○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○
○ 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= ○
◇◆ 第7回 湖底はまるでSFの世界 =1/4= ◇◆
アンターセー湖での第1回目の潜水で自信を喪失しかけていた私に、次のチャンスが訪れたのは2日後のことだった。
実は翌日も潜水する予定だったが、風が強すぎて延期となっていたのだ。水中にいるダイバーに地上の風は関係ないのだが、氷上でサポートをする側にとっては非常に過酷。寒い、通信機の声が聞こえない、転倒しないように氷上で立っているのがやっとという状況で1時間近く耐えなければならないからだ。最初の潜水でクタクタになっていた私は、心の中で密かにその強風を喜んだ。
潜行開始
第2回目の潜水は、まずウェイト問題を解決することが先決だった。ウェイトをきちんと11kgにして浮力をチェックしなければならない。それが問題なければ水深20mの湖底まで潜り、そこから水深が浅くなる方向へ湖底に沿うように移動しながら、湖底の様子をじっくりと観察し、一眼レフカメラとビデオカメラで記録する。そうして次回以降の潜水で湖底の生物群集を採取するポイントや、生物群集の光合成を測定するポイントを決めるのだ。
相変わらず緊張気味ではあったが、やらなければならないことを強く意識すると、不安と緊張よりも“よし、やるぞ!”という気持ちのほうが強くなった。手早く機材のセッティングを終え、マスクをつけると、私はためらいなく水中へスッと飛び込んだ。そのまま息を吐いて止めると、ちょうど水面くらいにあったマスク越しの視界は、ゆっくりと水中に沈み込んでいった。
「おお! 浮力はちょうどいいよ。今から潜行開始する」
「OK。安心したよ、グッドラック」
通信マスク越しにデイルに告げ、そのまま氷の穴を降りていった。
頭上の穴はどんどん小さくなっていく。目の前に見える氷の壁の内側には縦に長い不思議な気泡がいくつも入っていた。 氷にできた不思議な縦模様の連なりが終わり、私は氷の下まで到着した。
氷の下は、その不思議な縦模様を作り出す小さな空孔が無数に開いていて、まるで青いシャンデリアのようだ。よく見ると鏡のように反射している場所がところどころにあり、近寄ってみると、ゆらゆらと氷に貼り付くように浮いている大きなガスの塊だった。湖底の生き物たちの活動によって発生したガスだろう。
光合成生物による酸素ガス、メタン生成菌によるメタンガス・・・生命活動があまり活発でないこの環境では生物がそれほど大量にガスを発生するとは考えられない。長い時間分厚い氷で覆われることによってこんなにも大きくなるまで蓄積するのだろう。時折、その泡の塊はダイブホールに吸い込まれるように、この閉じられた世界から外界へと逃げていくのが見えた。あの泡は一体いつからこの氷の下にとどまっていたのだろう。
「氷の下まで来た。これから湖底20mに向かう」
「OK。呼吸もゆったりしていて、いい感じだ」
私は潜水前にナーバスになっていたことなど忘れていた。機材がモコモコしていて少し動きにくくはあるが、すっかりいつもの調子を取り戻していた。
・・・・・ 南極点到達競争 =壮絶な英国隊・スコットの遭難= ・・・・・・・
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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