○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○
○ 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= ○
◇◆ 第14回 デビルズ岬のペンギンロード =3/3= ◇◆
グヮーガーガーガーーー
ピーピーピーピーー
丘を登りきると目の前の視界が急に開け、騒々しい鳴き声とともに、所狭しとジェンツーペンギンの大群がひしめき合っていた。 さらに海のほうへ目をやると、浜辺に向かう斜面にもまた、これでもかと言わんばかりにジェンツーペンギンが密集していた。
「ぎゃあーーーっ!! なんだこれーーー」
そのあまりのペンギンの数の多さに驚いてつい叫んでしまった。 大人のペンギンだけでなく、ヒナもたくさんいて、親ペンギンのお腹に入り込んでいるのもいれば、すでに大きくなってヒナだけでくっつき合っているのもいる。 丘の上の集団はもはやここには収まりきらなくて、端のほうに営巣しているペンギンは今にも押し出されて崖から下に転げ落ちるのではないかと心配になるくらいだ。 彼らは常に、リアルに崖っぷちに立たされているのだ。
資料によると、ここデビルズ岬のジェンツーペンギンは約3000ペア。 つまり、単純計算すると大人が約6000羽、ヒナが約6000羽(1ペア当たりヒナ2羽として)で、合計1万2000羽くらいのジェンツーペンギンがこの狭い空間に集中していることになる。
よく見ると、わずかだがヒゲペンギンのルッカリーもあった。 ジェンツーペンギンの集団から少しだけ離れた、あまり住環境のよくないきつい斜面に大人30羽ほどだけで円形に営巣しているのが一つ。 ジェンツーペンギンの集団に取り囲まれた状態で、肩身が狭そうに大人50羽ほどで営巣しているのが一つ。 どちらも、今にもジェンツーペンギンに侵略されてしまいそうな雰囲気で、心無しかヒゲペンギンは遠慮がちな様子に見えた。
「おぉ、キミたち、すまんねえ・・・決して怪しいもんじゃないよ・・・」
話しかけながら、私はペンギンたちのそばに忍び寄った。 彼らにとって私は完全なる怪しい者である。 みな俄にザワツキ始めた。 私は手早く、足元に堆積した排泄物を採集した。
丘の上から島の南側へ降りる斜面と浜辺との間には雪が積もっており、海とこの丘を行き来するペンギンたちの通勤路となっていた。 “ペンギンロード”である。 雪の上をペンギンたちが何度も何度も通るうちに、その通り道が黒くきれいなラインになっていた。 人間と同じで、誰かが先に通って踏み固めてくれた道のほうが歩きやすいのだろう。 丘の上から見ていると、どのペンギンも、しっかりとその道だけを歩いている。 その姿が、まるで決められたレールの上をゆく人間社会と人生の縮図のように感じられて、なんとも言えないシュールでファンタジーな風景だった。
帰り道、私もそのペンギンロードを通った。 前後2方向のみにそそくさと行き交うペンギンの群れに囲まれて歩いていると、だんだんペンギンたちが黒いスーツを着た人の群れのように見えてきて、なんとも言えない可笑しさと侘しさ、そしてペンギンに対する親近感が湧いてきた。 人間が生きる文明世界から最もかけ離れているこの南極の地で、通勤時の“新橋駅”辺りにまぎれこんだように感じてしまったせいかもしれない。
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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