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Channel: 【 閑仁耕筆 】 海外放浪生活・彷徨の末 日々之好日/ 涯 如水《壺公》
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現代の探検家《田邊優貴子》 =11=

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○◎ Great and Grand Japanese_Explorer  ◎○

○ 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= ○

◇◆ 第4回 ヌナターク =3/3= ◇◆

 この氷地獄を走ること2時間。急に氷のデコボコが小さくなって、やたらと走りやすくなった。 表面が氷なのは変わりないのだが、やたらとフラットなのだ。 さっきまでの氷地獄どころかこれまで走ってきたのと全く感触が違う。 氷の色も違うし、なんだここは?? と思いながら走っていると、前を走っていたデイルがピタリと停まった。

「Lake Untersee!!」

 2014年11月16日18時過ぎ、ノボラザレフスカヤ基地を出てから飲まず食わずの11時間。 休憩時間は合計してもせいぜい5~6分ほど。ついに私たちはアンターセー湖の上に立った。 みな、急にスピードを上げ、平らな湖を横切り、湖畔のキャンプ地でスノーモービルを停めた。

 エンジンを止めると、右手に力が入らない上に酷くしびれていて、出発時にナディアから受け取ったサンドイッチをザックから取り出すだけでとても時間がかかった。 朝6時に朝食のミルク粥を食べて以来、今日は何も口に入れていない。岩に腰掛け、低温で固くなったサンドイッチをモグモグとほお張った。 目の前には切り立った山々がそびえ立ち、こんな内陸なのに真っ白なユキドリたちが忙しそうに空を舞っていた。

 疲れ果てていたけれど、天候が急変する前に1つでもテントを建てなければならなかった。 テントを設営していると、私たちが到着してから遅れること1時間半、途中で私たちが追い越した雪上車隊がやってきた。 1時間かけて大量の荷物を降ろし、その後も設営作業が深夜まで続いたが、なんとかみな寝る場所とお湯を沸かす設備だけは整えた。

 深夜には空が曇り、風速20m/sを超える強風が吹き始め、気温はマイナス20℃に下がっていた。 クタクタの状態で寝袋に入ったが、風でテントがギシギシバタバタときしむ音が止むことはなく、テントが飛ばされてしまうんじゃないかという心配と寒さで、ほぼ一睡もせずに朝を迎えた。 その間、何度か外に出ては、テントの張り綱が緩んでいないかチェックした。

 到着翌日はずっと強風が続いていた。 1日経ってもまだ私の手にはいつもの1割程度の力しか入らなかったが、幸い、悪天のおかげで少しゆっくりと過ごせた。 ただ、その夜も強風の音と寒さであまり眠れなかった。 アンターセー湖に到着して3日目には天候が回復傾向になり、夕方には晴れ間が広がった。

 ドイツのノイマイヤー基地から毎日届く天気予報によると、これから3日間は好天が続くということだった。 到着から4日間かけて、なんとかキャンプ地のテント設営や生活・調査の基盤を整える全ての作業を終えた。


 やっと明日から調査が開始できる。 私の右親指に変なしびれは残っていたが、もうすっかり手の力は戻っていた。

 

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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽  憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・

森のなかえ

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