○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○
○ 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= ○
◇◆ 第10回 雪に閉ざされたバオヤーズ半島 =3/3= ◇◆
55歳くらいのマノロは、このバイヤーズキャンプのメロンハットを建てたメンバーのひとりらしく、「15年以上ここに通っているが、夏にこんなに雪が多かったことは初めて。 いつもならここは地面が剥き出しなんだよ」と教えてくれた。
つまり、湖にはまだ氷が張っているということか。 道理で上空から全く見えなかったわけだ。 ということはこの雪の中を歩いて山を登り、湖に積もる雪をかき分けて、その下に張る氷に穴を開けて調査をしないといけない。 バイヤーズ半島に来ることを計画したときに調べたり聞いたりした限りでは、夏の1カ月~2カ月は湖の氷は完全に解けてなくなるということだった。 なので、私は昭和基地周辺の夏と同じように普通にボートを湖面に浮かべて調査をするスタイルになると想定していたのだ。
湖氷に穴を開けるには、ひとまずアイスドリルが必須になる。 聞いてみると、電動のアイスドリルはあるそうだが、1セットしかないうえに長さ1mのドリルビットしかないとのことだった。 何せ、このエリアで夏に調査をするには普通はアイスドリルなど必要ないわけで、湖氷が張っている時期の調査用の道具立てなんてものはあまり用意されていないのだ。 マノロ率いる微生物研究チームも湖からサンプルを採取するのでアイスドリルを使用している。 ということは、1個しかないアイスドリルをお互いにうまく日程調整をして使わなければならない。 しかも、どうやら場所によっては氷の厚さが1.4mくらいあるらしく、深い部分にどうやって穴を開けるかも大きな問題だ。
やれやれ、これはかなり大変だぞ、計画していた調査を全てはできないね、なんてことを今回の調査パートナーである工藤さんと話し、どうやって調査を進めるか頭の中で考えていた。
「よし、とにかく明日、湖まで行ってみよう」
結局たどり着いた答えはこれだった。 ほぼ同時に同じことを私たちは口にした。
行き当たりばったりのように思われるかもしれないが、決してそうではない。 まだ行ったことも見たこともないのにいくら考えたとしても、実際に自分の足で歩き、現状を確認してみない限り最善策は見つからないのだ。 雪の質や歩いた感触はどうなのか、湖氷の状況はどうなっているのか、湖はどの程度の大きさなのか。 それ次第で、調査にどれくらいの荷物を持ってどれくらいの距離を歩けるかが判断できるし、氷の穴開け作業がどれくらいの仕事量でできるか、1mより深い部分に穴が開けられそうかもなんとなく想像がつく。どの湖を調査すべきかも、表面の氷の色や周りの地形を確認してこそ選定できるのである。
そんなわけで、まずは明日に向けての調査機材のチェックと準備からバイヤーズキャンプの初日は始まった。
夕方には準備が終わり、どんよりとしていた空は急に晴れてきた。 私たちはその日差しにウズウズし、いても立ってもいられず、近くの海岸へ散策に出かけることにした。 そしてこの散策によって、南極半島の活気溢れる生命の躍動感をまざまざと見せつけられることになるのである。
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・・・・・ 南極点到達競争 =壮絶な英国隊・スコットの遭難= ・・・・・・・
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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