。 おかげで、たまっていた40日分のメールを見ることができてしまい、少しうんざりしています・・・。 ですが、嬉しいこともあるわけで、フリーマントルを出航してから初めて、この「南極なう!」の自分の連載ページに、やっとお目にかかることができました。

 さて、昭和基地についてはまた今度にして、10日間過ごした野外調査地でのことに触れたいと思います。 クリスマスを迎える頃、砕氷船しらせは分厚くて乱れた氷の海に阻まれ、私たちはなかなか野外調査地へ出発できず、ヤキモキしていました。しかし去る12月28日、ついに、ついに南極大陸に上陸することができました。

 南極海の航海中はずっと悪天候が続いていましたが、野外調査出発前日になると空はすっかり晴れ上がり、深夜には氷の海がピンクと紫が混じり合った幻想的な色に染まりました。耳を澄ますと、遠くのほうでアデリーペンギンの群れが鳴く声が聞こえたので、私も鳴き真似をして呼んでみると、彼らはものすごい勢いで近くまで走り寄ってきたのです。

 なんだか心が通じたような瞬間でした。 そして斜めから差す光に照らされたアデリーペンギンたちはとても美しく、私は寒さも忘れてしばらく見とれてしまいました。 あ、しかしこれはもはや昨年の出来事になってしまいましたね。 前節でも触れましたが、私たちが滞在しているのはスカルブスネス露岩域のきざはし浜生物観測小屋。

 通称「Sea Side Terrace きざはし」です。 海(と言っても氷の白い海)がすぐ目の前に広がり、切り立った岩壁の山と大陸氷床が見渡せる素晴らしい場所に建っています。

 小屋のドアを見ると、それはまるで巨大な冷蔵庫のようで、扉を開けると前室には食糧やカセットガスなどが置かれています。さらに前室の奥、もう一つの冷蔵庫扉を開けるとメインルーム。 そこには2段ベッドが二組、テーブル、暖房、冷凍庫があり、とても快適。みんなこの中で毎日、自分たちで食事を作り、衣食住をともにしているのです。 風呂・水道はもちろんないですが、トイレはきわめて開放感溢れる作りになっており、小屋のすぐ目の前にあります。

 この10日間、小屋をベースに毎日のように様々な形・大きさ・水質・立地の湖沼を巡って歩き回りました。 1日に10時間歩くこともしばしばです(もちろん、途中で昼ご飯を食べたりもしている)。

 私はいつも南極での野外調査は、「南極合宿」という部活の一種だと思って臨んでいます。 何せ、これを2カ月近く続けると、望んでいても望んでいなくても、まぁとにかく強制的に肉体改造がなされてしまうからです。 一旦、昭和基地に入りましたが、またすぐに野外調査へ戻ります。 そうすれば、次に野外から昭和基地に戻ってくるのは35日後。 これからどんどん、ワクワクドキドキの湖沼調査を進めて行く日々です。

2012年1月8日 昭和基地にて

 

前節へ移行 : http://blog.goo.ne.jp/bothukemon/e/e2b57233615563d14903644d7f837b78

後節へ移行 : http://blog.goo.ne.jp/bothukemon/e/cd3f15af752339108889228027526db9

----------下記の姉妹ブログ 一度 ご訪問下さい--------------

【壺公夢想;如水総覧】 :http://thubokou.wordpress.com

【浪漫孤鴻;時事自講】 :http://plaza.rakuten.co.jp/bogoda5445/

【疑心暗鬼;如水創作】 :http://bogoda.jugem.jp/

下線色違いの文字をクリックにて詳細説明が表示されます=ウィキペディア=に移行

================================================

  

・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

================================================


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2016

Trending Articles